企画概要
演劇博物館の運営するJapan Digital Theatre Archivesに収蔵された作品をどらま館で上映する企画「Japan Digital Theatre Archives 学内上映会」。この上映会では、演劇が持つポテンシャルを日常演劇作品に触れる機会のない学生に届けることを第一の目的としている。演劇は一部の愛好者の為にあるのではなく、あらゆる違いを持つ人の集まりに向けて発信され、それぞれの仕方で受け取り、楽しむことのできる芸術である。エンターテインメントであることと批評性を持つこととは同時に成立することを、優れた作品を鑑賞することで身をもって体験してもらいたい。
第1回では、演劇ユニット「ブス会*」の作品を、第2回では劇団「Q」を主宰する市原佐都子氏の作品を特集上映した。
2023年度最後となる第3回では、70年代から2016年まで、関西を拠点に大規模な野外公演を続けてきた演出家・美術家の松本雄吉氏と「維新派」の後期作品を取り上げる。
JDTA学内上映会vol.3 維新派『透視図』/『アマハラ』
維新派「透視図」(2014)

photo:Yoshikazu-Inoue
【Story】少年は、街で、沖縄生まれの祖母を持つヒツジに出会う。祖母の記憶の大阪をめぐる二人は、街を抜け、路地を走る。街にあふれる高層ビル、標識、インターネット、死者、影、人々の記憶。二人が目にしたのは、現在と過去、虚と実が交差した“オオサカ”だった。
【Note】旅をするように世界各地で野外公演を行ってきた維新派。10年ぶりとなった大阪野外公演は周囲に川が流れ、舞台の奥には大阪の高層ビル群を臨むことができる場所で開催された。ステージには一辺約5mの正方形の「島」が四列×四列の等間隔に並び、役者は「島」から「島」へ飛び移ったり、「島」の間を走り抜けたりと舞台を所狭しと駆け回る。
登場人物が実在の地名や都市名とともに、個人史や自己のルーツを語ることで、それぞれが“都市”に向けたまなざしが舞台上に表れる。
過去から現在へと流れる人々の記憶を重層的に浮かび上がらせ、都市論へと昇華させた作品。
収録時間:119分|収録日:2014/10/22|会場:大阪・中島GATEサウスピア|演出・振付:松本雄吉(以上、JDTAより)
日程:
2/28:19:00 -21:00
3/01:11:00 -13:00
維新派「アマハラ」(2016)

photo:Yoshikazu-Inoue
【Story】たそがれどき。なみうちぎわ。静かに佇む廃船。流木、缶、船板、スポンジ、漂流瓶。少年は海が運んできたさまざまな漂流物を手に、旅への好奇心と想像力をふくらませ、この場所から海を越えて広がるアジアの島々に想いを募らせる。少年の想いは“海の道”へとつながっていく。
【Note】本作品は20世紀三部作のアジア篇として上演した『台湾の、灰色の牛が背のびをしたとき』を再構成した作品である。新たな脚本や演出プランの構想中に主宰の松本雄吉が他界したことから、残されたノートや資料をもとに、メンバー全員で完成させた。初演でアジアの群島を造形した劇場は、本作では草原に浮かぶ巨大な“廃船”へと形を変えた。日本古来の時間の流れと深遠さが感じられる世界遺産・平城宮跡で、土地の記憶、時間の地層を掘り起こし、日本からフィリピン、インドネシアの多島海へと至る<海の道>を渡った若者たちの夢と挫折を多声的な表現で描いた。
この作品が、半世紀に渡り、野外劇の可能性に挑み続けた劇団の最終作となった。
収録時間:116分|収録日:2016/10/20|会場:奈良・平城宮跡|演出・振付:松本雄吉(以上、JDTAより)
日程:
2/29:11:00 -13:00
3/01:19:00 -21:00
3/02:11:00 -13:00
会場
早稲田小劇場どらま館 劇場(2F)
料金無料・事前予約制
企画制作・主催
早稲田大学坪内博士記念演劇博物館、早稲田小劇場どらま館