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『ちょっとだけ “めんどくさい” 俳優になるためのワークショップ』体験レポート その1

6月11日(土)、12日(日)の2日間でどらま館企画『ちょっとだけ “めんどくさい” 俳優になるためのワークショップ』を開催しました。年齢も経歴もばらばらな7名に参加して頂き、竹中香子さんの温かい人柄のもとで密度の濃い時間を過ごすことができました。

今回は、ワークショップの体験レポートを紹介します。

第1弾は早稲田大学演劇研究会2年代の横山智咲さんのレポートです。

どらま館企画体験レポート『ちょっとだけ “めんどくさい” 俳優になるためのワークショップ』

横山智咲(早稲田大学演劇研究会2年代)

2022611()12()にどらま館にて行われた『ちょっとだけめんどくさい俳優になるためのワークショップ』に参加しました。イベントの説明文には、「創作の現場で必要なコミュニケーションについて考えながら、ちょっとだけ『めんどくさい』俳優をめざす2日間」とありました。ゲストの竹中香子さんは、日本人として初めてフランスの国立高等演劇学校の俳優セクションに合格し、2016年にフランス俳優国家資格を取得、今はフランスと日本を拠点として多数の舞台に出演されている方です。

私は普段、演技をする機会が多くはないため参加していいものか少し悩んでいたのですが、竹中さんについて調べていると、大学卒業後に俳優を続ける方法を探して、フランス語はほとんど話せなかったけれど単身フランスに渡って現地の俳優学校を卒業したというエピソードが出てきて、一体どんな人なんだろうと気になってしまい、参加することにしました。

最初は、演劇の現場で最近問題になっているハラスメントについて、小難しく講義を受けるワークショップなのかなと少しだけ身構えていました。参加者は多くが知らない人同士でしたが、始まってみると全体を通して温かく、何を言っても受け入れ合おうとする空気感があり、終始楽しく2日間を終えました。

1日目の最初は、竹中さんからフランス演劇教育に関するレクチャーを受けました。その中で一番印象に残っているのは、ハンディキャップは自分の中ではなく外にあるから、自分にできないことがあるとき、できないことやしてほしいことを周りの人に伝えればよいという話です。他、参加の仕方について、実践して学ぶ人もいれば見て学ぶ人もいるから、やりたいと思ったときに参加していいよということや、フィードバックについて、発言は人の時間を奪うことではなくチームへの貢献だし、相手がやったことに対して向ける言葉は相手自身のアイデンティティを批判することではないから、気にせず相手に気づきを投げられるようにしていこうという話などを聞きました。最初にそういったお話をざっくり聞いて、いくつかのワークをしたことで、参加・発言がしやすい創作の場について実際に体験しながら感じることができたと思います。

その後、まなざしのワークというものでは、椅子から立って参加者と目を合わせて、目を合わせたまま離れたところまで進んで自己紹介をして、去るということをしました。午前4時というワークでは、山小屋で寝ている人・幽霊・帰ってくる人として即興の演技をするというものでした。前者は「何もしない」こと、後者は、何かを起こそうとせず「待つこと」がひとつのテーマでした。2つともとてもシンプルなワークなのですが、見られている側が特別、能動的に何かをしようとしなくても、見ている側がほんのわずかな癖や動きに強い意味を見出してしまうこと、解釈の可能性が多いからこそ見る側が気になって色々考えてしまうことがとても面白かったです。

2日目は主に『妖精の問題』という戯曲の一部をどう上演するかについて、それぞれが考えてきたアイディアを話し合い、2つの班に分かれて実際にプレゼンと上演を行いました。私たちの班は電車の中でゲリラ的に上演をするというアイディアで進め、もう一方のチームは、水族館で展示の一部として、「ぶ」という音に反応するスピーカーで音を重ねるという上演アイディアを披露していました。自分は見たことがあるようなアイディアの中に収まってしまいがちだなと思う一方で、普段触れない発想に刺激を受けて、もっと自由でいいのだなと感じました。

全てのメニューが終わって一番最後、2日間の感想を言い合ったときは、誰かに言うというよりは自分に語るイメージでということで、皆が寝転び、時々笑いが起きながら、感想を言い合っていたのですが、すらすらと言葉が出てこなくてもどんな言葉が出てくるのだろうと自然と「待っている」自分がいました。それぞれが自分と違う相手を受け入れるという空気があり、頑張りすぎず気負わずに自分としていやすい状態でいれたし、周りの人との違いを楽しめたんじゃないかなと振り返って思いました。

今回のワークショップに参加して、創作におけるコミュニケーションのあり方について考えることは、嫌な思いをする人がいないように言動に気をつけなければいけないといった、私たちを過剰に窮屈に縛るものなのではなく、表現の可能性を広げることができるポジティブなものなんじゃないかなと感じました。今後も創作に関わる場面などで、今回気づいたり考えたりしたことを生かしつつ、コミュニケーションについて考え続けていきたいと思っています。

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