【開催レポート】早稲田大学ボランティア・アカデミー「首都直下地震に備えよう」セミナー&ワークショップ
2026年1月15日(木)、早稲田キャンパス26号館302教室にて、「首都直下地震に備えよう」セミナー&ワークショップを開催しました。本企画は、教員4名の運営・連携のもと、モニター学生12名が参加し、災害時に自分と周囲の人の命を守るための判断について考える機会となりました。
本企画では、WAVOCがこれまで実施してきた被災地への学生ボランティア派遣や、「体験の言語化」を通じて社会課題や自分の価値観・規範を明らかにする教育実践の知見を活かし、WAVOCならではの「防災人材育成」のあり方を探りました。
当日は、筒井久美子講師の司会のもと、防災を専門とする佐々木俊介講師による講義を起点に、首都直下地震の発生を想定したワークショップを実施。あらかじめ「正解」を示すのではなく、参加者一人ひとりが自らの行動を振り返り、その判断の背景にある価値観や思考に気づき、言語化・共有しました。当日の様子をお伝えします。

講義-首都直下地震が発生した場合、どのような被害や対策が想定されるか―

講義を行う佐々木講師
講義では、今後30年以内に70%程度の確率で発生すると言われている首都直下地震を想定し、震災が起こった場合に想定される被害や生活上の困難について、佐々木講師より説明がありました。主に次のような点が挙げられました。
・落下物(ガラス、看板、蛍光灯など)による危険
・火災の発生
・断水等により、トイレや入浴など生活用水の確保が困難になること
・入浴・トイレの使用が困難になる
・避難所における安全・衛生・プライバシー上の課題、性被害等のリスク
また、発生直後の行動として、姿勢を低く保ち、頭を守り、揺れがおさまるまで動かないという最優先行動(シェイクアウト)や、机がない場合の身の守り方(鞄やクッション、上着などで頭を保護し、窓ガラスや倒れやすい場所から離れる、ダンゴムシのポーズなど)について説明がありました。
さらに、揺れがおさまった後の移動に伴う危険についても取り上げられました。大学が発信する安全情報の把握や、移動する場合にはエレベーターやエスカレーターを避け、状況に応じて階段を使うこと等の避難時の行動、車での避難に伴う危険性や渋滞への考慮など、事前に判断基準を持っておく重要性が共有されました。
災害時には、パニックによって冷静な判断が難しくなることがあります。そのため、その時点で得られる情報をもとに、より妥当だと考えられる選択を行うことが大切だと説明がありました。
実践―災害時の状況判断を体験するワーク―

実証ワークで机の下に潜り、身を守る参加者
続いて、実際に地震が発生した状況を想定した実践ワークを行いました。参加者への事前説明と安全面への配慮を行ったうえで、ワークの詳細な展開はあえて事前に知らせず、模擬の「緊急地震速報」や周囲の行動を受けて、自分がどのように判断し、暫定的な行動を選択するのかを体験しました。
緊急地震速報が流れると、学生全員が一斉に机の下に潜って身を守る行動を取りました。
その後、教員の一人が学生たちに「早く外に逃げて!」と呼びかけながら教室を出ました。
一方で別の教員は、廊下のエレベーター付近で待機し、佐々木講師を含む教員2名は教室内に留まりました。
意図的に異なる行動が示される中で、学生たちは周囲の状況を踏まえながら自ら判断を行いました。その結果、3名が教室の外へ移動し、9名は教室に留まる判断をしました。
実践の振り返り(グループワークの実施)と解説
参加者は4グループ(学生3名・教員1名)に分かれ、「①どのような行動を取ったか」「②なぜその行動を選んだのか」を振り返りました。
筒井講師からは、グループワークの目的が正しい答えを導き出すことではなく、実践を踏まえ、各自の行動の背景にある価値観や規範に気づくことだと説明がありました。特に行動が分かれた部分について、「信頼する教員の行動に従った」「過去に参加した防災活動で学んだ知識から、煙の危険を想定した」(教室の外へ避難した学生)や「建物の耐震性に関する知識があった」「自身の体調を考慮した」「落下物の危険が少ないと判断した」「防災を専門とする講師が教室に留まっていたことも判断材料になった」(教室に留まった学生)といったそれぞれの判断基準が共有されました。
グループワークでの振り返りを受け、佐々木講師からは、大学の耐震性を踏まえると教室に留まる判断は妥当だと考えられる一方で、災害時には専門家であっても限られた情報の中で判断せざるを得ない場面があるという、判断の難しさについて説明がありました。
そのうえで、自分自身がどのような価値観で行動しているのか、また、判断がどのようなバイアスの影響を受けているのかを知っておくことの重要性が共有されました。

振り返りの様子
おわりに
最後の振り返りでは、本ワークショップの狙いが、限られた時間で正解を示すことよりも、自身のバイアスや価値観に気づき、自ら調べ、考える必要性を感じてもらうことにあったと説明されました。
参加学生からは、「正解がないことを学べた」「周囲と異なる行動を見て、自分で考えることの必要性に気づいた」「自分は教室に残る選択をしたが、教室に残った他の人たちとコミュニケーションをとった方が良いのか考えた。災害時、他者とのコミュニケーションのあり方を考えるきっかけになった」といった声が挙がりました。
今回のワークショップは、防災を知識として学ぶだけでなく、実際の場面で自分がどのように判断するのかを見つめ直す機会となりました。WAVOCでは今後も、体験を言語化し、社会課題と自分自身の行動を結びつけて考える学びを大切にしていきます。




