The Hirayama Ikuo Volunteer Center (WAVOC) 早稲田大学 平山郁夫記念ボランティアセンター(WAVOC)

山の命とともに生きる:丹波山で学ぶ狩猟のイロハ~体験的学習科目「狩猟と地域おこしボランティア」8~

山の命とともに生きる:丹波山で学ぶ狩猟のイロハ
~体験的学習科目「狩猟と地域おこしボランティア」8~

大場 悠生(文学部2年)

近年、趣味としての狩猟やジビエ料理がメディアでも取り上げられるようになり注目されている。けれども、担い手の猟師に対しては、一種の近寄り難いイメージを持っていた。猟師とはいったい何者なのか。ここでは私が授業を通して感じた、自然と共存する知られざる猟師の役割を紹介する。

①命をいただくということ
2回の現地実習では、罠にかかったシカを鉄砲で止めさし(獲物を殺す行為)して解体処理場で肉の状態にする過程と、大バラシ(4日間熟成した肉を部位ごとに切り分ける作業)を見学した。普段たくさん肉を食べているにもかかわらず、いざ「死」と向き合うと抵抗感を感じる。一方で狩猟の現場を見ると、「生」と「死」が隣り合わせで「自分も自然の中にいる生き物だ」と実感でき、食への意識が変わった。動物に長時間苦しい思いをさせないために、毎日罠を見回りして、撃つ時も一発で仕留めるといった、丹波山のハンターの言葉がとても印象的だった。

鹿肉カレーと猪ソーセージ

鹿肉そぼろと鹿肉コロッケ

②獣害の現実
狩猟には「害獣駆除」という意義もある。日本では獣害による農作物被害額が158億円に及び、その半分がシカによる被害だ。また獣害問題は農作物への被害だけではなく、樹皮を食べられた木々が枯れるなど生態系にも影響が出る。人の住む地域では、狩猟や電気柵の設置によって農作物被害を減らす取り組みがされている。しかし、獣害問題の根本的解決には山間部のシカを減らす必要があり、対策をしていかなければならないと語っていた。

罠にかかったシカ

わな猟は獣道に直径12cm以下の罠を仕掛ける

③自然を守るのも猟師の仕事
豊富な知識と確かな技術で山を守る猟師は、まさに山のプロフェッショナルである。私たちにとっては普通の山の風景でも、猟師には獣道や山菜がすぐに見える。それは日頃から自然に向き合い経験を積んできた賜物であり、いくら文献資料で勉強しても猟師の持つ経験には敵わないだろう。

猟師の持ち物を見ると、狩猟の道具や身の安全を守る道具に加えて鋸が入っていた。猟師は狩猟に使う通り道だけでなく登山道の整備なども担う。山の整備も猟師の重要な任務であり、日本の山林を守る縁の下の力持ちだ。彼らの言動から、山の恵みを享受する者として、山を守る使命感と責任感が重々と伝わってきた。

狩猟はとても魅力的で意義のあるものだ。一方で、命あるものを頂く覚悟と山を守る責任が必要であり、決して軽い気持ちでできるものではない。だからこそ、この狩猟ブームを一過性のもので終わらせてはならないと思う。狩猟の魅力と意義を伝え続け、理解してくれる人を増やす努力が必要だ。実習先の丹波山村では、ジビエを活用して地域おこしを行っている。少しでも狩猟と地域おこしに携わった者として、丹波山村を応援し、活動に協力したい。そのためにも、今回学んだことを伝えていきたいと思っている。

丹波山の「丹」をイメージしたキャラクター「タバスキー」はとてもかわいらしい

 

≪体験的学習科目「狩猟と地域おこしボランティア」のこれまでの連載記事はこちらから≫
https://www.waseda.jp/inst/wavoc/news/2021/10/22/6915/

Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/inst/wavoc/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる