The Hirayama Ikuo Volunteer Center (WAVOC) 早稲田大学 平山郁夫記念ボランティアセンター(WAVOC)

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そば(傍)にはそば(蕎麦)が~平山雄大のブータンつれづれ53~

そば(傍)にはそば(蕎麦)が~平山雄大のブータンつれづれ53~

平山郁夫記念ボランティアセンター 平山雄大

標高が高過ぎて稲作をすることができなかったブータンの高地では、伝統的にソバ栽培(普通種もダッタン種も)が行われてきました。ゆえに、ブータンにも蕎麦粉を加工した蕎麦料理文化があります。コメの品種改良の結果高地でも稲作ができるようになり、また交通網の発達で国産米・輸入米が広く流通するようになりこの蕎麦文化は衰退傾向にありますが、昨今の健康食志向のもとで改めて見直されている…という話もチラホラ。

いろいろな蕎麦料理がありますが、今回のコラムではそのうちの4つを紹介したいと思います。ちなみに、ブータンのソバの花は日本の多くのものとは違い主にピンク色です。夏のソバ畑は「壮観!」の一言。

ピンク色に染まる夏のソバ畑

蕎麦粉は製品化されて、スーパーでも売られています

【蕎麦料理その1:プタ】
最初に紹介するのは、蕎麦粉を使った麺料理「プタ」です。練ってこねた後、伝統的なスタイルでは木製の製麺機(プタ・シン)にセットし、ハンドル部分に座って自らが重りとなり、ところてんのように押し出して麺にします※1。にゅるるる~と出てくる蕎麦には興奮間違いなし。体重が軽い人はあまり戦力にならないので、2人がかりで頑張ります。古い製麺機だと、重さに耐えきれなくなったハンドル部分が折れてしまうことも!座らずに手で押す小型のものもあります(もともと、大型のものも座っての使用は想定されていないのかもしれません)。レストラン等では、いわゆるパスタマシンで手軽に作っているところが多いです。

できあがった麺をゆでた後は、卵、パクチー、唐辛子、山椒等を投入して、アツアツの油やバターで混ぜて完成!つまり、油そば・蕎麦Ver.です。小麦粉(つなぎ)を使わない十割蕎麦なので、混ぜ混ぜしている間に切れて短めに。食感はモチモチ。そして唐辛子と山椒にヒーヒー。「これはこれで美味しいけど、麺つゆがあったらもっと良いかも!」と嘆く日本人旅行者多数。

伝統的なスタイルのプタ作り。お母さん自らの重さで麺を押し出します(ハンドル部分、新調済)

このにゅるるる~感には病みつき必至!

混ぜ混ぜ…。さらにここから、唐辛子と山椒を大量投入します

レストランのプタ。どこかお上品

ついに(?)製品化された「インスタント・プタ」。小分けの乾燥麺になっています

【蕎麦料理その2:クレ】
お次は、蕎麦粉のパンケーキ「クレ」。蕎麦粉を水で溶いた「クレの素」を鉄板で丸く焼いて完成です※2。

蕎麦の苦みを残すクレを、ブータン産のはちみつ、野イチゴのジャム、バター等と食べると異様に美味しいです。エゼ(唐辛子のペースト)やエマダツィ(唐辛子のチーズ煮込み)をつけるブータンでの主流の食べかたも良い感じです。邪道ですが、こいつをナンやチャパティ代わりにしてカレーを食す…という不印(ブータン・インド)折衷スタイルもいけます。

1枚だけでもけっこうおなかに溜まりますが、ついついおかわりしてしまいます。「クレをもう1枚クレ!」

クレの素。入れ物にもご注目(ブータンにも曲げわっぱがあります)

クレ。こちらは鉄板の裏の卍模様が表面についた、通称(?)卍クレ

【蕎麦料理その3:ヒュンテ】
続いて、蕎麦粉の皮で作る餃子「ヒュンテ」。ヒュンテは西部に位置するハの郷土料理(正確にはお正月料理)で、各地域特有の料理というものが比較的少ないブータンの中ではある種異色の存在。チベット風餃子のモモに似ていますが、皮が蕎麦粉であることと、具がカブの葉メインであるところが特徴です。

ヒュンテは各家庭によって味が結構違います。蒸して食べるのが一般的ですが、中には揚げヒュンテも。クレ同様、けっこうおなかに溜まります。お正月料理ではあるものの、ハの町中にある「ラモ・レストラン」(Lhamo Restaurant)という名のローカル食堂では一年中食べられます。

ヒュンテ作り。光景は餃子作りとシンクロ

ふとっちょヒュンテ。ボリューミー!

通常スタイルの蒸しヒュンテ(於:ラモ・レストラン)

揚げヒュンテ(左上)。右下はモモ。真っ赤なエゼ(左下)をつけてパクパク

【蕎麦料理その4:ディンゴ】
最後は蕎麦がき「ディンゴ」です。日本の蕎麦がきと100%同じものかと言われると少し違うような気もしますが、とにかく、プタやクレが一般的になる前から存在していたであろう原始的な形状をしています。今回紹介した4つの中では最もマイナーで、現在は日常生活で作られる・食べられることはほとんどない…と言われています。私は中部のブムタンでしか出合ったことがりません。

味は非常にシンプルで、やはりエゼやエマダツィと一緒に食べます。蕎麦がきは消化吸収が良く、他の蕎麦料理よりも栄養を効率的に摂取することができるそうですが、ディンゴにもリバイバルの光は当てられるのでしょうか。

蕎麦がき「ディンゴ」。見た目はごつごつ

【番外編:ブータン蕎麦in金沢】
石川県の社会福祉法人佛子園が運営するShare金沢※3。「ごちゃまぜ」をコンセプトに、障害者・健常者/若者・高齢者が分け隔てなく一緒に暮らせる土壌を作るという壮大な試みのもと進化を続けるこの街にある蕎麦処「YABU丹」(やぶたん)※4では、ブータンの蕎麦粉を使用した美味しい蕎麦を食すことができます。佛子園がブータンで社会福祉プロジェクトを行っている縁で生まれたこの取り組み、なかなか斬新です。

2018年6月には金沢大学キャンパス内に「YABU&CAFÉ丹」がオープンし、金沢大学でもブータン蕎麦を味わうことができるようになりました。

Share金沢内の蕎麦処「YABU丹」

ブータン蕎麦についてアツく語ってくれる、上目遣いのPepper氏(於:YABU丹)

ブータンのソバを日本風に食すのもまた、乙なものです

以前、ブータンの農業省のかたが青森県八戸市にソバ栽培・加工の研修にいらっしゃったり、特定非営利活動法人江戸ソバリエ協会の皆さんがブータンで蕎麦打ちを披露したり…といった相互の往来がありました。蕎麦文化を通した日ブ交流は、意外と可能性を秘めていそうです。

※1 プタ作りに関しては、ウェブサイト「Takemaのあっちこっち」の紹介記事と動画がアツいです。約17年前にアップされたものですが、色褪せません。
http://achikochi.takema.net/Bhutan-bumutan6.htm

※2 クレ作りに関しても、「Takemaのあっちこっち」ウェブサイトの紹介記事と動画がアツいです。
http://achikochi.takema.net/Bhutan-bumutan7.htm

※3 http://share-kanazawa.com/

※4 http://share-kanazawa.com/yabutan/

<これまでの記事一覧はこちらから↓>
https://www.waseda.jp/inst/wavoc/news/2019/02/15/4134/

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