『地方課題の最大の難点とは』
~体験的学習科目「狩猟と地域おこしボランティア」12~
黒田 悠一(教育学部3年)
丹波山村は東京の奥多摩市よりも西に進んだ場所にある村で、自然が豊かなところだった。山では鹿が獲れ、山菜も収穫でき、川ではアユが見られる。大自然の恵みを味わうことのできる魅力的な村だったが、ここでは過疎が大きな問題となっていた。地方の過疎化は高校からの授業で何となく理解していたが、実際の現場を目のあたりにすると、過疎問題の実情や難点がより分かりやすくなる。
私は今回の授業の中で、過疎の最大の原因は人手不足の負のスパイラルにあることに気づいた。これは、授業で丹波山村の村おこし企画をグループワークで考えたときに、思ったことである。丹波山村で村おこし事業をしている保坂さんにフィードバックをもらいながら、企画を出し合ったのだが、企画がボツになる理由は大半が「それをやる人がいない」というものだった。たしかに、その点を踏まえて保坂さんが行ってきた村おこしを考えると、人手をあまり必要としない点で共通していたことに気づく。
「地方課題」と一口に言っても、地方の問題は複合的だ。私たちの班では、農業の活性化をねらって耕作放棄地を開拓しようと考えたところ、耕作放棄地を耕作可能な状態にしても、移住希望者の住居がないので担い手を確保できず、結局、耕作放棄地に戻ってしまうという問題に行き着いた。一つの課題を解決するには、他の課題と照らし合わせながら、複合的な視野で考えることを要求される。地方の課題は独立しておらず、互いに「過疎」という部分で関係している。そのために、人を増やす上で問題となるのが「人がいない」という負のスパイラルに陥るのだ。
しかし、地方の魅力と人口が関係するのかというと、私はそうではないと思う。実際にフィールドワークで訪れた丹波山村は本当に素晴らしいところだった。川は綺麗で、山は青々として力強さがある。東京ではまず間違いなく味わうことの出来ない「安らぎの里」としての顔があった。食べ物は美味しいし、時間がスローに流れる感覚は心地が良かった。だからこそ、保坂さんをはじめとした様々な人が協力者となって、村おこしをしていることにも気づくことができた。丹波山村は、「俺たちの愛する丹波山村を活性化したい」という思いが村全体に響いているような場所だった。村おこしがされているのは、その場所が魅力的だということの裏返しなのだ。
≪体験的学習科目「狩猟と地域おこしボランティア」のこれまでの連載記事はこちらから≫
https://www.waseda.jp/inst/wavoc/news/2021/10/22/6915/