本当の意味わかってる?狩猟の世界をのぞいたら、「いただきます」の真意を知った
~体験的学習科目「狩猟と地域おこしボランティア」4~
岩崎なつみ(人間科学部2年)
「いただきます」は「命をいただく」ということ。よく耳にする言葉だと思う。私も頭ではわかっていた。しかし、丹波山村で、生きた鹿が食べ物のシカ肉になっていく過程を実際に目の当たりにして、初めてその意味を理解した。
このメス鹿は子連れだった。私たちがメス鹿に近づくと、母を見ていた小鹿が必死に逃げていった。銃で止めさしをした猟師さんは、「独りになった小鹿は今晩にも食べられてしまうだろうねぇ」とおっしゃっていた。また、「本当は殺したくないけど、獣害が出るから仕方ない」ともおっしゃっていた。仕留めたのは親鹿のみだが、二つの命が奪われる瞬間に直面し私は悲しさと申し訳なさを感じた。

↑解体を見学させてもらった。生き物と食べ物の境を目の当たりにした。
捕らえた鹿は、その場でしっかりと血抜きを行い、すぐに解体場に運ぶ。解体場では、まず皮をはぎ、四肢と頭を切断して、内臓を取り出す。その後、4日間冷蔵庫で保存し、大ばらしを経て私たちがスーパーで見かける肉になる。内臓を取り出した時、解体する方が心臓をハツ、肝臓をレバーと呼んでいた。私にとってはまだ生きていた鹿の臓器だったので、食べ物を呼ぶその言い方に強い違和感を抱いた。

↑お昼に鹿カレーを頂いた。シカ肉はあっさりとして美味しかった。
この実習の日は私の20歳の誕生日だった。しかし、同時に鹿の命日となった。19年間毎日言ってきた「いただきます」。その言葉の真意を20歳でやっと知ることができた。豚肉や牛肉を食べるとき、私は今回の体験を必ず思い出す。そして「命をいただき、私の命にさせていただくこと」に感謝を込めて「いただきます」と手を合わせる。
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https://www.waseda.jp/inst/wavoc/news/2021/10/22/6915/