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開催報告:国際ワークショップ 「世界の中の和歌」ー多言語翻訳を通して見る日本文化の受容と変容ー第3回

国際日本学拠点では、2022年9月3日(土)に国際ワークショップ 「世界の中の和歌」ー多言語翻訳を通して見る日本文化の受容と変容ー 第3回を、対面 ・ Zoomハイブリッド方式で開催しました。

このワークショップは、2021年度より早稲田大学高等研究所に所属するフィットレル・アーロン氏と、青山学院大学の土田久美子氏が中心となって企画されました。両氏が運営している日本古典文学多言語翻訳研究会は、既に2020年9月にオンラインによるワークショップの1回目を開催しており、好評を得ていました。2021年に開催された第2回からは、同研究会に加え、早稲田大学高等研究所、スーパーグローバル大学創成支援事業 早稲田大学国際日本学拠点も主催に加わりました。当日は、対面とオンラインで延べ60名以上の参加を得る催しとなりました。日本の古典和歌を他の言語に翻訳する際には、それぞれの言語的特徴、文化的背景の違いなどへの考慮が不可欠です。他方、翻訳された各言語の詩歌において、古典和歌の表現方法、詩形、モチーフ等々がいかに再現され、あるいは変容されているのかという点について解明することも重要でしょう。

今回のワークショップでは、まずフィットレル・アーロン氏による開会の挨拶ののち、前半(午前の部)で、今なお外国語に(ほとんど)翻訳されていない一首の和歌を各発表者に翻訳してもらい、和歌の翻訳に関するあらたな展望を試みました。その一首とは、『後拾遺和歌集』(巻第一・春歌上・25番)、「題しらず」という詞書を有する、和泉式部の「ひきつれてけふはねの日のまつにまたいまちとせをぞのべにいでつる」です。この歌においては、たとえば当時の年中行事である子日の小松引きや、「のべ(野辺・延べ)」という掛詞などといった、日本の古典和歌に特有の文化的要素と修辞法が見出せます。

各発表者によって、この歌が13の言語に翻訳されました。発表者たちは、受容側の文化に小松引きという習慣をどのように伝達するのか、また似ている習慣があるのかに適宜ふれつつ、翻訳の目標言語にふさわしい詩形・修辞などをいかに駆使して訳出したか、和歌(短歌)の五・七・五・七・七という五句・三十一音をいかに受けとめ変換したのか、さらには当該歌以外の既成の和歌の翻訳にみられる訳し方をどの程度意識したか、ということなどを縷々説明しました。
発表後の全体討論では、発表者だけでなく、日本古典文学の研究などで活躍をつづけている国内外の参加者も含めて、活発な質疑がくりひろげられました。たとえば、子日の「子」(鼠)は動物、または干支としてのイメージがどのように変わるのか、この歌の時制と人称の問題などが取り上げられました。

一方、後半(午後の部)では、日本の古典和歌の中でもかなり有名で、既に少なからぬ数の言語に訳されている有名な一首を取り上げ、各発表者にその先行する翻訳について解析してもらいました。取り上げた一首は、『古今和歌集』(巻第十八・雑歌下・938番)、小野小町の「わびぬれば身をうき草のねをたえてさそふ水あらばいなむとぞ思ふ」です。この歌には、「文屋康秀三河の掾になりて、県見にはえ出でたたじやといひやれりける返事によめる」という詞書が付されており、「掾」と、用例数が少なく難解な「県見」という問題が含まれている。また、和歌の本文でも、「わびぬれば」という言葉のニュアンスや、「浮草」という植物や、「うき(浮き・憂き)」という掛詞、また日本の研究でも解釈が分かれている「根を絶えて」という表現などが翻訳のときの主な着眼点であると思われます。

取り上げられた14の言語の中には、中国語・英語・ドイツ語・フランス語・ポーランド語・ロシア語などのように、複数の翻訳が既になされている場合もありますが、それらもすべて解析の対象とされました。逐語訳もあれば、当該の言語の標準的な詩形にあわせて耳なれた詩へと変換している訳、あるいは音節数をあえて五・七・五・七・七に合わせた訳等々、それぞれの訳者の工夫のしどころなどが次々と示されました。また、注を活用した訳のあり方などに留意する発表もありました。
その後、全体討論がおこなわれましたが、取り上げられた言語と翻訳が多く、時間が極めて限られていました。まずは金中氏(中国、西安交通大学教授)がそれぞれの発表や課題の和歌の選定などについての感想を述べ、今後に向けての助言をしました。その次に、エドアルド・ジェルリーニ氏(イタリア、カフォスカリ大学)が、鷺山郁子氏(イタリア、フィレンツェ大学)の『古今和歌集』イタリア語全訳の中の小野小町歌の翻訳について取り上げました。

最後に、牽引役の一人、土田久美子氏の挨拶により、このユニークなワークショップは締めくくられました。

開催詳細
  • 日時:2022年9月3日(土) 10:00~17:00 (JST)
  • 開催方式:ハイブリッド開催 (対面・オンライン)
  • 会場:戸山キャンパス33号館第1会議室
  • 使用言語:日本語、英語、イタリア語、ウクライナ語、漢語・中国語、韓国語、スロヴァキア語、タイ語、チェコ語、ドイツ語、ハンガリー語、フランス語、ポーランド語、ロシア語
  • 登壇者:アダム・べドゥナルチク、飯塚ひろみ、イム・チャンス、イーブン美奈子、エドアルド・ジェルリーニ、カーロイ・オルショヤ、カレル・フィアラ、金中、黄夢鴿、高木香世子、土田久美子、フィットレル・アーロン、ローレン・ウォーラー(五十音順、敬称略)
  • 参加者:学生、一般
  • 参加費:無料
  • 開催方式:対面とオンライン(Zoom)でのハイブリッド開催
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