「Is Capitalism Obsolete?」
SGU実証政治経済学拠点は、財政学・社会政策がご専門のジャコモ・コルネオ教授(ドイツ・ベルリン自由大学)をお迎えして、8月27日(火)に「Is Capitalism obsolete?」と題するセミナーを開催いたしました。
セミナーでコルネオ教授は、トマ・ピケティによって近年再び活発になっている資本主義の見直しに関する議論に対して、市場経済を一方で保持しつつ、他方で資本の公的所有の役割を実質的に強化するよう提案し、このプロジェクトによって、富の不平等の拡大にかかわる諸問題を解決するための方途を示しました。
セミナーは二部に分かれ、A journey through alternative economic systemsと題された第一部では、資本主義を再考するための概観が、2018年末に『より良き世界へ』という邦題で翻訳された『Bessere Welt』のアウトラインを辿る形で示されました。さまざまな経済システムを分析した結果、コルネオ教授は株式市場社会主義(shareholder socialism)を資本主義に代わりうる経済システムとして支持します。
セミナーの第二部はHow to manage public capital in a democratic and efficient wayと題され、より具体的にコルネオ教授の提案が示されました。すなわちそれは、公的資本を整えた(building)上で、1) 世界株式市場に投資して公的資本を管理する政府系ファンド(SWF)を設立し、2) 大企業を制御しながら民主主義的なコントロールを可能にする「連邦株主(FS)」の制度を国によって生み出すという二段構えの戦略です。 このプログラムが実施されれば、ある程度の時間を経たのちに不平等は減少し、経済的多元主義が実現し、民主主義の回復が見込めるだろうという見解が示されました。なお、セミナーから数日後、コルネオ教授の提案をドイツ・緑の党が取り入れることにしたとの連絡がありました。