本学の卒業生であり訪問教授でもある多和田葉子氏に対して、今年度の国際交流基金賞が授与されることとなり、10月16日ホテル・オークラにて、盛大な授賞式が行われた。今年度の受賞者は多和田氏のほかに作曲家の細川俊夫氏と、サラマンカ大学スペイン日本文化センターである。細川氏は多和田氏と同じくドイツを拠点に活躍中であり、国籍・言語の壁を越えた活躍をしている点でも二人は共通している。
多和田氏については、「近代日本史上前例のないユニークな」バイリンガル作家であること、「文学に新しい越境的な領域を切りひらき、日本文学の境界を押し広げてきた」こと、「自らの創作を通じて国際コミュニケーションを活性化させてきた」ことが高く評価された。
多和田氏は受賞スピーチにおいて、国際交流基金の「流」の字をとりあげ、文化には国境はなく、水のように流れ、混じり合って変容し、豊かになっていくものであることを強調していた。多和田氏については、近年ノーベル文学賞候補としての呼び声も高まっている。たとえば9月には「ニューヨークタイムズ」紙上のノーベル文学賞をめぐる対談において、多和田氏がアジアで初の女性受賞者となりうるのでは、との発言があった。また現在、今年の全米図書賞の翻訳部門最終候補に多和田氏の『献灯使』が残っており、11月の発表が注目される。

左:紹介スピーチをおこなった松永美穂教授(文学学術院) 右:多和田葉子訪問教授(文学学術院)
なお、早稲田大学では毎年11月に多和田氏とベルリン在住の高瀬アキ氏による朗読パフォーマンスとワークショップを行っており、今年も11月15日と16日に小野講堂において開催予定である。在学生にとっては、文学表現の可能性について多和田氏とディスカッションする貴重な機会になっていることも追記しておきたい。