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News through 2023

2023年度までのニュース

開催報告:SGU10周年記念シンポジウム「〈日本〉史をひらく」

国際日本学拠点では、2023年12月9日(土)・10日(日)の2日間にかけて、SGU最終成果発表シンポジウム「〈日本〉史をひらく」を開催した。

まず、初日の冒頭、日本国内に収斂される日本史研究には問題があり、相対的によりひらかれた〈日本〉史研究を行う必要があるとの、本シンポジウムの趣旨説明がなされた上で(川尻)、国際日本学拠点の10年間の歩みを、教育と研究の立場から総括した(陣野氏・河野氏)。次に「帰化人」という用語の功罪および、現在のアメリカにおける日本研究の現状が紹介され(カナガワ氏)、「日本」という国号が7世紀後半には普通名詞であったこと、「日本」国号成立の問題は、古代史のみならず戦後日本の立ち位置を反映していること(李氏)、「渡来人」研究では、国民国家の枠を乗り越えて、多元的な要素を考慮する必要があること(田中氏)、列島の古代宗教は、モノと都市を媒介とした神社と寺院という2つの「パンテオン」の視点から再検討する必要があること(コモ氏)、などの報告が行われた。

2日目には、北方史・アイヌ史は、日本史の一部のみならず、独自の文化として豊かな内容を持ち、独自に論じる必要があること(蓑島氏)、鉄砲伝来について、日本とポルトガルという二国間のみならず、西欧諸国と東アジア史全体の視点から包括的に検討する必要があること(伊川氏)、日本史研究が「国際日本学」を学ぶ意義について、日本史の過剰な専門性やナショナリズムを排除する契機になること、日本史研究と他地域史を比較研究することによって、あらたな研究視角を獲得・提供できる可能性があることが述べられ(ルーリー氏)、さらに、日本産の銀が東アジアの流通史に影響を与えた可能性があり、近世の日本史研究をより広い視野から俯瞰する必要があること(カレ氏)が報告された。
ついで、コメントが述べられ、日本のみならず、多くの国々で自国史を「ひらく」必要性があること(ファム氏)、「国際日本学」は時代の要請とともに、その内容が変化してきたこと(坪井氏)、歴史を「ひらく」ことの難しさと、今後の可能性について包括的な指摘があった(梅森氏)。
その後、①比較史の功罪およびナショナルヒストリーの問題点、②日本の中近世史研究と東アジア史との関係性、③アメリカ・フランスにおける日本研究の現状、④今後の「国際日本学」のあり方など、を主たる柱に据えて、報告者と参加者の間で活発な討論が行われた。
最後に、シンポジウムの意義・総括が述べられ(田中氏)閉会した。
「日本史」をアプリオリに設定するのではなく、自己認識を持ちつつ、よりひらかれた〈日本〉史を目指すべきだとする本シンポジウムの主張については、十分伝えることができたと考えられる。今後の歴史研究にとって意義ある成果である。
また、本シンポジウムは、ハイフレックスにより行われたため、日本はもとより、韓国・ベトナム、中国、アメリカ、フランスなど多くの国々からの参加者があり、その構成も、大学教員・若手研究者・大学院生・学部学生・大手出版関係者など多彩であった。なかでも、早稲田大学の教員のみならず、早稲田大学の若手研究者・大学院生・学部学生の参加が見られたことは、研究のみならず、教育的効果についても十分な役割を果たしたと言えよう。
さらに、10年間のSGU国際日本学拠点の活動についての総括を行い、「国際日本学」の存在意義や今後の展開についても、コメントや討論で各種の意見が出されたことは、同拠点の今後の活動にとっても有意義であったと思われる。参加者の感想としては、本企画のような日本史関係の国際シンポジウムはこれまであまりなく、改めて鳥瞰した視点から歴史研究を行う必要性を感じた、歴史認識に対する相対化の重要性を改めて再確認したとか、歴史分野における「国際日本学」の重要性を再認識したなどといった、好意的な感想が数多く寄せられた。
最後になるが、SGUグローバルアジア研究拠点長・政治経済学術院・梅森直之氏がコメンテーターとして参加したことは、限定的ではあるが、本拠点と「SGUグローバルアジア研究拠点」との関係構築が、一定程度達成されたと考えられる。

(文学学術院 川尻秋生)

※当日のZoom録画はこちらからご覧ください。
12月9日12月10日

開催詳細
  • 日時:2023年12月9日 (土) 13:00- (17:40より懇談会)、12月10日 (日) 10:00開始
  • 会場:早稲田大学 戸山キャンパス33号館3階 第1会議室、オンライン(Zoom Webinar) 併用
  • 使用言語:日本語
  • 参加:学生/教員/研究者
  • 参加費:無料
  • 主催: スーパーグローバル大学創成支援事業早稲田大学国際日本学拠点、早稲田大学総合人文科学研究センター角田柳作記念国際日本学研究所
    後援: 早稲田大学総合研究機構奈良文化研究所、早稲田大学総合研究機構日本古典籍研究所、早稲田大学地域・地域間研究機構朝鮮文化研究所、早稲田大学総合研究機構トランスナショナル社会と日本文化
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