早稲田大学スーパーグローバル大学 実証政治経済学拠点は英国のエセックス大学と共催で「エセックス大学サマースクール@早稲田大学」を対面にて開講しました。
2020年度、2021年度はコロナ禍のためにそれまで早稲田大学で毎年夏に開催されていたエセックスサマースクールを本学で開催することが叶いませんでした。そのため、オンライン受講を希望する学生にはその受講費を補助する形で、意欲ある大学院生の学びを支援してきました。2023年度は2022年度に続き、6回目となるエセックスサマースクール@早稲田を開催する運びとなりました。
開催日:2023年9月18日〜26日
- コース1:Scaling Methods and Ideal Point Estimation by Dr. Royce Carroll
- *コース概要(Summer Schools | University of Essex)
コース1:Scaling Methods and Ideal Point Estimation
エセックス大学のRoyce Carroll先生は、やむなく訪日を見送った2022年に引き続き、Scaling Methods and Ideal Point Estimationを担当され、対面で授業を実施しました。このクラスは中・上級者向けで、難易度が高いプログラムながら、丁寧で熱心な指導で終了した受講生の満足度も高いものとなりました。
参加者レポート
早稲田大学 政治経済学部4年 荒木 聡太
今回のサマースクールでは、ideal point estimationと呼ばれる、サーベイに対する回答からそれに影響を及ぼしていると考えられる潜在的な変数を空間的に推定し、その空間の中の各個人の位置を詳細に推定する方法を学びました。具体的には、法案に対する各議員の行動(賛成・反対)記録や有権者に対するサーベイデータ、投票記録から、各有権者や政党、議員のイデオロギー的位置を推定する方法を学びました。私は投票行動などの政治の中での人間の意思決定に興味を持っているのですが、この分野においては中位投票者定理など、人間の選好を数直線や二次元空間上に表し、その位置関係に基づいて意思決定を行うという空間的な理論が経済学をベースに発達しており、またイデオロギーという形でこのような空間的な考え方が有権者にも浸透しています。一方で、このような理論を実証的に研究する際の問題点は、実際の空間は何か、またその空間の中での位置はどこかを実際に設定・測定することであり、殊更イデオロギー的な価値観があまり共有されていない日本においてはこれが難しいものだとされてきました。今回の授業で学んだ内容は、データ自体から空間を生み出すことで解決できるほか、空間上での点同士の位置関係のみならず各点の詳細な位置を推定することができるため、このような問題を非常に画期的に解決できると感じました。
Royce Caroll先生は、受講生が少ないながらも非常に丁寧に分かりやすく授業をしてくださり、また毎回授業内容を実装することのできるRのコードを配布・実演してくださったため、学んだ内容を理論的にも実践的にも体得することができました。授業内容自体は上級レベルですが、講義では基礎的なレベルから説明してくれる上にRのテクニカルなサポートも充実しているため、政治分析入門等必修の授業レベルの内容を理解していれば学部生でも十分についていけるレベルだと感じました。もし卒業論文や修士論文のテーマとして有権者や議員などの個票レベルのデータを使った研究に興味があるのであれば、受講してみることを強くお勧めします。