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News through 2023

2023年度までのニュース

参加レポート 2:ICPSR2023サマープログラム@ミシガン大学 -Session 2-

社会科学に関する世界最大の研究データのアーカイブを所有するICPSR(政治・社会研究のための大学間コンソーシアム)は、毎年、本部のあるミシガン大学で「社会調査の定量的方法」のサマープログラムを開催しています。1960年代から続いているICPSRサマー・プログラムは、ミシガン州アナーバーで開催され、40以上のコースについて3週間の集中講義が行われました。

実証政治経済学拠点では、このサマープログラムに参加する大学院生に受講料の補助を行っています。今年は、政治学研究科と経済学研究科の3名の大学院生がこのプログラムに挑みました。以下はその一人の学生の体験レポートです。

鄒 慧婷   (Zou,Huiting) 

所属:経済学研究科  修士課程1年
研究テーマ:農業経済学
派遣先・期間: アメリカ・ミシガン大学(2023年7月15日-8月6日)

 

はじめに

ICPSRサマープ◻グラムは様々な計量分析の⼿法を身につけるためのトレーニングプログラムです。

ICPSRプ◻グラムには、基礎的な統計学的知識と、⾼いレベルの計量分析⼿法に関わるコースが多く含まれています。多くのコースが開設された本来の目的は、多くの⼤学において網羅されていない知識を、興味を持つ学⽣たちに対し、提示する機会を提供することです。要するに、これらのコースに含まれた知識は研究に必要で、ICPSRプ◻グラムならではのカリキュラムにより受けられます。今年、ICPSRプ◻グラムは創⽴60周年を迎え、⻑い間、ICPSRプ◻グラムが発展 し、カリキュラムデザインがさらに充実され、計量分析の能⼒を⾼めたい学⽣にとっては得難い機会となっています。

ミシガン大学

授業の様⼦

ICPSRの授業は2種類あり、3週間にわたって1⽇3時間、計量分析⼿法を教えてくれるコースと、短期授業で、主に数学の基礎知識(線形対数)や各種計量ソフト、プ◻グラミング⾔語の使い⽅に関わるレクチャーがあります。コースの総授業時間は合計45時間ですが、早稲田大学の授業は⼀学期で23時間です。比較すると、ICPSRのコースは⽐較的短期間でありながら、集中して授業が行われます。

ICPSRプ◻グラムにおいて、コース選択と自分の学問的関心とのマッチングは重要です。適切にコースを選択することで、学習の効率性と興味を⾼め、プ◻グラム全体の体験をより豊かにし、有意義に過ごすことができます。選択する際には、簡単すぎるコースや難しいすぎるコースを選択しないように配慮することが重要です。適切なコースを選択することで、授業の難易度が合わないことによる挫折感や不満感を免れられます。あらかじめコースの必須知識(prerequisite)をシラバスに基づいて把握 し、今まで履修した科⽬コースを前提として、そのコースが⾃分に合っているかどうかを判断することができます。また、コース終了後に成績証明書grade letterを貰いたい場合、⾃分がすべての課題を完成できるかどうかを慎重に考えなければいけません。

また、⾃分の研究分野や学問的興味に合うかどうかにも気をつけた⽅がいいと思っています。選択されたコースが興味と研究の⽅向に合うと、やる気が出てより効率的に勉強できます。さらに、ICPSRプ◻グラムでは、⼼理学、教育学などの社会科学系の科目が多いため、研究⽅法は経済学でよく使われる計量分析⼿法とは全く異なります。そのため、これらの多分野の授業に参加することで、視野を広げて、各分野の研究⽅法の独自性を知ることができます。しかし、未知の分野であるため、チャレンジでもあります。

申込時にコースを選択する必要がありますが、実際にプ◻グラムが始まった後1週間であれば、コースのま変更はまだ可能です。また、プ◻グラムの初⽇に、オリエンテーションがあり、メンターとの相談も予約できて、メンターからアドバイスをいただいてコースを決定します。もしgrade letterを受取り、いい成績を得たいと望むならば、授業の初⽇から積極的にTAとコミュニケーションを取ることを強くお勧めします。コミュニケーションを通じて⾃分がこのコースに適しているかどうかを理解し、⾃分がコースの内容を把握できる能⼒があるかどうかを判断するのが⼤切です。

各コースのTAはとても優しくて熱⼼で、⾔葉の壁を⼼配する必要はありません。TAたちは様々な質問に真剣に⽿を傾け、細かく答えてくれます。TAと良好なコミュニケーションを構築することで、コースの難易度、授業の進め⽅、課題の内容などに関する情報を得られ、それによって効率的に勉強するための戦略を⽴てることができて、様々なメリットがあります。授業の内容を理解できない場合があれば、TAが⾟抱強く説明してくれます。TAとのいいコミュニケーションが、適切なコースを選択をするのに役⽴つだけではありません。コースの途中にもTAからサポートをもらえ、すべての課題をよりよく完成できるようになります。

また、今年からICPSRプ◻グラムは⼤きく変わりました。プ◻グラムの期間を4週間から3週間に短縮し、カリキュラムがよりコンパクトになりました。これに伴い、いくつかのメリットが提供されます。各コースとレクチャーには講義動画が提供されており、プ◻グラムが終わった後も、12⽉までアクセスできます。コースから四つを選択でき、レクチャーは無制限に履修できます。負担を軽減するために、私たちに勧められた取り⽅は、プ◻グラムの3週間に、最も興味を持っている2つのコースに絞って、対⾯で受け、課題を完成して、プ◻グラムが終わった後、残りのコースは講義動画を⾒て学ぶことです。この柔軟性により、⾃分の勉強プランをよりよく⽴てることが⼤切です。

授業風景

私はできるだけすべての内容を学びたい(「講義が無料なら、取らなきゃ損だ」)の考え⽅に基づいて、すべてのレクチャーを登録しました。これにより、ICPSRプ◻グラムが提供するリソースを活⽤して、プ◻グラムが終わった後も勉強を続けられます。

私はコースから「Panel Data and Longitudinal Analysis」、「Multilevel Models II:Advanced Topics」、「Causal Inference for the Social Sciences II」、と「Time Series Analysis II: Advanced Topics」を登録し、「Panel Data and Longitudinal Analysis」、「Multilevel Models II:Advanced Topics」を対⾯で受講しました。

コースのPanel Data and Longitudinal Analysisは、パネルデータに現れるunit heterogenityとspatio-temporal    dependence問題に対して、これらの問題の存在をどのように検証するのかという方法と解決⽅法、または⽋損値(missing data)、不完備パネルデータ(unbalanced panel data)などの問題をどのように処理するかについて説明しています。コースの前半では、線型代数の基礎知識を⽤いて、unit heterogenityとspatio-temporal dependenceの成因と影響を理論的に分析します。そして、これらの問題の検出⽅法と解決⽅法について、先⽣は異なる⽅法の理論と特徴、異なるパネルデータに対してどの⽅法を使⽤するかについてわかりやすく解説しました。ラボセクションも設置され、stataとRで様々な⽅法を実演しました。RまたはStataしか使った経験がなくても授業の理解や課題の完成に⽀障がありません。ただし、⼀部の⽅法ではRまたはStataのパッケージしかないため、活⽤できるように、事前にRとstataの基礎知識を身につけておくことをお勧めします。

このコースはレベルの⾼い計量分析⼿法も含んでおり、短いプ◻グラムの間で、検定⽅法の原理を十分に理解できないこともありますが、講義動画が提供されますので、プ◻グラムが終わった後、空いている時間を利⽤して、理解を深めることもできます。このコースのgrade  letterを得るには、7回の課題(assignment)を完成する必要があります。コースで学んだ計量⼿法の原理は複雑ですが、課題に⼊っているのはほぼプ◻グラミングに関わり、ラボセクションで配布されたコードサンプルをよく理解し、⾃分で実演してみれば課題をうまく完成できます。しかもTAの採点は正誤で判断せず、提出すれば満点です。また、TAから課題ごとに細かいフィードバックをもらえ、どこが間違っているのか、どのように修正するのかなどを指摘してもらえます。ただの受講より、課題をやってみると、コースの内容をより深く理解し、活⽤できます。

Multilevel Models II:Advanced Topicsは社会科学専攻者向けであり、政経分野の学⽣たちには難しいかもしれません。授業ではchecklistという⾮常に役⽴つツールを教えてもらいました。研究を進める時、多くの場合は計量⼿法で問題を解決するのではなく、リサーチをデザインする時に、時間空間の依存性、オーバーフ◻ー効果など様々な問題を考えなければいけません。先⽣が私たちにchecklistの使い⽅を詳しく解説して、リサーチデザインを考える時、どのような問題を考えるべきかについて熱⼼に教えていただきました。最後のtake-home(持ち帰り)examも、checklistを活⽤した研究も評価の焦点となりました。

その他、暇な時にコースのCausal Inference for the Social Sciences IIの⼀部も受講しました。このコースは政経分野でよく使われる計量⼿法に近い、授業ではRD、DIDなどの運⽤と因果推論ためのmachine learningについて説明してくれました。すべての内容を受講していなかったが、私が受けた授業内容によると、このコースは統計学の基礎知識で計量⽅法の原理を紹介することを重視し、理論部分を詳しく紹介し、lラボセクションはやや短いです。このコースは少し難しいですが、好評が多く、実証研究をしている学⽣にとっては役⽴ちます。難易度が⼼配なら、プ◻グラムが終わってから動画配信で勉強するのもよいかと思います。

レクチャーの「Introduction to Python」と「Introduction to the R Statistical Computing Environment」を受講し、この2つの授業の進め⽅は似通っていて、learn by doingの原則に従って、授業は進⾏中に、先⽣がコードを解説しながら、みんなは⾃分のパソコンでコードを書いてみて、エラーが出る時は気軽に声をかけて、先⽣とTAから助けてもらえます。インタラクティブな授業で、⾮常に実⽤的なコースであり、短い間でプ◻グラミング⾔語の基礎を身につけることができます。すでにR或はPythonを少し触れたことがある場合、動画配信を⾒るのを勧めます。時間を節約でき、効率的に勉強することができます。

 

現地での⽣活

アナーバーはデトロイトに近いですが、とても静かで安全な都市です。ミシガン⼤学を中⼼に広がり、町はきれいで美しく、公園や住宅地域には豊富な造林があり、「⽊の町」と呼ばれます。リスや野ウサギが思いがけない場所に現れ、知られていないキノコが⾬上がりに生え、8⽉の気温も20 度前後で、涼しく過ごしやすい場所です。

プ◻グラム期間中、ミシガン⼤学の学⽣から、夏の間だけ部屋を⼜貸ししてもらう物件に住んでいました。他の州とは異なり、ミシガン州ではsubleaseは合法です。subletのメリットは、より安い家賃で適切な家を⾒つけられることと、空間が広く、キッチンがあって⾃炊できることで す。

 

しかし、デメリットもあり、適切な部屋を⾒つけ、契約を結ぶために時間がかかりま す。また、On campus housingの寮は主な教学棟CCCBにより近く、徒歩5分弱ですが、私たちのsubletは徒歩10分の距離にありました。授業のスケジュールが集中しているため、昼休みの1時間以内に、宿泊先を往復するのは時間的に厳しい。しかし、キャンパス内には⾃習できる場所が多く、昼休みにはキャンパス内で休憩したり、⾃習したりして課題を完了することができます。

     

アナーバーでの移動は主にバスで、ほとんどの場所に⾏けます。しかし、Art festival前後に迂回路が設けられるため、campus近くの多くの駅は迂回路の範囲内となります。また、路線バスは  あまり時間通りにこないし、駅に到着しても早く発車してしまうこともあり、Google mapのリアルタイム情報もあまり正確ではないため、公共交通機関を利用するのはあまり便利ではありません。

 

感想

参加者⼀⼈⼀⼈にとって、こんな⾼強度のプ◻グラムはかなりのチャレンジだと思います。現地到着後、時差の問題もあり、できるだけ早く現地の⽣活に慣れる必要もあります。特にSection 2は早稲⽥⼤学の期末週に重なって、期末課題とICPSRプ◻グラムの課題を同時にこなさなければなりません。この場合、合理的な時間管理が特に重要になります。しかし、これらの課題を克服したことによる達成感はこの上ないものです。ICPSRプ◻グラムの参加により、確実に計量分析能⼒を⾼めることができ、今まで学んだ知識をつなげ、新しい内容を習得し、研究に応⽤できました。ICPSRプ◻グラムのほとんどのコースの質は⾮常に⾼く、計量分析能⼒を⾼めたい私にとって、⾮常に貴重な機会でした。

また、このプ◻ジェクトは社会科学の異なる⽅向に対して、さまざまなツールや手法を用いた豊富なコースを提供しているため、さまざまなコースに参加することで、私⾃身の研究課題に新しい⽅向性や視点を得ることができました。同時に、将来の研究において、より包括的で深みのある研究を得るために、異なる分野の研究⽅法を柔軟に活⽤するきっかけにもなりました。

最後に、プ◻ジェクトに参加して、私は多くの友達ができました。彼らは世界各地から来ており、研究の⽅向性はそれぞれ異なりますが、先輩たちからアドバイスや励ましを受けながら研究を進めています。また、相談した時、多くの学⽣たちが⾃費で参加していることを知って、早稲田大学からの補助に感謝します。経済的なプレッシャーを軽減し、このような貴重なICPSRプロジェクトに参加する機会をいただき、⼼より感謝申し上げます。

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