Waseda Goes Global: A Plan to Build a Worldwide Academic Network That Is Open, Dynamic and Diverseスーパーグローバル大学創成支援「Waseda Ocean構想」

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2023年度までのニュース

海外派遣レポート:エコール・ポリテクニーク(フランス)

実証政治経済学拠点ではスーパーグローバル大学創成支援事業の一環として、CEFM(金融市場実験研究センター)と協働で大学院博士課程の学生を海外の有力大学に派遣し、現地研究者と交流を深めながら研究に専念する機会を提供するためのプログラムを開始しました。この派遣により、研究者間の交流や共同研究のスタート、大学院教育の連携強化などの成果が期待されています。今年度の派遣学生としてエコール・ポリテクニーク(フランス)で2か月間の研究活動を終えて帰国された篠田太郎さんの報告をお届けします。

 

経済学研究科博士6年 篠田 太郎(SHINODA, Taro)
派遣機関:エコール・ポリテクニーク(フランス)

このレポートでは、スーパーグローバル大学創成支援事業の支援によって9月6日から10月27日まで滞在したフランス、エコール・ポリテクニーク(以下ポリテクニーク)での研究活動について報告する。研究成果についての報告はもちろん、併せて報告する現地での生活に関する情報が、今後同様に派遣される人の参考になれば幸いである。

渡航

往路のフライトが9月6日の早朝に羽田空港発だったため、5日に長野県松本市を出発し、神奈川県横浜市の実家に前泊した。ロシア上空を飛ぶことができないため、北極圏やグリーンランド、アイスランドの広大な土地を眺めながら15時間かけてパリのシャルルドゴール空港に到着した。そこから更に鉄道とバスを乗り継いで約2時間移動し、マシーにある滞在先に到着した。
復路は10月27日の昼過ぎに滞在先を出発し、同日19時にシャルルドゴール空港を発った。翌10月28日16時頃羽田空港に到着し、21時頃松本の自宅に帰着した。
往路、復路ともに出入国はスムーズで、COVID-19によって必要とされる追加的な手続きはほとんどなかった。

滞在先

約二か月の長期滞在ということで、ホテルでの宿泊ではなく民泊サイト “Airbnb” を利用した。滞在先は14階建てマンションの13階にある、3LDKの一部屋だった。部屋は広くはなかったが、室内にバスやトイレ、キッチンが揃っていて、生活が完結できるということが決め手だった。マンションの向かいにはスーパーマーケット、パン屋、薬局があり、ポリテクニークまではバス一本、片道約40分で通える好立地だった。

研究活動

平日は基本的に、8時半から9時までの間にポリテクニークに到着し、17時頃まで研究して帰宅する、という生活を送っていた。現地の郡山幸雄教授を訪問する形で、Center for Research in Economics and Statistics(以下CREST)の5階に共同研究室を割り当てていただいた。9月下旬までは他の研究者と共同利用していたが、それ以降はほとんどの期間一人部屋だった。

Center for Research in Economics and Statistics (CREST)

研究活動では、博士課程で行ってきた、三人交渉実験についての二つの研究を中心に進めた。一つはコアと提携形成の関係を調べる研究 “The Core and the Equal Division Core in a Three-person Unstructured Bargaining Experiment: The Weakest Coalition is Ignored”(以下研究1)、もう一つは交渉過程の言語分析を行う研究 “How Does Bargaining Proceed? – A Linguistic Analysis of a Three-person Unstructured Bargaining Experiment”(以下研究2)である。研究1は二つのジャーナルに投稿するもリジェクトされた状態であったため、査読コメントを参考にしてデータの分析を見直し、派遣中に修正稿を完成させた。研究2は、実験中に被験者がチャット機能を使って送信したメッセージの分析を主に進め、派遣中に初稿の約7割を完成させた。

これらの研究を進めるにあたって、多くの現地の研究者と交流し、アドバイスをいただいた。派遣を受け入れていただいた郡山幸雄教授をはじめ、ポリテクニークのGuillaume Hollard教授、Laurent Linnemer教授、Matias Nunez特別研究員、Yves Le Yaouanq助教にはデータの分析方法や論文での見せ方についてコメントをいただき、博士課程学生のFelix Schleef氏、Ines Picard氏とは互いの研究について議論し、交流を深めた。また、9月中旬から約2週間ポリテクニークを訪問していた、指導教員の船木由喜彦教授にも、両研究の論文執筆について研究指導を受けた。

共同研究室と入構証

研究発表

9月19日にCRESTの内部セミナーにて、研究1、2の両方をまとめて “Two Studies on Three-person Unstructured Bargaining Experiment” というタイトルで1時間の研究発表を行った。聴講者からは多数の有意義な質問やコメントをいただき、特に郡山教授からは研究内容のみならず、発表や質疑応答の仕方についてもアドバイスをいただいた。派遣の早い段階で自分の研究について知ってもらえたことによって、前述の交流のいいきっかけ作りになった。この内部セミナーは原則毎週月曜日に開催されており、派遣中は聴講者としても出席し、他の研究者の発表を聞いた。

CRESTの内部セミナーでの研究発表

教員・博士課程の学生のための交流会

9月26日と27日には、ブルゴーニュ地方のディジョンにて開催された “CREST/LESSAC Workshop in Experimental Economics” に参加し、 “Confidence Game: An Experiment of Psychological Safety” というタイトルで研究発表を行った。こちらは研究1、2と並行して進めている、船木教授、東工大の阿部貴晃助教との共同研究である。今年度に入ってスタートしたばかりの新しい研究で、学会で発表するのは今回が初めてだったが、興味をもって聞いてもらうことができ、主に今後の実験計画について多くの建設的なコメントをいただいた。また、26日夜に開かれた食事会では他の参加者たちとの交流を深めた。

ディジョンでのワークショップ会場

日常生活

朝食は主にマンションの向かいにあるパン屋でクロワッサンなどを食べ、昼食はCRESTの1階にあるカフェテリアもしくは徒歩5分のところにあるパン屋でサンドイッチを食べていた。夕食はスーパーマーケットで食材を買って、主に自炊をした。円安が進んでいたこともあり、生活費を抑えるためにレストランでの食事は週に1回程度にとどめていた。フランスの食事は美味しいが、どうしても途中で日本の味が恋しくなる。そのような時には、日本から持参していたカレーやうどん、ラーメンを食べると、いくらか落ち着いた。

フランスでは、特に若い人はかなりの割合で英語を流暢に話せるため、必ずしもフランス語を話せなくても生活することができる。また、現地での通信は日本からWi-Fiをレンタルするのではなく、空港などのキオスクで購入できる30日間有効のSIMカードを使用していた。

9月、10月のフランスは日本よりもだいぶ寒く、朝晩や雨の日は気温が10℃を切ることも多かった。急激に気温が下がったことと、長旅の疲れからか、派遣が始まってすぐに体調を崩し、高熱など様々な風邪の症状に苦しんだ。マンションの向かいにある薬局で抗原検査キットを購入し、セルフテストを行ってみたが結果は陰性だったため、日本から持参していた風邪薬や解熱剤を服用して休養した。抗原検査キットは日本よりもだいぶ安く手に入れることができた。

帰国の日が近付いてきた10月中旬にも体調を崩し、余分に買ってあった検査キットでセルフテストをしたところ、陽性の判定が出たため一週間の自主隔離を行った。はじめの三日間くらいは高熱に苦しんだが、その後は楽に過ごせるようになった。フランスでは公共の場、もしくは室内であってもマスクを着けている人がほとんどいないため、派遣中のどこかで罹患するのではと予期していたが、帰国直前に罹患しなかったのは不幸中の幸いだった。ただ、自主隔離期間が終わった後もたまに重い頭痛やブレインフォグなどの後遺症に苦しめられることがあり、休養を余儀なくされた。

休日の過ごし方

週末はパリの街を散歩したり、中学生の頃から趣味で続けているチェスの大会に参加するため、パリ市内だけでなくディジョンやリヨンなど国内の他の街に遠征したりして過ごした。チェスの試合をしに来る日本人は珍しいため、どこに行ってもとても暖かく迎え入れてもらうことができた。

セーヌ川

パリで参加したチェスの大会

おわりに

研究目的で海外に長期間滞在するというのは今回が初めての機会だったため、派遣中に経験したすべてが刺激的で有意義なものだった。指導教員の船木教授、派遣を受け入れていただいた郡山教授はもちろん、派遣を滞りなく行えるように尽力していただいたすべての方に、この場を借りて謝意を表する。

 

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