2026年9月8日(火)、早稲田大学国際会議場において「W-SPRING・W-SPRING-AI博士フォーラム」を開催しました。
本フォーラムは、博士後期課程への進学を後押しするとともに、研究力向上とキャリアパスの多様化を支援するために国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が展開する事業である「次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)」および「国家戦略分野の若手研究者及び博士後期課程学生の育成事業(BOOST)」の支援を受け、本学が運営する「早稲田オープン・イノベーション・エコシステム挑戦的研究プログラム(W-SPRING)」および「早稲田次世代AIイノベーション・エコシステム挑戦的研究プログラム(W-SPRING-AI)」の成果報告、参加学生同士のネットワーク構築、および、分野を横断する共同研究を創出するきっかけづくりの場の提供を目的として開催するものです。
3回目の開催となる今年度は、14の研究科から、W-SPRINGおよびW-SPRING-AIの支援学生約230名が一堂に会し、交流を深めました。

開会挨拶
冒頭、本学常任理事・W-SPRING事業統括(肩書は2026年9月8日時点)の本間敬之(理工学術院・教授)は、学生に向けて「博士課程において専門性を極め、研究成果を上げることは必要条件です。研究成果は、周囲に理解してもらうことで初めて価値を持ちますから、成果を周囲に理解してもらうためのコミュニケーション力も不可欠です。さらに、社会課題が複雑化している昨今においては、広い視野と異分野と連携する力も重要です」と述べました。
さらに、支援学生が一堂に会する機会は、年に一度開催される本フォーラムのみであることに触れ、この貴重な機会を積極的に活用し、学生同士で交流を深めるよう促しました。

常任理事・W-SPRING事業統括 本間敬之(理工学術院・教授)※肩書は開催当時のものです
来賓挨拶
来賓の文部科学省 科学技術・学術政策局長の清浦隆氏は、同省で採用する博士人材が増えていることに触れ、実際にともに働く中での印象について、「きわめて有能で柔軟性があり、リーダーシップも備えていると感じました」と述べられました。
また、施策を考える上で「科学とビジネスの近接化」が進んでいることを意識しているとし、AIなどの発達に伴って知見が集約されるスピードが増し、それが社会へと展開されるサイクルも早まっていると指摘されました。さらに、さまざまな分野を結び付け、新たな展開を生み出していくためには、知見や課題を共有し、ともに取り組むことのできる人材が必要であることにも触れ、異分野の人材同士が交流することの重要性を強調されました。
最後に、会場の学生たちに向けて、「博士課程に進んで良かったと思ってもらえるよう、引き続き支援を進めて参ります」とメッセージを送られました。

文部科学省 科学技術・学術政策局長 清浦隆氏
ポスターセッション趣旨説明
ポスターセッションの開催に際し、W-SPRING-AI事業統括の鷲崎弘宜(理工学術院・教授)からは、学生に対して3つのアドバイス、1)ポスターではなく人に向かって話すこと、2)相手に関心をもてば相手も関心を返してくれること、3)研究ネットワーキングの機会を楽しむこと、が伝えられました。

W-SPRING-AI事業統括 鷲崎弘宜(理工学術院・教授)
基調講演
続いて、株式会社 島津製作所 ストラテジック・アドバイザーの飯田順子氏による基調講演「Beyond the PhD –Creating Value for Society in the Age of AI –」が行われました。飯田氏は、ご自身の経験を踏まえ、科学技術はそれ自体が目的ではなく、価値を生み出すための手段でありPhDも同様に手段である。PhDは教育の終わりではなく、社会への価値創造の始まりである、との見解を示されました。
また、イノベーションについて、技術は可能性を生み出すが、その価値を生み出すのは人であるとした上で、例えば、AI、ヘルスケア、サステナビリティ、モビリティ、ウェルビーイングは別の社会課題に見えるが、相互に関連しており、その解決に向けて、専門知識を横断的に組み合わせ、新たな価値を生み出すことのできる人材が求められている、と述べられました。
さらに企業が求める人材像として、重要な課題を特定できる人、知識と行動を結び付けられる人、分野横断で協働できる人、継続的に学び続けられる人、を挙げられました。その上で、最も重要な資質として「好奇心」を強調し、支援学生にエールを送られました。

株式会社 島津製作所 ストラテジック・アドバイザー 飯田順子氏
異分野融合プロジェクトの発表
基調講演の後、異分野融合研究プロジェクトの制度説明および本年度採択された3チームによる成果発表がありました。プロジェクトは以下の通りです。
- Creation of Next-Generation Brain-Computer Interfaces: Human-Centric Support Systems Based on Integrated Analysis of Motor Imagery and Cognitive Load
- Stimulus-evoked responses in cerebellar neurons of an autism model, CRMP4 knockout mice, and their association with autismlike behaviors
- Whole-Body Motion Generation for Humanoid Robots Based on Human Pitching and Analysis of the Non-Throwing Arm Function
ポスターセッション
その後、支援学生によるポスターセッションが、40分ごと、5パートに分けて行われました。今回は、本学の博士人材育成プログラムを支援いただいている企業の方々をはじめ、本学名誉教授や本学博士後期課程出身者、本学の博士人材育成プログラムを修了した博士人材など、約60名にポスター審査員としてご参加いただき、優れた発表を「優秀ポスター賞」として表彰しました。
会場では、ポスターの前に立つ学生たちが、自身の研究を訪れた審査員や他の学生に意欲的に説明し、活発なディスカッションを重ねる様子が見られました。
今回初めて参加した学生からは、「自分の専門分野とは異なるものの、興味深い研究発表があり面白かった」、「近い研究分野であっても、普段はあまり話す機会のない学生と交流する良い機会となり、実際の研究手法について聞くことができて良かった」といった声が寄せられました。

ポスターセッションの様子

優秀ポスター賞表彰式の様子
パネルディスカッション
ポスターセッションの後は産業界の方にご登壇いただき、パネルディスカッションを行いました。第1部は「博士課程で培った経験・スキルは企業でどのように活きるのか」、第2部は「企業が博士人材に期待することとキャリアの広がり」と題して、それぞれ4名のパネリストに、ご自身の経験を踏まえたお話しをいただきました。
参加した学生からは、「業界や年齢が異なるパネリストから、博士人材に対する共通の認識を聞くことができた」「キャリアデザインや博士として働くことのイメージを持てた」などの感想が聞かれ、学生にとっても有意義なパネルディスカッションとなったようです。司会進行を務めた朝日透(W-SPRINGインターンシップ・キャリア支援責任者、理工学術院・教授)も「課程博士と社会人博士、外資系企業と国内企業、さらに世代や専門分野など、それぞれ異なる立場やバックグラウンドを持つ方々でありながら、共通する主張や、今の学生たちを後押しするメッセージがあり、それが学生にも伝わったのではないか」と、実感を得たようでした。

パネルディスカッションの様子(第1部):左から司会進行の朝日教授、国立研究開発法人産業技術総合研究所 経営企画本部DEI人事部/エネルギー・環境領域省エネルギー技術研究部門の佐藤縁氏、株式会社リバネス 代表取締役CSOの髙橋修一郎氏、株式会社日立製作所 研究開発グループDigital Innovation R&D企画室戦略企画ユニット員の手嶋達也氏、東京エレクトロンテクノロジーソリューションズ株式会社の渡邊あかね氏

パネルディスカッションの様子(第2部):左から司会進行の朝日教授、三井化学株式会社ベーシック&グリーン・マテリアルズ事業本部本部長付きプロジェクト統括の廣末雅之氏、株式会社メルカリ mercari R4D Labリサーチャーの竹井悠人氏、日本電気株式会社(NEC) バイオメトリクス研究所主任研究員の梅松旭美氏、アステラス製薬株式会社 DigitalX R&D Digital, Modality Informatics, マネージャーの井手圭吾氏
長時間にわたるフォーラムの開催となりましたが、懇親会・ネットワーキングの時間にも多くの学生が集まり、自由に語り合う姿が見られました。参加した学生たちは、互いに交流を深めるなかで、博士号取得への意欲と、その先の将来に向けた決意を新たにしていました。
早稲田オープン・イノベーション・エコシステム挑戦的研究プログラム(W-SPRING)
将来の我が国の科学技術・イノベーションの基盤となり、社会課題の解決に取り組む博士学生を育成するとともに、博士の多様なキャリアパスを確立させることを目指して、2021年度から開始し、2024年度から2期目を迎えた博士学生支援プログラムです。経済的支援として、博士学生一人当たり最大で年間290万円を240人に、最長3年間支給するとともに、学位取得後を見据えたキャリア開発・育成コンテンツをカリキュラムに組み込むことで、博士人材が産業界で幅広く活躍するための素養を身に付け、社会実装を目的とした融合的研究に専念できるよう支援しています。
本プログラムの実施を通じて、社会の課題解決と産業界のニーズに応え得るべく、博士課程の教育改革をこれまで以上に押し進め、日本の産業競争力の強化と社会の持続可能な発展に寄与していきます。
(本プログラムは、文部科学省/JST「次世代研究者挑戦的研究プログラム<Support for Pioneering Research Initiated by the Next Generation(SPRING)>」に採択されています)
早稲田次世代AIイノベーション・エコシステム挑戦的研究プログラム(W-SPRING-AI)
博士学生が、領域横断に AI イノベーションを生み出し続け、世界的な AI 技術・応用の研究をリードし、同分野の研究を本格的に推進・先導するリーディングサイエンティストに成長することを目指して、2024年度から博士学生への支援を開始いたしました。経済的支援として、博士後期課程の学生一人当たり最大で年間390万円を最長3年間支給するとともに、学位取得後を見据えた育成コンテンツをカリキュラムに組み込むことで、次世代AI分野に関する高度な専門性と研究遂行能力を身に付けると同時に、自身の研究に専念できるよう支援します。
本プログラムの実施を通じて、次世代 AI 分野におけるイノベーション創出や日本の産業競争力強化に貢献していきます。
(本プログラムは、文部科学省/JST「国家戦略分野の若手研究者及び博士後期課程学生の育成事業 次世代AI人材育成プログラム(博士後期課程学生支援)」に採択されています)







