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【開催報告】11/27 公開講演会「人の違いに価値を置き、多様な個性を尊重するということ」

2020年11月27日、講師にLGBTQや多様な人々の場所づくりのために活動されている杉山文野氏(㈱ニューキャンバス代表取締役)、本学GSセンター専門職員の大賀一樹氏をお招きし、2020年度 男女共同参画・ダイバーシティの推進プロジェクト講演会「人の違いに価値を置き、多様な個性を尊重するということ」をオンラインにて開催いたしました。

冒頭、大学を代表してダイバーシティ推進担当理事の麻生享志教授(国際学術院)より、本学のダイバーシティ推進の取組みについて紹介がありました。本日の講演会では杉山さんの豊富なご経験から多くの知見、ご助言などをいただけることを楽しみしており、大賀さんからはコロナ禍をきっかけにすぐさまオンラインによる相談や支援体制を整え対応したGSセンターの活動についてご紹介いただきたい旨、挨拶がありました。併せて、講演会参加者の皆さまへ本学のダイバーシティ推進の取組みへのご理解、ご協力への謝辞が述べられました。

講演の中から、エッセンスをダイジェストでご紹介します。

第1部「ジェンダー・セクシュアリティについて理解を深めておいてもらいたいと思うこと」(杉山文野氏)

講師:杉山 文野 氏

「LGBTとは」といったような基本的な知識については、今般さまざまな資料やよい書籍がたくさんあるので、今日は自分自身が一当事者として生活してきた中で感じたことや見てきた景色を共有し、ジェンダーやセクシュアリティを考えるきっかけやヒントとしていただきたいと思っている。

大人になることが描けなかった学生時代

幼い頃の格好や遊び方を思い返しても、またセーラー服を着てルーズソックスを履いていた中高生時代も、自分が「女の子」だと思ったことは一度もなかった。ずっと抱き続けてきた身体への強い違和感は、誰にも言ってはいけないことだと思っていた。LGBTQそれぞれにまったく異なる課題があるが、トイレやお風呂など、男女で二分される場所はトランスジェンダーにとって特に苦痛である。学生の頃は、人目を気にしてトイレにはなるべく行かないようにしていたし、どうしてもというときは、誰かと鉢合わせになる確率が低い授業中に、人気の少なさそうな隣の建物のトイレに駆け込んだりしていた。トイレに行くことでさえ毎日、その都度気を遣い、性別を問われるたびに苦痛な気持ちになる。自分だけがおかしいのではないか、と心が引き裂かれるような思いや根拠のない罪悪感で自らを責め続けていた。当時は、LGBTQであるということをオープンにしながら社会生活を送っている人はほとんど目に映らず、自分がこの先、どうやって大人になっていけばよいかわからなかった。

転機と活動の原点

高校生の頃、誰にも言えなかったこの思いを友人に話した。はじめてのカミングアウトだった。何をどう話したかも覚えていないような状態だったが、黙って話を聞いてくれた友人は最後にひと言、「話してくれてありがとう。性別がどうであれ、あなたはあなたに変わりない!」と言ってくれた。このとき、生まれてはじめて「自分は自分だと言っていいんだ。変わらず友だちだと言ってくれる人がいるんだ」という満たされた気持ちになった。その後、少しずつ仲の良い友だちにカミングアウトするようになり、少しずつ受け容れてもらい、少しずつ少しずつ自己肯定感を取り戻していけたように思う。当事者の多くが、大切な場所であればあるほど「言えない」と悩むものだが、今思えばこのカミングアウトは自分にとって大きな転機であった。

オンライン講演会の様子

もちろんこの後、すぐにすべてがうまくいったわけではない。「自分はここにいる」というメッセージを伝える気持ちで本を書いたら、「性同一性障害の・・」とまるで珍しい人を扱うかのように取り上げられ、バックパッカーで旅したときも世界中で「He」なのか「She」なのかを問われ、地球の果ての南極船の中でも男性、女性どちらと部屋をシェアするのかで揉め、どこにいても自分の性別、そして自分自身から逃げられないことを痛感した。であるならば、「いっそ、今いる場所を生きやすく変えていこう!」と発想を転換し、それが現在行っている啓発活動等の原点となった。

昨年、わが家に子どもが誕生した。自分たちのような家族のあり方をすごく珍しいことのように扱われることもあるが、子どもの保育園のお迎えに行き、一緒にお風呂に入り、夕飯の食卓を囲むといった生活を切り取ると、どこの家庭とも変わらないのではないかと思う。

日本の現状、小さなワンアクションを

しかし一方では、パートナーと法律上の夫婦とはなれず、日本社会からは法的に家族として認められていない現実がある。戸籍上の性別を変更することの要件に、手術して生殖機能を取り除くことが含まれており(2013年、性同一性障害特例法)、婚姻の平等も実現されていないのが日本の現状である。2019年、世界保健機関(WHO)において、性同一性障害が「国際疾病分類」の精神疾患の分類から除外されることが決定したが、日本は国レベルの保証や法整備において、G7加盟7か国やOECD加盟 35か国と比較して非常に大きな遅れをとっている。憲法の中で「すべて国民は、法の下に平等であって」と謳っているにもかかわらず、婚姻できる人と法的にそれができない人がいる。社会構造の中に差別的な構造が組み込まれてしまっている状況というのが、一番の問題だと感じている。

皆さんもご存じの自治体によるパートナーシップ制度についても、日本ではじめて導入した渋谷区の区長である長谷部健さんと制度実現に向けて取り組んだことを振り返ると、きっかけは隣で困っている友だちを見て、「何か自分にできることをやってみよう」という小さな一歩であったと思う。はじめから「何か大きなことを成し遂げてやろう」と取り組んだのではなく、小さな一歩を積み重ね、それが結果として大きな流れにつながった。皆さんの周りのちょっと困っている人へのワンアクションが社会を変える大きな一歩につながると思うし、本日の講演も、大きな一歩につながる小さな一歩だと感じている。LGBTQに限らずだれもが暮らしやすい社会が実現されることを切に願っている。

第2部「早稲田大学におけるGSセンターの取組み」(大賀一樹氏)

講師:大賀 一樹 氏

早稲田大学のダイバーシティ推進は、大学全体のダイバーシティ推進の施策を担うダイバーシティ推進室(2016年7月開設)と、学生支援の実行組織であるスチューデントダイバーシティセンター(2017年4月開設)が、それぞれの役割を担いながら緊密な連携をとる体制を敷いており、スチューデントダイバーシティセンターでは、多様なマイノリティ学生が安心して学業に専念できる学生生活環境の確保と大学に集う全構成員が多様な価値観や生き方を受容するキャンパスづくりの推進を理念として活動している。

GSセンターは、2015年の「Waseda Vision 150 Student Competition」において、学生有志団体「ダイバーシティ早稲田」の「日本初!LGBT学生センターを早稲田に!」が総長賞受賞したことをきっかけに、いわばボトムアップの形で誕生した。ミッションとして、「うけとめる(相談支援・居場所支援)」、「つなげる(実態把握と課題解決)」、「つたえる(イベント・啓発)」、「ひろげる(認知度向上)」を掲げ、多様なマイノリティ学生が安心して学業に専念できる学生生活環境の確保と、本学に集う全構成員が多様な価値観や生き方を受容するキャンパスづくりの推進、支援に取り組んでいる。

相談支援は、早稲田大学の学生と学生の保護者・保証人、その学生を指導する教職員を対象に実施しており、コロナ禍においてはオンラインでも対応できるよういち早くその体制を整えた。性のあり方に関すること、大学の制度の活用方法など、本人の合意を得たうえで学内の関連機関と連携しながら解決し、またすぐには解決できないことには一緒に取り組むようにしている。

センターは関連書籍も充実しており、また気軽に参加できるイベントも多数実施しているので、Webサイトの情報をご覧いただき、当事者であるかどうかに拘わらず、関心のある方はぜひ参加してみてほしい。今後は、ジェンダーやセクシュアリティについて、さらに多くの学生・教職員に「他人ごと」ではなく「自分ごと」として考えてもらえるようなアプローチや、学内研修のさらなる充実、学生スタッフのエンパワメント、継続的に安定した相談支援が提供できる体制整備、センター環境の充実等、早稲田大学のダイバーシティ実現に向け、一つずつ取り組みを進めていきたい。

最後に、進行役である本学ジェンダー研究所の弓削尚子法学学術院教授から、本日の参加者の皆さまへの謝意が伝えられ、講演会は盛会裏に終了しました。

左上:大賀一樹氏、右上:司会 弓削尚子教授 中央:杉山文野氏


開催概要はこちらからご覧いただけます。

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