データサイエンス研究所【第I期】
Institute of Data Science
研究テーマ
経営判断、マーケティングに関わるデータの利用促進に関する研究
分野:社会システム
研究概要
インターネットの普及とコンピュターの処理能力の向上により「データ」×「システム/分析モデル」×「人」が企業のマネジメント、マーケティングを支える重要な要素となっている。この時代の変化に対応するため、企業のマネジメント体系やマーケティング施策のためのデータ分析をどのようにデザインするのか、あるいは、どのようなシステム、分析モデルであれば意思決定に活用できるのかといった点を明らかにすることが、ビジネスの世界では、差し迫った重要な課題である。一方、企業経営の意思決定やマーケティング施策に活用し得るデータは、ますます大規模化すると共に、様々な方向へ多様性を高めており、このような特性を踏まえた次世代のデータサイエンスの確立が急務となっている。
本研究所では、このような課題に対応するため、合理的な意思決定を支援するためのシステム、分析モデル、管理手法についての研究を行い、今後の企業の意思決定、マネジメント・システムの提言を行うことを目的とする。また、企業のマーケティングに欠かせない、消費者の購買行動や意思決定などの基礎的な研究についても行うこととする。
研究の特色としては、データは消費者調査データに留まらず、POSデータなどの購買データ、インターネットのログデータなど、企業が扱う実データを用いて実証的な研究を行うことである。あわせて、研究結果の対外的な発表を積極的に行い、ビジネスに向けた提言を行う。
研究報告
【2018年度】
本研究所では、広く企業活動で蓄積されるビジネスデータの活用技術としてのデータサイエンスに焦点を当て、様々な観点から「経営判断やマーケティング活動に関わるデータの利用促進に関する研究」を展開している。2018年度も研究所の研究目的に即し、ビジネス上の様々な課題を対象としたデータ分析技術や分析モデルの開発を行い、実データを用いた検証を行った。具体的には、以下のような研究の活動を行った。
(1) 前年に引き続き、ECサイトにおける中古アイテムのプライシング問題を対象に、過去の販売実績データから適切な出品価格を推定するモデルの改良を行った。
(2) クレジットカードの利用履歴データを活用し、クレジット決済とポイントカードとしての利用の差異と購入店舗・商品カテゴリとの関係を分析するモデルを構築し、顧客クラスタリングを行った。
(3) 共同研究先である小田急電鉄、小田急エージェンシーと協力し、産学連携イベントの企画立案を行い、2019年2月に「オーダーメイドチケットトリップ」という産学連携イベントを実施した。
(4) ビジネスアナリティクス分野における多階層深層学習モデルの活用を進め、テレビ番組情報と出演者情報による視聴率予測モデルを構築し、その有用性について検討を行った。
(5) ネットワークプリンタの利用履歴データ分析に対して異常度指標を導入し、将来的に優良顧客に成長する顧客、離反する顧客の分類モデルを構築した。また、優良顧客判定のために有効な特徴量の自動抽出手法の開発を行い、実データを用いてその有効性を検証した。
【2017年度】
本研究所では、広く企業活動で蓄積されるビジネスデータの活用技術としてのデータサイエンスに焦点を当て、様々な観点から「経営判断やマーケティング活動に関わるデータの利用促進に関する研究」を展開している。2017年度は前年度の研究活動に引き続き、様々な課題を対象としたデータ分析技術や分析モデルの開発を行い、実データを用いた検証を行った。具体的には、以下のような研究の活動を行った。
(1) ECサイトにおける中古アイテムのプライシング問題を対象に、過去の販売実績データから適切な出品価格を推定するモデルを、機械学習手法を用いて構築し、実データにより検証を行った。
(2) 消費者の購買行動に関するパネルデータの分析手法について引き続き検討を行い、時系列分析モデルを用いて、周期購買行動とイベント反応度によって消費者クラスタリングする手法を開発した。
(3) 優良顧客の度合いを表す会員ステージを向上させるための重要商品を評価するモデルについて、転移学習を用いたモデルを構築し、実データに対して分析結果を示した。
(4) ネットショッピングにおける購買中止率の改善を目的とし、様々なプロモーション施策の効果を検証した。
(5) ネットワークプリンタの利用履歴データに対し、機械学習モデルを用いた分析モデルを構築し、実データを用いてユーザの利用傾向分析を行った。
【2016年度】
本研究所では、広く企業活動で蓄積されるビジネスデータの活用技術としてのデータサイエンスに焦点を当て、様々な観点から「経営判断、マーケティングに関わるデータの利用促進に関する研究」を展開している。2016年度は研究所の設立趣旨に則り、企業活動における様々な課題を対象としたデータ分析と活用技術の開発を推進し、実データを用いた検証を行った。具体的には、以下のような研究の活動を行った。
(1) 消費者の購買履歴データを対象とし、個別製品の購入間の共起関係について、階層的ネットワークを用いたモデルを提案し、シミュレーション分析を行った。
(2) ID付きPOSデータとアンケートデータを統合的に分析し、顧客を購買傾向と嗜好によってクラスタリング可能な統計モデルを開発し、実データを用いて検証を行った。
(3) 優良顧客の度合いを表す会員ステージを向上させるために重要な商品を評価するモデルを構築し、実データに対して分析結果を示した。
(4) ネットショッピングにおける購買中止率の低下を目的とし、制御焦点理論を用いたプロモーションを行い、その効果を確認した
(5) 購買履歴データを用いて、ブランド・ロイヤルティに代わる、ブランドと消費者の関係性を示す指標の開発を行った。
(6) パラ・データ(付随的に収集されるデータ)のマーケティングへの活用として、消費者の設問に対する反応時間を用いて、ブランドを評価する手法の検討を行った。
所長
後藤 正幸[ごとう まさゆき]( 理工学術院教授)
メンバー
【研究所員】
後藤 正幸(理工学術院教授)
守口 剛(商学学術院教授)
大野 高裕(理工学術院教授)
永田 靖(理工学術院教授)
蓮池 隆(理工学術院准教授)
小林 学(データ科学総合研究教育センター教授)
須子 統太(社会科学総合学術院准教授)
堀井 俊佑(グローバルエデュケーションセンター准教授)
【招聘研究員】
岩永 二郎(株式会社エルデシュ)
大久保 豪人(東洋大学経営学部経営学科専任講師)
荻原 大陸(株式会社リクルートキャリア)
櫻井 崇(株式会社リクルートキャリア)
清水 俊明(株式会社スタートトゥデイ取締役兼ホスピタリティ・マーケティング本部本部長)
鈴木 広人(城西国際大学経営情報学部准教授)
Zeng Donglin(ノースカロライナ大学生物統計学部教授)
田畑 智章(東海大学情報通信学部経営システム工学科准教授)
樽石 将人(Retty株式会社CTO)
中川 慶一郎(株式会社NTTデータ数理システム取締役)
三川 健太(湘南工科大学工学部情報工学科准教授)
村上 智章(株式会社マクロミル研究員)
山下(酒井) 遥(上智大学理工学部情報理工学科助教)
Luo Xueming(テンプル大学教授)
蓮本 恭輔(PayPal Pte. Ltd. マーケティング部シニアマネージャー)
上田 雅夫(横浜市立大学データサイエンス学部)