グローバル化の進展とともに、戦争や民族紛争、テロリズムといった直接的暴力の不安はかえって高まっている。実際2019年末の世界の難民は7,950万人と過去最高を記録したが、その数は増え続けている。さらに大国によるパワーポリティクスの台頭、世界的なポピュリズムの拡大、移民排斥や外国人労働者問題、グローバル経済によって引き起こされる貧困と格差、安全保障の課題ともなった気候変動問題、いまだ公正には程遠いジェンダー・ギャップ、そして新型感染症のパンデミックなど、従来から存在するグローバル・イシューがまた新たな様相を示している。本研究所はこのような「古くて新しい」脅威を「構造的暴力」、「文化的暴力」といった平和研究が培ってきた知見を用いながら学際的に検討してゆくとともに、社会的に脆弱な立場に立たされた人々や当事者の視点から問題の解決を考える。これにより平和研究の発展に寄与するとともに、国際社会の積極的平和の実現のために、市民にも開かれた研究所を目指す。さらに、グローバルな文脈のみならず、日本の平和憲法及び被爆体験を踏まえた上で、早稲田大学から平和のメッセージを世界に発信することも目的とする。