Comprehensive Research Organization早稲田大学 総合研究機構

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移民・エスニック文化研究所【第Ⅱ期】
WASEDA Institute for Migration and Ethnic Cultural Studies

【終了】2013~2018年度
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研究テーマ

北南米、ハワイ、日本における移民調査及び移民資料の収集・整理・活用

分野:文化

研究概要

本研究所は、2008年10月に開設してから5年間、主に次のような調査研究を実施してきた。

(1)「ブラジル日本人移民史料館所蔵資料整理・保存・活用プロジェクト」の日本におけるカウンターパートとして参画。具体的には、放送文化基金の助成を受けて、戦前からの1,000点以上におよぶレコードや130点以上の16ミリの映像記録の中から特に重要と判断されたレコード42点、フィルム10点を厳選して修復しデジタル化した。

(2)国際交流基金知的交流会議助成「子どもの移動と教育 -戦前・戦中期ブラジル日系移民子弟教育と在日ブラジル人児童・生徒の状況比較研究」(2010年4月〜2011年3月)の共同研究を通して戦前・戦後の日系人教育を比較研究した。研究成果は、国際会議「トランスナショナルな「日系人」の教育・言語・文化―過去から未来に向かって」の開催(2011年3月5日、6日)および明石書店から刊行した同タイトルの論文集で明らかにした。

(3)最近は、北米のUCLA Research Library JARP (Japanese American Research Project) コレクション所蔵のオーラルヒストリー・オープンリールテープ326本のデジタル・データ保存、目録作成に関するUCLA Asian American Studies Centerとの共同プロジェクトが中心的な活動になっている。JARPコレクションのオーラルヒストリーの聞きとり調査は、1960年代を中心に実施され、当時存命だった一世の貴重な生の声が残されている。この種の日系移民オーラルヒストリーとしては最大規模である。
しかし、簡易なFinding Aidはあるものの、インタビュー内容がわかる目録作成には至っておらず、デジタル化も現在に至るまで実施されてこなかった。本研究所では、音響学の専門家を研究員として迎え、聞きとり困難とされているテープの原因究明とデジタル化保存及び目録作成に本格的に取り組んでいる。2015年5月現在、物理的損傷のあるテープは極めて限られており、利用者用の複製版テープのトラック選択に問題があることが判明している。「聞きとり不可能」とされていたテープの原因が究明されたことにより、高速デジタル化する中で、大半の”inaudible”テープは”audible”「聞きとり可能」な状態に調整されつつある。

以上の研究成果を受けて、2013年10月〜2017年9月の4年間、研究所を継続させ、在外日系移民資料の中でも未整理な状況のままになっている「埋もれた声」(“Buried Voice”)としてのオーラルヒストリー・データのデジタル化および目録作成を引き続き行う。そのことによって、日系移民研究史料の基盤整備に尽くすとともに、北南米・ハワイ、日本の地域横断的な比較移民研究に寄与していきたい。また、これらの研究成果を早稲田大学人間科学研究科プロジェクト科目「在外日系移民資料の活用」(2013年度〜2015年度)において逐次還元し、次世代の研究者に継承していく。

研究報告

【2017年度】
 2017年度はHawaii Japanese Center(以下、HJC)所蔵レコードおよびUCLA Japanese American Research Project (以下、JARP )Oral History Tapes関連のデジタル化作業、日英語目録作成、講義、国際会議を下記のとおり実施した。

■HJCにおいて山崎芳男理工学術院名誉教授(元研究員)、東研究員、森本が5月8日〜13日にかけて、HJC所蔵レコードのうち368本のデジタル化作業、ラベル撮影、目録作成を実施した。また、5月13日にHJCにおいて森本が“Preservation and Utilization of Japanese Migrant Archives @Hilo, Los Angeles, and Sao Paulo”とのタイトルで現地日系人およびハワイ大学関係者を招き、報告会を行った。また、山崎名誉教授がデジタル化したレコードのデモンストレーション(通訳:東研究員)を実施した。

■JICA横浜国際センターにおいて、8月7日〜8日の2日間、早稲田大学人間科学研究科プロジェクト科目「在外日本人・日系人関連資料の活用―北米・ハワイを中心に」を実施した。西村研究員、菊池研究員、小嶋研究員、山崎名誉教授、森本が在外日本人・日系人関連文献資料のデジタル化、音声資料の電子化と情報付与、海外移住資料館における移民学習の実践、HJC、JARPデジタル化のデモンストレーション、進捗状況などについて講義した。

■UCLA Asian American Studies CenterからProfessor David Yoo (Vice-Provost, UCLA Institute of American Cultures)、Marjorie Lee (Librarian/Archives Coordinator)、Tam Nguyen (IT and Digital Initiatives/Projects Coordinator)、Haruko Kawasaki (Community Historian/Japanese Translator)の4名、ハワイからHiromi Beck (Assistant Archivist)が早稲田大学に来校し、本研究所からは7名が参加して 10月9日〜11日の3日間、早稲田キャンパスおよび西早稲田キャンパスにおいて国際会議“JARP Oral History Tapes Project, Phase 2: Transcription, Indexing”を実施した。会議では、デジタルデータの確認、日英語目録のフォーマット、今後の協力体制、スケジュール、目録の一般公開、広報などについて検討した。

【2016年度】
 前年度に引き続き、UCLA JARP Oral History Tapes関連の作業とHawaii Japanese Center(以下、HJC)所蔵資料の整理・デジタル化を中心に行った。前者については、2016年3月にデジタル化がほぼ終了したのを受けて、日英語のバイリンガル目録の作成を行い、およそ60件のインタビュー目録作成を終えた。後者については、2015年度末に行った約3000冊の和書の整理の継続作業として和書資料のデジタル化およびハワイ関連のレコードのデジタル化作業を下記の日程で実施した。
■2016年5月:HJCでセンター担当者と森本が、西村昭治研究員(人間科学学術院教授)とスカイプ会議を行い、デジタル化されたデータのオンライン公開の可能性について協議した。また、センター所蔵の資料整理と一部デジタル化作業を行った。
■2016年8月~9月:ハワイで出版された文書資料を仕分けし、一部スキャニングを行った。また、山崎芳男理工学術院名誉教授(本研究所元研究員)、東聖子研究員を中心にHJC所蔵6000枚以上のレコードの中から、約100枚のハワイ関連レコードのデジタル化を行った。
■2017年2月~3月:前回に引き続きハワイ関連レコードをデジタル化した。山崎名誉教授、西村昭治研究員、東聖子研究員、森本が約100枚を処理した。ハワイアンミュージックのハワイレコード会社は、49th State Record, Bell Record, Royal Record, Sakura Record, Mahalo Recordなどであり、日本語歌謡曲を収録したレコード会社は、Nippon Victor (JVC), Nippon Columbia, King, Teichiku, Nippon Polydor, Taihei, Nihonなど、また、ロサンゼルスやシカゴで制作されたものもあり、Tokyo (Pacific Bureau of new musical study), Miyagi LA, Shochiku Record, Fontana Record Division of Mercury Record (Chicago)などであることが判明した。

【2015年度】
 本年度も2014年度に引き続き、UCLA George and Sakaye Aratani CAREおよび早稲田大学人総研の助成金を得てUCLA JARPコレクション・オーラルヒストリーテープ・デジタル化の国際共同研究を中心に展開した。5月17日〜22日にかけて山崎、及川、東研究員を中心に、UCLAにおいて68本のオープンリールテープ高速度デジタル化を実施し、全327本の現地でのデジタル化作業は完了した。また、KORG社製オーディオ・フォーマット変換ソフトAudio Gateを用いてwavファイルに変換し、波形編集ソフトAudacity v.2.1.0で信号処理をした。これらの作業は帰国後に理工学術院および人間科学学術院において行われた。処理済みのデータを収めたハードディスクは、外部委託で作成した日英語バイリンガル目録20項目のサンプルと共に、2016年3月下旬に森本がUCLAに赴き提出した。あわせて今後の日英語目録作成のプロジェクト計画について協議した。
 また、2016年2月29日〜3月2日の3日間、Hawaii Japanese Centerにおいて研究代表者と東研究員、大学院生2名が、現地スタッフと共に合計20時間かけて約3000冊の和書を項目別に分類する作業を実施した。この作業に関しては、早稲田大学特定課題研究助成(2015A-068)の支援も受けたことを記し謝意を表したい。2016年度からは、3年間にわたって同センターの書籍、物品、レコードなどの整理・活用・公開プロジェクトが計画されている。

【2014年度】
UCLA JARPコレクション・オーラルヒストリーテープのデジタル化および目録作成共同研究は、昨年度からUCLA Asian American Studies Center George and Sakaye Aratani CARE (Community Advancement Research Endowment)および早稲田大学人間総合研究センタープロジェクト「在外日系移民資料の活用」の助成金をもとに本格的に始動した。2年目を迎えた2014年度には、UCLA Asian American Studies Center(AASC)の研究者とスタッフの協力のもと大きく前進した。326本のテープのうち、8月にUCLA AASCにおいて50本、さらに11月にはUCLA Sakaguchi Fundによる資金援助も加わって108本のデジタル化を現地で行った。これらの作業を経て、デジタル化完了まで残り63本となった。翌年度にかけて申請したAratani CARE、人総研による助成金も継続して受けられることが決まり、来年度前半でデジタル・フォーマッティング作業を終え、目録作成にむけて日米チームで取りかかる予定である。
また、前年度から始まった人間科学研究科プロジェクト科目「在外日系移民資料の活用」も8月初旬にJICA横浜国際センターにおいて実施した。夏季集中科目では、同センター内に設置されている海外移住資料館の見学を行うとともに、映像資料「ブラジルへ渡った和歌山県人」の鑑賞、ブラジル移民船や沖縄ハワイ移民、日本人移民関連資料の文献調査法、移民ネットワークを活用したMOOCsの普及、在外日系移民資料の保存・活用・整理などの講義を実施した。

【2013年度】
本研究所は、2008年10月設立から5年間の期間満了を経て、2013年10月から2017年9月までの継続設置が決まった。継続申請にあたり、北南米・ハワイの在外日系移民資料の整理・保存・活用を行うと同時に、次世代に研究成果を伝える教育プログラムにも関わることを目標としてあげた。その一環として、人間科学研究科において、2013年度から新たにプロジェクト科目「在外日系移民資料の活用」を立ち上げ、夏季集中科目として8月5日、6日の二日間にわたってJICA横浜国際センターにおいて実施した。その目的は、人総研(人間総合研究センター)、JICA横浜海外移住資料館、和歌山市民図書館との連携を通じて、国内外にある日本人移民関連の文献・音声・映像資料を次世代に残すための具体的方策、移民研究や教育現場における活用法について学ぶことにある。
また、前年度から引き続きUCLA JARPコレクション・オーラルヒストリーテープのデジタル保存、目録作成作業を実施した。具体的には3月に28本のテープをデジタル化し、11月に新たに55本のデジタル・フォーマッティングを行った。さらに、解説付き目録を作成した。2014年度以降もデジタル化、目録作成作業を継続していく予定である。尚、このプロジェクトは、UCLA Asian American Studies CenterのGeorge and Sakaye Aratani CARE (Community Advancement Research Endowment)と早稲田大学人間総合研究センターの助成金を得て遂行されたことに謝意を表したい。

所長

森本 豊富[もりもと とよとみ](人間科学学術院教授)

メンバー

【研究所員】
臼井 恒夫(人間科学学術院教授)
及川 靖広(理工学術院教授)
尾澤 重知(人間科学学術院准教授)
菊池 英明(人間科学学術院教授)
西村 昭治(人間科学学術院教授)
森本 豊富(人間科学学術院教授)

【招聘研究員】
小嶋 茂(海外日系人協会職員)
中谷 智樹(和歌山市民図書館職員)
中村 茂生(立教大学ラテンアメリカ研究所研究員)
根川 幸男(国際日本文化研究センター 機関研究員)
松田 俊介(城西大学非常勤講師)
東 聖子(近畿大学国際学部特任講師)

連絡先

早稲田大学人間科学学術院 
森本研究室
〒359-1192 所沢市三ヶ島2-579-15
Tel/Fax:04-2947-6789
E-mail : [email protected]

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