Comprehensive Research Organization早稲田大学 総合研究機構

その他

多民族・多世代社会研究所【第Ⅲ期】
Institute for Multi-ethnic and Multi-generational Societies

【終了】2016~2018年度
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研究テーマ

滞日ムスリムの生活実態と生活・宗教に関する意識の総合的研究

分野:地域社会

研究概要

多民族・多世代社会研究所が、2011年度から5年間継続して実施してきた滞日ムスリムに関する研究は、総合的な報告の刊行も行い、全国モスク代表者会議も継続して、一定の成果を上げてきた。依然として滞日ムスリムは、ムスリム・コミュニティの継承、次世代育成、地域社会との関係構築の課題群という喫緊の課題をかかえており、これらは新規プロジェクトの研究課題でもある。また、従来からのモスク代表者会議などの活動を通じて、本プロジェクトの存在も広く知られるようになり、メディアへの情報提供という役割を継続することも求められている。
新規プロジェクトでは、2005年に外国人ムスリムを対象として、質問紙による意識調査を実施して、彼らの生活実態や意識を把握したが、その後の10年間の滞日ムスリム・コミュニティの内実は、滞日ムスリム人口の倍増や、モスク建設数の倍増という動向に象徴されるように、大きく変動している。滞日ムスリムの生活実態や意識の変化も予想されることから、近年増加している日本人改宗者も含め、全国の滞日ムスリムを対象とする生活実態と生活・宗教意識に関する総合的な調査研究を3年間の研究課題とする。

研究報告

【2018年度】
2018年6月現在、外国人ムスリムが約16万に達し、日本人ムスリム約4万を合わせて、約20万のムスリムが日本に定住している(推計)。本研究所では、滞日ムスリム人口や生活実態・意識、モスク(イスラム礼拝所)の調査研究を実施してきた。2018年度は、(1)モスク所在の地方自治体に関する追加のインタビュー調査、(2)帰化したムスリムの実態・意識に関する調査の実施、(3)モスクの現況調査を主として実施し、関連してマスジド(モスク)代表者会議や講演なども行った。(1)では、富士市、浜松市、福岡市、名古屋市、新居浜市、新潟市、沖縄県西原町に対する追加のインタビュー調査を実施した。 (2)については、帰化ムスリムを対象とするアンケート調査を2018年11月に実施し、分析中である。 (3)については、全国のモスク情報も収集して、モスクリストを更新した。2018年末に、モスクの数は105を超えており、継続して増加している(2014年末は、80)。また第11回全国モスク代表者会議を2019年2月10日に開催し、「平成の時代を生きたムスリム」として、(1)これまでの遺産とその継承、(2)若者世代によるムスリム・コミュニティの将来構想について、議論した。今後も上記の調査研究を、滞日ムスリム調査プロジェクトとして継続予定である。

【2017年度】
2017年度は、新たに企画した、モスク(イスラム礼拝所)が所在する地方自治体が実施している多文化共生政策や関連する外国人政策およびモスクの認知度やイスラム教徒への行政的対応に関する調査と、またこれとは別にイスラム復興活動を目的とするイスラム運動団体のインタビュー調査などを行った。
 前者については、昨年度の愛知県安城市役所での調査、宮崎市の多文化共生政策に関する調査なども踏まえて、調査項目を決定し、全国のモスクが所在する95の地方自治体を対象として、質問紙調査を2017年11月に実施した。有効回答数は、73となり、現在、第1次報告書を作成中である。後者については、連携して研究を進めている研究者が東京都や群馬県のモスク等で調査を継続的に実施するとともに、運動実践の現場にも足を運んで調査を実施中である。この他、滞日ムスリム人口の推計やモスクの新設などの情報収集も行った。
 また2008年度より毎年、全国モスク代表者会議を開催してきたが、2017年度は各地のモスク代表者や日本人ムスリム有識者を招き、一般公開の会議として開催した。タイトルは「日本のムスリム・コミュニティを問い直す」として、2018年2月3日に開催して、(1)日本のイスラームの将来に向けて、(2)若者世代とムスリム・コミュニティの課題について議論した。

【2016年度】
2016年は、ヨーロッパやバングラデシュでの日本人が犠牲となったテロ事件等があり、イスラムおよび滞日ムスリムを巡る状況に関心が集まり、引き続き取材対応や講演依頼に対応した。本研究所では、2015年度までの総合的成果である『日本のモスク:滞日ムスリムの社会的活動』(店田廣文著、山川出版社、2015年3月)などを踏まえて、2005年に実施した「在日ムスリム調査」を更新すべく、新たに滞日ムスリム自身の生活実態や生活意識に関する調査を企画していた。しかし諸般の事情から方針を転換して、モスク自治体が実施している多文化共生政策や関連する国際交流政策に関する調査と、イスラム復興活動を目的とするイスラム団体のインタビュー調査を新たに企画することとした。
前者については、愛知県の新安城モスクを擁する安城市役所での調査、モスクはないものの滞日ムスリムが多い宮崎市の多文化共生政策の調査を実施した。後者については、東京都や群馬県のモスク等で調査を継続的に実施した。前者については、モスクを有する地方自治体すべて(約90の自治体)を対象にアンケート調査を2017年度中に実施予定である。
また2008年度より毎年、全国モスク代表者会議を開催してきた。本年度は日本人ムスリムおよび外国人ムスリムの有識者を招き、新たに鹿児島市、広島市、金沢市、八潮市などからモスク代表者等の参加をえて、「『マスジド代表者会議』有識者懇談会―多文化共生とムスリムコミュニティ」(17年2月11日)を開催して、(1)日本社会における多文化共生、(2)ムスリムコミュニティ内部における多様性と多文化共生について議論した。

【2015年度】
 2015年初めに、ISによる日本人を標的とした事件があり、滞日ムスリムを巡る状況に関心が集まった。本研究所では、滞日ムスリム調査研究の総合的成果である『日本のモスク:滞日ムスリムの社会的活動』(店田廣文著、山川出版社、2015年3月)および、「日本のイスラーム:ムスリム・コミュニティの現状と課題」(店田廣文・岡井宏文著、『宗務時報』119号、2015年3月)を発表したことから、これらに関連して招待講演や原稿依頼をうけ対応した(日本歴史学協会シンポジウム「イスラームをどう教えるか」、雑誌『歴史地理教育』の特集「中東世界と日本」)。
 本年度からは「滞日ムスリムの生活世界の変容とムスリム・コミュニティの持続的発展」を課題として、2005年に実施した在日ムスリム調査を踏まえて、モスク建設計画のある宮崎市・北九州市のムスリム・コミュニティ調査、静岡県の清水イスラム霊園調査、福岡モスクや名古屋モスクでの第2世代をめぐる滞日ムスリムの社会的活動を調査し、新たな滞日ムスリム調査の企画準備を進めている。
 また2008年度より毎年、全国モスク代表者会議を開催してきたが、本年度は日本人ムスリム有識者を招いて、「『マスジド代表者会議』有識者懇談会―文化の翻訳を考える」(16年1月29日)を開催して、(1)次世代ムスリムの教育や人間形成に関する課題、)(2)ハラール認証に関する課題、(3)地域・非ムスリム社会との関係構築や異文化間理解、文化の伝達について議論した。

所長

店田 廣文[たなだ ひろふみ](人間科学学術院教授)

メンバー

【研究所員】
店田 廣文(人間科学学術院教授)
小島 宏(社会科学総合学術院教授)
臼井 恒夫(人間科学学術院教授)
浦野 正樹(文学学術院教授)

連絡先

[email protected]

WEBサイト

http://imemgs.com/

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