Comprehensive Research Organization早稲田大学 総合研究機構

その他

リンアトラス研究所
Phosphorus Atlas Research Institute

【終了】2015~2020年度
過去の研究所活動はこちら

研究テーマ

持続的リン利用を社会実装するための戦略的研究

分野:社会システム

研究概要

資源のない日本にとって、世界一資源効率の高い国づくりに取り組むことは重要である。本プロジェクト研究所では、わが国の自給率がゼロ%であるリン資源に焦点を当て、いかにすれば国内二次資源からのリン回収と再利用システムが社会実装され、自給率100%を達成することができるかについて戦略的研究を行う。
リンは、すべての生命にとり欠くことのできない「いのちの元素」である。リンがなければ、食糧はもとより生命可能資源とも言われるバイオマスも、地球温暖化ガス排出量削減への貢献が期待されるバイオ燃料も生産することができない。リンはまた、成長産業分野として期待される電気自動車の二次電池、太陽光液晶パネルの表面処理剤、高齢化社会で需要が伸びている衣類や家電製品の難燃化剤などの原料として、工業分野でも広く使われている。人間が使うリンのほとんどは、天然資源であるリン鉱石から得られているが、自然界でリン鉱石が生成するには一億年もの長い年月が必要になるから、人間にとってのリン鉱石は事実上有限かつ非生産可能な資源である。わが国にはリン鉱石は産出せず、国内で消費されるリンのほとんどは海外からの輸入に頼っている。しかし、世界のリン需要の高まりの中で、わが国のようなリン消費大国が、海外でリン資源を安定的に確保することは、ますます困難となりつつある。
わが国に食飼料や製鉄原料に随伴してもちこまれるリンの量は、国内の農業生産に必要なリンの量にほぼ匹敵している。したがって、国内に持ち込まれた後に、下水汚泥、畜産廃棄物や製鋼スラグなどに姿を変えた二次資源中のリンを回収・再利用することができれば、国内の農業生産に必要なリンをまかなうことができるはずである。本プロジェクト研究所では、わが国におけるリンの回収再利用システムの社会実装に影響を与える主要な関係者への聞き取り調査をもとに、社会実装を促進または阻害する社会・経済的要因を明らかにして、わが国においてリン自給率100%を達成するために効果的な方策を、設置期間内に提案する。

研究報告

【2019年度】
リンアトラス研究所は、日本におけるリン問題について考えるわが国唯一のシンクタンクとして、いかにすれば国内未利用リン資源からのリン回収と再利用のシステムが社会に実装され、日本がリン「自給」体制を構築することができるかについて戦略的に研究を行ってきた。2019年度は、過去4年間に渡って実施してきた調査研究の成果を取りまとめた。また、11月26日に早稲田大学国際会議場において第4回持続的リン利用シンポジウムを開催し、その成果を報告した。本シンポジウムの参加者は総勢237名であり、農林水産省や環境省などの関係省庁の方々も招待し、基調講演を行っていただいた。さらに、本シンポジウムでは、地球環境、食料生産、持続可能な開発などの最新の話題を取上げてリン問題を俯瞰するとともに、鉄鋼・化学・水処理・肥料などの産業界からリンに関連する様々な話題提供をいただき、日本がリンの「自給」体制を構築するための戦略についてパネルディスカッションを行った。なお、当研究所における活動は、2018年9月に設立した一般社団法人リン循環産業振興機構に引き継がれることになった。

【2017年度】
「持続的リン利用」を考えるわが国唯一の研究機関として、本年度は世界と日本における「リンの実態」について調べるとともに、国内二次リン資源の賦存量および肥料利用の現状と課題について追加調査を行った。本調査の実施に当たっては、一般財団法人環境対策推進財団からの研究助成を受けるとともに、パートナー企業各社のご協力を頂いた。その成果は、神戸国際会議場で開催された国際シンポジウム、東京で開催された日本-デンマークワークショップや大隈記念講堂で開催した第3回持続的リン利用シンポジウムなどで発表した。また、ドイツ・ロストクで実施中のリン学術研究プロジェクトから依頼を受け国際評価委員の役割を果たした。出版については、朝倉書店から「リンの事典」を出版するとともに、Springer Nature社より英文書「Phosphorus Recovery and Recycling」を出版するため、日欧を中心に投稿された約40篇の論文の編集作業を行った。リンバリューチェーンの未来像「P バリューチェーン」については、引続き関係省庁等と協議を行った。この他、本年度もリンアトラス研究所セミナーを18回開催した。

【2016年度】
「持続的リン利用」を考えるわが国唯一の研究機関として、本年度は持続的リン利用の先進的な取組みが続く欧州を中心に海外の動向について調べるとともに、国内二次リン資源の賦存量および肥料利用の現状と課題について調査を行った。本調査の実施に当たっては、一般財団法人環境対策推進財団より研究助成を賜った。リン資源リサイクル推進協議会と協力し、中国雲南省にあるリン鉱山、黄燐およびリン肥料製造会社の視察を行い、中国リン産業の現状について調査した。中国昆明市、ドイツ・ロストク大学および首都大学東京で開催された国際シンポジウムで持続的リン利用に関する講演を行った。朝倉書店から平成29年秋出版予定の「リンの事典」の編集作業を行い、140名もの執筆者に執筆を依頼した。またSpringer Japanより「Recovery and Recycling」に関する英文書籍を出版することが決まり、日欧を中心に約40篇の論文を掲載するための作業を行った。昨年度提案したリンバリューチェーンの未来像「P バリューチェーン」について、引続き関係省庁等と協議を行った。また、リンアトラス研究所セミナーを19回にわたり開催した。

【2015年度】
「持続的リン利用」を考えるわが国唯一の研究機関として、本年度に①社会的認知度の向上、②国の政策課題化、③技術イノベーションや④学際的研究体制の組織化などの課題に関する研究を開始した。一般財団法人環境対策推進財団より研究助成を賜り「廃棄物や副産物に含まれるリン資源の活用技術開発の現状、課題および解決の方策に関する調査」を実施した。リン資源リサイクル推進協議会と協力し、中国燐及び複合肥料工業協会来日視察団と意見交換を行うとともに、中国のリン鉱山、黄燐およびリン肥料製造会社の視察を行い、中国リン産業の現状について調査した。Global Environmental Research誌のspecial issueとして「アジアにおける持続的リン利用」を刊行した。朝倉書店からわが国におけるリン研究の全体像を俯瞰できる「リンの事典」を出版することが決まり編集を開始した。持続的リン利用実現への全体像と戦略を明らかにするため冊子「Pイノベーション」を発行するとともに、リンバリューチェーンの未来像「P バリューチェーン」を提案し関係省庁等と協議を行った。第2回持続的リン利用シンポジウムを早稲田大学国際会議場井深大記念ホールにおいて開催した。研究所セミナーを21回にわたり開催した。

所長

常田 聡[つねだ さとし](理工学術院教授)

メンバー

【研究所員】
常田 聡(先進理工学部教授)
小堀 深(先進理工学部講師(専任))
榊原 豊(創造理工学部教授)
竹山 春子(先進理工学部教授)
平沢 泉(先進理工学部教授)

【研究員】
大竹 久夫(客員上級研究員(研究院客員教授))

【招聘研究員】
河窪 義男 (バイオガス事業推進協議会 監事)
広瀬 祐 (T&Pテクニカ代表)
佐藤 和明 (八千代エンジニヤリング株式会社 国際事業本部 顧問)
橋本 光史 (公益財団法人 日本肥糧検定協会理事
米森 重明 (米森技術士事務所代表、産業技術総合研究所客員研究員、東京工芸大学非常勤講師)

連絡先

[email protected]

WEBサイト

http://www.waseda.jp/prj-p-atlas/

Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/inst/cro/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる