Comprehensive Research Organization早稲田大学 総合研究機構

その他

文化社会研究所【活動終了】
Institute of Cultural and Social Studies

【終了】2008~2012年度
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研究テーマ

現代における文化と社会の状況についての分析

研究概要

文化社会研究所は、社会学的な知見を中心とした総合的な文化研究・社会研究を目的としている。
 「文化」の領域をめぐる社会学的研究は、言語や記号によって作られる一連の「文化」の生起とその歴史的変容として社会の解読を試みる解釈学的な方法で、1980年代以降の日本の社会学界を席捲してきた。このパースペクティブは、それまで社会学が客観的なデータとして扱っていた社会的事実が、「言語」なり「言説」なりによって構築された「虚構」にすぎないことを暴露する脱構築的実践であり、「虚構」としての現実と虚構的に戯れるポストモダン的文化のパフォーマティヴな遂行であった。しかしながら、この潮流は、1990年代後半以降、自らの社会的言説を何らかの政治的効果や社会的意義を持つ現実的なものへと鍛え上げようとする真面目な欲望を持ったものに転化してきている。本研究所は、ポストモダン的な文化現象を分析していくことを第一の目的としながら、こうした新たな潮流の中で、さらなる文化研究・社会研究の展開と新たな実践を目指して研究を進める。

研究報告

2011年度
研究報告 本年度も定例研究会を継続して開催。歴史的な文化研究や外部ゲストを交えた最新の研究動向をもとに、現代社会における文化の状況把握や分析を実施した。また2008?2010年度の本研究所の活動をまとめた報告書を作成。研究員間や外部ゲストとの研究成果の共有とともに、外部への研究成果の公表を実施した。なお、定例研究会における報告者および報告内容は次の通りである。
4月:アンナ・シピローワ「ローカルなトラウマからナショナルなトラウマへ 変更するヒロシマの物語」
望月由紀(千葉大学)「文化装置としてのX線イメージ」
7月:野上元(筑波大学)「<核>のない教室−軍事的啓蒙としての「機動戦士 ガンダム」」
穐山新「近代中国に おける社会的シティズンシップの形成―「社会救済」における地域自治と国民国家形成」
9月:佐々木てる「グローバリゼーションと複数国籍制度〜現代日本における国籍制度を通じてネーションの再編を問う〜」
向後恵里子「日露戦争における戦場へのまなざしー観戦船満洲丸をめぐってー」
11月:小倉敏彦「草食系男子」再考 なにが男の性欲を抑圧しているのか
毛里裕一(東京大学)「転態する「漫談」――戦間期のメディア横断的展開にみる「非真正」な言論の系譜学」
3月:土井隆義(筑波大学)「今日の若者はなぜ怒らないのか?−生活満足度の高さが意味するもの−」
菊池哲彦「都市の文化スポットとしての映画館と古書店:「無印都市」論のためのノート」
2010年度
研究報告 本年度の当研究所における最大の活動成果は、研究員の多くが参加し、研究所所長である長谷が編者として作成した『文化社会学入門』(井上俊、長谷正人編 ミネルヴァ書房)の刊行である。
 本書は研究所が実施してきた3年間の研究活動の成果を反映し、現代社会の文化現象を消費文化/土着文化の両側面から捉える視点を提供。そしてこの二つの文化が、互いに対抗したり矛盾しているように見えながら、実は私達の日々の生活や活動に重層的に影響を与えている状況にあることを論じた。また、多様な文化現象をコンパクトに語ることで、社会や文化研究の初学者にも読みやすく、また彼らに興味をもってもらう入門書としての役割も持たせた。
 また定例研究会も例年通り開催。外部の研究者も招きながら、年間を通して定期的な研究活動を実施した。報告者および報告内容は次の通りである。
4月:田中大介「移動とモダニティ――社会科学の移動論的転回の現在」
   牧野智和(早稲田大学)「自己啓発書ベストセラーの戦後史」
7月:近森高明「記憶に関する海外文献紹介」
   加藤裕治「マスメディアにおける「日米同盟」の記憶」
9月:菊池哲彦「写真に関する海外文献紹介」
   小泉恭子(大妻女子大学)「彼我の断層ーアテレコ文化論序説」
12月:石倉義博「住宅双六という〈夢〉(仮)」
    高美?「日本映画にみる朝鮮人慰安婦と在日女性-日本春歌考を中心に」
2月:長谷正人「後衛の思想──1970年代文化革命の可能性」
   菊池哲彦「肖像と流通、あるいは流通する肖像」
2009年度
研究報告前年と同様に研究報告会を定期的に開催した。
5月には佐々木客員研究員より「移動と監理―国内旅券からパスポートへ」、また木村絵里子氏(日本女子大学)より「『美しい身体』獲得のストーリー‐美容外科手術経験者の事例から‐」の報告を頂いた。7月は穐山客員研究員より「アメリカ体験と中国の近代―梁啓超『新大陸游記』と中国における自由の条件」、角田客員研究員より「写真と記憶文化産業の現代的諸相―某保険会社テレビCMを事例にして」、10月は周藤研究所員より「忘却の対象としての常陸―映画「フラガール」から考えたこと」、加藤客員研究員より「“報道”と“活劇”の狭間にあるもの〜日露戦争新聞報道分析からメディアを再考する」、12月は小倉客員研究員より「タイトル:ポップ広告のある風景−今どきの売り手と買い手の関係性について」、シピローワ客員研究員より「戦後日本のナショナル・アイデンティティの要素としての「平和主義」」の各報告が行われた。そして年度の最後となった2月には、近森客員研究員より「「芸人」転身物語――《お笑い》と《文化人》のあいだ」、菊池客員研究員より「文献紹介:Tom Gunning, “Doing for the Eye What the Photograph Does for the Ear” (2001)」の報告が実施された。
また6月27日には、外部ゲストを招いてのシンポジウム「ヤンキー文化を考えることの可能性」を開催した。
シンポジウムのテーマである「ヤンキー文化」は、これまでの社会学研究や文化研究において研究対象の領域としてほぼ取り上げられてこなかったにもかかわらず、日本社会を広く覆っている文化領域であるといえる。
こうした認識のもと、今回のシンポジウムでは現代の日本社会におけるヤンキー文化の現状を、実際にフィールドワーク活動を行っている3名の研究者の方々からご報告頂いた。また、その後の討論ではこうした文化領域が学術領域で積極的に取り上げられてこなかった背景−時代性や研究者・方法論のまなざしの課題など−が議論された。そして最終的に、ヤンキー文化を語る視座や方法の中に、現在の日本の文化を語り、新たな文化の可能性を開くものがあるという結論を得た。
なおシンポジウムの当日のプログラムは下記の通りである。参加人数は研究所の内外あわせおよそ80名程度となり、非常に盛況なものとなった。
[ヤンキー文化を考えることの可能性 シンポジウムプログラム]
・報告
1:南後由和(東京大学)/飯田豊(福山大学)「ヤンキー文化の弛緩:落書き/グラフィティを通して」
2:大山昌彦(東京工科大学)「暴走族・社会人・ロックンローラー:茨城県中央部におけるロックンロールとその変容」
・コメント
難波功士(関西学院大学)
加藤裕治(文化社会研究所 客員研究員)
・司会
長谷正人(早稲田大学)
2008年度
研究報告【2008年度研究報告】
 発足初年度である2008年度は、文化社会学研究会を中心に研究活動を行った。研究会は全6回を開催し、研究員を中心とした現代文化やメディア文化の文献報告や研究活動の報告、およびゲスト報告者を招いての研究報告等を実施した。
 年度の前半では、文化社会学研究会において、各回2名の研究報告が行われた。4月には菊池客員研究員よりPC文化に関わる海外文献の報告、および小林杏教育・総合科学学術院助手より「死を見つめる――記念写真としての写真行為」のタイトルによる報告がなされた。5月には小倉、加藤の両客員研究員により、青少年文化とテレビ文化に関わる最新文献の書評会を開催。また7月と10月は、長谷所長より「写真論としての『父親たちの星条旗』」、小村客員研究員から「視覚テクノロジーと身体――超音波診断と妊婦の身体感覚の変容」、また田中客員研究員から「情報都市における事件の位相――秋葉原無差別殺傷事件に関するノート」のタイトルにより研究報告が行われた。
 また年度の後半は、外部ゲスト招聘により、研究活動の交流を深めることを研究所のテーマとして設定し研究会活動にあたった。明治学院大学の長谷川一准教授より「「書物」と「カード」のあいだ──いまなぜ〈編集〉か」、筑波大学の野上元准教授より「パーソナル・コンピュータの文化社会史の試み」、および日本学術振興会の加島卓特別研究員より「表象批判の困難と政治過程の説明責任──デザインの語れなさと『せんとくん』の文化社会学」のタイトルからなるご報告をそれぞれ頂き、各会において活発な討論が展開された。
 2008年度は上記のように研究会活動を中心としながら活動を実施することで、当研究所の目的でもある、ポストモダン以降の文化状況の把握、およびその文化状況からみることのできる現代社会の諸相や諸問題についての認識と理解を深めることとなった。
 これらの成果を踏まえ、研究所による現代文化に関わるシンポジウムを次年度に開催することを確認し、2008年の活動を終了した。

所長

長谷 正人[はせ まさと](文学学術院教授)

メンバー

研究所員
長谷 正人(文学学術院教授)
トンプソン リー A.(スポーツ科学学術院教授)
石倉 義博(理工学術院准教授)
周藤 真也(社会科学総合学術院准教授)
向後 恵里子(文学学術院助教)

招聘研究員
穐山 新(法政大学社会学部非常勤講師)
大貫 恵佳(駒沢女子大学非常勤講師)
小倉 敏彦(立教大学社会学部非常勤講師)
小村 由香((社)日本看護協会政策企画部常勤職員)
加藤 裕治(静岡文化芸術大学 文化政策学部文化政策学科准教授)
河野 憲一(東洋大学社会学部非常勤講師、神奈川大学非常勤講師)
菊池 哲彦(尚絅学院大学総合人間科学部准教授)
佐々木 てる(青森大学社会学部社会学科准教授)
?井 昌史(桃山学院大学社会学部社会学科准教授)
田中 大介(日本女子大学人間社会学部現代社会学科講師)
近森 高明(慶應義塾大学文学部社会学専攻准教授)
シピローワ アンナ(バルテック・トレード株式会社)
角田 隆一(日本女子大学人間社会学部現代社会学科助教)
高 美?(貞玉)(元シェルフィールド大学講師)
嶋田 由紀

連絡先

文学学術院 長谷正人研究室

E-mail:[email protected]

WEBサイト

http://www.waseda.jp/prj-icss/

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