文化遺産・芸術工学研究所【第Ⅰ期】【活動終了】
Institute of Technical Research for Cultural Heritages and Fine Arts
【終了】2007~2012年度
研究テーマ
絵画、彫刻工芸品及び歴史的建造物の修復、保存並びに具体的創造表現活動への応用と人材育成を含む専門教育システムの構築
研究概要
当研究所は2007年3月で一応事業は終了したが、引き続き美術工芸品の材料調査を主な目的に再発足した。
美術工芸品の修復、展覧会企画などは、民間零細業が主に担当している。一般に美術品の修復時、展覧会作品状態調査時などで、作品を構成する材料を知り、対処する事が理想であるが、公的機関のみでは、これらの要望に対応できない。
民間零細業や、美術材料に興味を持つ現在の作家が、問題を相談できる機関が大学にあれば、これらの要望に対応できる。美術工芸品の材料調査には、作品所有の個別性、試料採取の難点など多くの制約はあるが、対処できる内容から資料を収集して結果を蓄積して、比較する事が大切である。過去約5年間、当研究所で材料調査を行い、それぞれ報告を出して来たが、それらの結果も活用して、主に民間、個人等からの調査依頼を元に、材料の特徴や共通点を探る。
研究報告
※文化遺産・芸術工学研究所
2002年07月01日〜2007年03月31日までの活動に関してはこちら
http://www.kikou.waseda.ac.jp/WSD322_open.php?KenkyujoId=31&kbn=0&KikoId=01
2011年度
研究報告・2006年度より継続的に行なわれてきたアンコール遺跡バイヨン南経蔵の修復工事が竣工した。これらの一連の修復工事に関して「バイヨン寺院南経蔵 修復工事報告書I 、II」としてまとめた。(担当:中川)
・アンコール・ワット十字回廊の彩色材料に関して、X線マイクロアナライザならびに微小部X線回折法による分析を行った。その結果はArchaeometryに掲載済みである。また、バイヨン内回廊のレリーフの保存を目的に含水率調査を2008年度より実施し、その結果がJournal of Archaeological Scienceに掲載された。(担当:内田)
・油彩画4作品について材料検査依頼があり報告書を提出した。(担当:宮田)
・2011年3月の大震災後、主要被災地に入り、主に建物等の損害状況を確認し、都市の災害対応の検討を行った。(担当:藪野、高橋)
2010年度
研究報告 「新薬師寺蔵・地蔵菩薩立像「夜泣き地蔵」修復・彩色調査研究および3D計測」
文化財保護・芸術研究助成財団の助成事業として実施した。この研究事業では所蔵先の理解もあり、1mm四方程度の微小な試料を採取して彩色調査を行った。制作、修復作業担当と適宜協力して研究を行うことができたため、全体として得る点が多く、その成果は以下にまとめられた。
○[新薬師寺蔵 地蔵菩薩立像(夜泣き地蔵)修復報告および改変時彩色の光学的調査と修復報告」。東京芸術大学美術学部紀要 47号 p.1−p.26 2010年
この他、修復対象となったイコンについて材料検査を行い、以下にまとめられた。
○エパネチニコフ工房作「機密の晩餐」イコン修復報告。東京芸術大学美術学部紀要 47号 p.93-p.111 2010年
担当:宮田順一
「アンコール遺跡バイヨン寺院のレリーフ劣化要因の検討」
バイヨン内回廊のレリーフの劣化原因を明らかにする目的で表面吸水試験および年間を通じた含水率測定を行った。
表面吸水量に関しては、劣化を受けている場所では塩類により石材の孔隙が充填され、表面吸水量が低下していることを明らかにした。
含水率測定からは、背後に基壇が存在しない場所では石材の含水率が降水量に比例して変化していることが明らかになった。それに対し、背後に基壇が存在する場所では含水率は降水量に関係なく、年間を通してほぼ一定に保たれる傾向が確認され、基壇から供給される水に含有される塩類の析出が石材の劣化をもたらしていることが明らかになった。
○内田悦生著 「石か語るアンコール遺跡」、早稲田大学出版部、2011年3月出版
担当:内田悦生
所長
内田 悦生[うちだ えつお](理工学術院教授)
メンバー
研究所員
内田 悦生(理工学術院教授)
藪野 健(理工学術院教授)
逢坂 哲彌(理工学術院教授)
中川 武(理工学術院教授)
招聘研究員
牧村 健一郎(朝日新聞社編集局遊軍記者)
宮田 順一(?修復研究所21研究員、理工学研究所客員研究員)
加藤 幸男(元 早稲田大学総長室調査役部長)
高橋 信之(元早稲田大学理工学術院客員教授(専任扱い))
木本 文平(碧南市藤井達吉現代美術館長)