公共政策研究所【第Ⅱ期】
Institute of Public Policy
【終了】2010~2015年度
研究テーマ
公共政策の理論的・実践的研究
分野:社会システム
研究概要
(1)インド経済・金融研究
世界経済の中心は中国・インドを筆頭とするアジアに明らかにシフトし、インドが21世紀中葉には米中に並ぶ経済大国になることが見込まれる中で、しかしながら、日本とインドの経済関係は日中・日米に比べて依然として希薄である。最近のリーマン・ショック後の経済回復に関しても、中国とインドは10%前後の成長率に戻ってきているのに対して、日本経済は低成長のままである。他方、日本と中国・韓国・アセアンを結ぶ東アジア経済圏が構築され、日本と取り巻く国際経済環境が大きく変化している中で、インドが東アジア経済圏に接近を始めている。特に、日本以外のアジア諸国との関係強化が進んでいる。今後の日本経済を考える上で、インドとの経済関係を強化していくことは必須の要件である。以上が、インド経済研究の必要性とその基底にある問題意識である。
そこで、今後の研究活動として、以下を展開したい。
?これまで基本的に毎週発行しているIIES Weekly Report on Indiaを、今後も発行する。インド経済の現状を的確にとらえるために、週単位の動きでインド政府・中央銀行の政策をフォローする。合わせて、民間の動きを観察し、インド経済のダイナミクスを分析する。
?そのためにも、インド経済の現場を経験し、いわば土地勘のある、インド人専任研究員を継続して受け入れたい。日本人だけでは限界のあるインドのビジネス文化などの要素も考慮しつつ、分析を進めたい。
?インド経済の現状と見通しについて、部会内外の研究者の協力を得て、シンポジウムやセミナーを開催し、広く社会に知見を還元していく。
(2)地域主権研究
地方分権改革以降、地方の停滞が指摘されている。地方分権推進のためには、むしろ地域主権という考え方に依拠しつつ、「地方分権は市民にとってどんなプラス効果が実現される(た)のか」という観点を中心課題に据えて、既存のデータや新たな調査により事例を収集・分析して、研究成果の公表と政策提言を試みる。特に、
?地域主権の土台となる自発的な財政の健全化に向けて、その必要性や進め方を自治体関係者間で共有できるフレームワークに関して研究し、その成果を広める。
?あるべき地域主催の姿を先頭に立ってデザインし、住民に提示する地方議員や公務員など人材の育成について、その方策を研究開発した上で研修を具体化する。
という二つの課題を設定し、研究を展開する。
(3)食と農研究
農林水産省では、今年度から、「料理人」を対象とした新たな顕彰制度として、農林水産省「食の名匠」(仮称)授与制度の創設を決定した。この制度は、個人の料理人を対象に顕彰するものだが、単に表彰のみが目的ではなく、むしろその背景にある政策の実現を目的とする。いわば、政策実現を目指すための間接的な手段として位置づけられる。主な政策目的とは、国内における農水産物の産地の形成(ブランディング)や生産者の所得向上、新たな食品等の普及や地域の活性化、海外における日本の食文化の普及と日本産の食材等の利用拡大である。
この顕彰制度の枠内で、本研究所は、この政策目的の本質と、それに対するこの制度の貢献及びその意義を考察するとともに、この制度運用の一翼を具体的に担いたい。その際、この顕彰制度の普及拡大により、その社会的受容と関連セクターへの影響を深めることが重要である。そのためには、官民が共同した運用が、重要な意義をもっている。そこで、農水省と民間企業(東京ガス、JTB、(食品産業)、など)と具体的な協力を展開して、制度の運用を担う予定である。
研究報告
【2011年度】
公共経営研究部会
地域主権推進に関する研究を継続している。具体的には、以下二件の調査を行った。
1.地域主権に関する国民の意識調査:2010年度に引き続き、インターネットによる標記調査を5月から6月にかけて実施した。2012年度においても実施し、3カ年の推移の分析・公表を行うことを予定している。
2.市民の政治参加に関する調査:地域主権を支える市民と政治の関わりの基盤のあり方を探るため、2011年度は米国における実態に関する調査を在米の日本人研究者4人に依頼して行った。結果については、2012年度においてとりまとめ・公表を行うことを予定している。
リーダーシップ研究部会
大学院公共経営研究科に対し、以下三科目の講義を提供した。
1.戦後内閣の軌跡:河野洋平特命教授を迎えて、戦後のいくつかの内閣を抽出し、各内閣の政策内容とその成果に関し、学生の報告を基調としながら、特命教授にコメントと解説をお願いした。
2.世界と公共経営A:ドイツ・ベルリンでのスタディーツアーを実施し、Hertie School of Governance、外務省、及びポツダム大学にて、委託講演会を開催したのに加えて、ベルリンとポツダムの歴史視察を行った。
3.世界と公共経営B:韓国・ソウルでのスタディーツアーを実施し、金泳三特命教授、朴振国会議員、金政府知識経済部長らとの懇談、ソウル・ディジタル大学での委託講演、国会議事堂と昌徳宮の歴史視察を行った。
インド経済研究部会
主として、インド経済分析と、日本の食と農の研究を展開した。
1.06年度以降活発に発刊のインド経済状況分析データに関する英文情報誌IIESを11年度には全47号を発行し、研究委託者及び関連研究機関にメイル配布した。加えて、本年度は、財務省財務総合政策研究所(PRI)主催「インド・ワークショップ」への協力及びPRIとインドの研究機関ICRIERとの共同研究会にパネリスト派遣するなど外部研究機関と協働し、インド側研究者と日本におけるインド研究者の意見・情報交換を大きく活性化させ、日本にとっての経済パートナーとしてのインドの位置づけとインドに対する日本の政策スタンスについて意見交換し、将来展望を図った。
2.更に、「食」と「日本の農業」を通じて地方の活性化と日本食文化の振興を図る目的で、農林水産省が主催する顕彰制度「料理マスターズ」の運営にFood Japan Networkと連動する形で協力し、地域活性化 の軸として、生産者竏苧ソ理人竏衷チ費者の架け橋の場としての料理マスターズサポーターズ倶楽部のWeb発信、及び実地調査・分析の実施とそれに基づく情報提供を行った。
所長
縣 公一郎[あがた こういちろう](政治経済学術院教授)
メンバー
【研究所員】
縣 公一郎(政治経済学術院教授)
片木 淳(政治経済学術院教授)
藤井 浩司(政治経済学術院教授)
塚本 壽雄(政治経済学術院教授)
【招聘研究員】
岡田 邦彦(岡田アソシエイツ代表)
羽田 智恵子(筑紫哲也記念途中塾代表、株式会社ラテラ・インターナショナル顧問)
藤倉 英世(有限会社造景工房代表取締役)
宮? 文彦(千葉大学国際教育センター特任研究員)
渡瀬 裕哉(PRマネジメント株式会社代表取締役)
福田 隆之(新日本有限責任監査法人(Ernst&Young)インフラストラクチャー・アドバイザリーグループグループリーダー)
大原 透(岡三アセットマネジメント株式会社理事運用本部副本部長)
手嶋 龍一(手嶋メディアオフィス代表)
峯村 昌子(産経新聞社サンケイスポーツ編集局文化報道部次長)
小森 智子
安里 繁信(シンバホールディングス株式会社代表取締役会長)
羽貝 正美(東京経済大学現代法学部教授)
山田 圭二郎(京都大学大学院工学研究科特定准教授)
松岡 清志(一般社団法人行政情報システム研究所 調査普及部研究員)
寺迫 剛(一般財団法人行政管理研究センター研究員)