Comprehensive Research Organization早稲田大学 総合研究機構

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交域哲学研究所【第Ⅱ期】【活動終了】
Institute of Interregional Philosophy

【終了】2010~2014年度
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研究テーマ

理論的、歴史的な哲学研究と、いわゆる応用的な思考との区別がなくなる地点に立って、哲学的「交差=越境」と現実の諸問題への提言と様々な可能性を探ってゆくこと

分野:社会システム

研究概要

理論的、歴史的な哲学研究と、いわゆる応用的な思考との区別がなくなる地点に立って、哲学的「交差=越境」と現実の諸問題への提言との様々な可能性を探ってゆくことを目的に設立された交域哲学研究所では、これまでの五年間の経験をもとに、よりいっそうアクチュアルな活動を展開するために、具体的なプロジェクトを設定し、五年間でその達成を目指すこととした。これによって、研究所の活動の透明性が高まり、研究所外部に対してもアピール可能な、より分かりやすく明確な成果を出すことが可能になると思われる。

・社会契約論の批判的再検討
17世紀・18世紀はもちろん、現代においてなお、国家の起源に関する有力な説明図式であり、とりわけ民主主義国家の正統性を根拠づける際には欠くことのできない言説であるといってよい「社会契約論」の諸相をあらためて検討する。この立場には、しばしば国家有機体論をはじめとする自然主義的国家論が対置されることが多いが、本プロジェクトでは、そのような対立図式の妥当性、それらが共有する理論的前提の有無、さらにはそれらの対立を乗り越える理論の構築可能性といった問題を含め、批判的分析を行う。

・所有権の正当性をめぐる研究
「所有」という現象は、そのすぐれて社会的な性格によって、人と物との関係であるにとどまらず、人と人との関係に拡張される。それを権利として正当化する原理もまた所有の社会的性格をどのようにとらえるかによって様々である。本プロジェクトでは、こうしたもろもろの原理の接点を模索し、生産的議論の可能性を開くための準備作業を行う。

・グローバリゼーションに対峙する哲学
国際政治経済学、国際法学、地域研究といった学問分野における最新の成果を踏まえつつ、深化・拡大するグローバリゼーションによって特徴付けられる現代世界をトータルに把握する視座を構築することを目指す。まずは紛争構造の変容、普遍的な人権・安全保障制度の確立などの問題に焦点を当てる。

・ナショナリズムとコスモポリタニズム
特殊性に固執するナショナリズムと普遍性を標榜するコスモポリタニズムとは、従来対立する二つの極としてとらえられてきた。グローバル化が叫ばれる時代に、これら二つの立場はいかなる存在意義を有するのか。両者の歴史的変遷を踏まえながら、21世紀におけるその理論的可能性を追求する。

・サブカルチャー論を読む
漫画、アニメ、ゲーム等を代表とするいわゆるサブカルチャーは、現代日本において、もはやサブとは言えない地位を得ており、それとともに、サブカルチャーを語る言説もここ20年余りの間に着々と蓄積されている。そこで本プロジェクトでは、サブカルチャーをめぐる基本的文献を理論的に考察することで、日本の現代文化論の新たな可能性に目を向けていきたい。

研究報告

【2014年度】
2014年度のシンポジウムは、3月3日に「交域哲学のこれまでとこれから」と題して行われた。佐藤眞理人所長を中心として、招聘研究員の大沢啓徳、河合孝昭、澤里岳史、野内聡、増田靖彦をパネリストとして、前プロジェクトから含めると10年間続いた「交域哲学研究所」ならびに「交域哲学」に関して活発な意見を交わした。「他領域に発見的に関わりつつ視野を広げ、理論的、実践的な諸問題への解答を模索する哲学的営み」を行う場として始まった交域哲学研究所のこれまでの少なからぬ成果を振り返りつつ、それを通じてより明確になった「他領域に関わる」ことの難しさや問題点について掘り下げた議論がなされた。2014年度をもってプロジェクト自体は終了するものの、「理論的、歴史的な哲学研究と、いわゆる応用的な思考との区別がなくなる地点に立って、哲学的『交差=越境』と現実の諸問題への提言との様々な可能性」に関しては、今後もそれぞれが何らかの形で追求していくことが確認された。
なお研究所の基本活動の一つである紀要『交域哲学』第?期第四/五合併号は、現在刊行準備中である。

【2013年度】
2013年度の講演会は、11月29日に鹿児島大学准教授の信友建志氏をお招きして「精神分析と組織化」と題して行われた。『スピノザとわたしたち』(アントニオ・ネグリ著)や『ラカン、すべてに抗って』(エリザベート・ルディネスコ著)等の訳者でも知られる信友氏の講演とあって、当日は30名以上の聴講者が集うほどの盛況であった。専門の精神分析を基盤に、社会哲学や政治哲学にまで及ぶ広汎な講演内容は、きわめて独創的なものであり、本研究所の研究員も大いに刺激を受けた。特筆すべきは、専門外の人間にも理解しやすいように、精神分析の根本的な概念に関して丁寧に説明していただいた上で議論が展開されていた点であり、そのおかげで、講演後の質疑応答もたんなる用語の意味の確認に終わらず、本質的な点に関してやりとりをすることができ、非常に有意義な講演会となった。
また例年通り研究会も行われた。澤里岳史招聘研究員を中心とした研究会には、研究所から河合孝昭招聘研究員、河村一郎招聘研究員、小山太郎招聘研究員、その他に研究所の外部からの参加があった。
なお研究所の基本活動の一つである紀要『交域哲学』第?期第四号は、現在刊行準備中である。

【2012年度】
2012年度は、講演会を開催できたのが大きな収穫だった。その講演会は、11月30日に大阪府立大学准教授の酒井隆史氏をお招きして「書くことのアナーキズム―歴史・蜂起・『通天閣』」と題して行われた。講演会の直前に、酒井氏の著作『通天閣―新・日本資本主義発達史』(青土社)のサントリー学芸賞受賞が発表されたこともあり、当日は50名以上の聴講者が集い、会場は熱気に溢れていた。まず一時間ほど酒井氏に講演していただいた上で、河村一郎招聘研究員の司会で一時間半以上にわたり質疑応答が繰り広げられたが、時間に余裕があったおかげで、たんに表面的な応答に終わらず、講演や前掲書の内容にまで深く踏み込んだやりとりができ、聴講者だけでなく講演者にも満足していただける会になったと思う。
また例年通り研究会も行われた。澤里岳史招聘研究員を中心とした研究会には、研究所から河合孝昭招聘研究員、河村一郎招聘研究員、小山太郎招聘研究員、その他に研究所の外部からの参加があった。取り上げたテキストは以下のものである。
・Alexis Nouss, La modernitテゥ, PUF, 1995. Frテゥdテゥric Gros, ” Foucault, penseur de la violence?, ” in Citテゥ 50, 2012.
なお研究所の基本活動である紀要『交域哲学』第?期第三号は、現在刊行準備中である。

【2011年度】
2011年度は、研究会/読書会等を中心に活動した。
そのなかでも、澤里岳史招聘研究員を中心として長年続けられてきた研究会は、11年度もほぼ月一回という定期的なペースで活動することができた。参加者は、研究所から河合孝昭招聘研究員、河村一郎招聘研究員、小山太郎招聘研究員、その他に研究所の外部から参加していただいた方もいた。
この研究会では、主としてフランス語の文献の検討を行っており、取り上げた文献は、どれも現代の政治哲学に関して重要な示唆を含むものである。いくつか代表的なものを挙げておく。
・Lucien Jaume, “Philosophie en science politique,” in Dテゥbat 72, 1992.
・Etienne Balibar, “Remarques de circonstance sur le communisme,” in Actuel Marx 48, 2010.
研究所の招聘研究員が母体となった研究会でのこうした活動が、その場かぎりで終わってしまうのではなく、昨年度の活動報告に記した『民主主義は、いま』(以文社)のように、訳書という形で刊行されたり、あるいは紀要論文等としてその成果がきちんと形に残るよう、引き続き努力していくつもりである。また次年度以降は、上記以外の研究会における活動をより活発にして、できるだけ多様な知の哲学的「交差=越境」を目指していければと考えている。
なお研究所の基本活動である紀要『交域哲学』第?期第二号は、現在刊行準備中である。

【2010年度】
2010年度は、新たなプロジェクトの一年目であったが、基本活動の一つである講演会/シンポジウムが開催できなかったのが残念である。講演をお願いしていた先生の都合で年度末の開催を予定していたが、震災の影響で急遽キャンセルをせざるを得なくなった。やむをえない事情とはいえ、来年度以降はこうしたことのないようにしていきたい。
そうしたなか、河合孝昭招聘研究員、河村一郎招聘研究員、澤里岳史招聘研究員の三人が中心となって長年続けている研究会の成果が、『民主主義は、いま』(以文社)という訳書となって刊行されたことは大きな成果である。著者は、ジョルジョ・アガンベン、アラン・バディウ、ジャン=リュック・ナンシー、ジャック・ランシエール、スラヴォイ・ジジェクといった現在の思想界を代表する論客たちである。たんに政治哲学の分野にとどまらず、現代世界を考える上で幅広い射程を備えた本書が、本研究所の招聘研究員の手によって日本語で読めるようになったことは、大変に喜ばしいことである。
研究所のもう一つの基本活動である紀要『交域哲学』第?期第一号は、現在刊行準備中である。

所長

佐藤 眞理人[さとう まりと](文学学術院教授)

メンバー

【研究所員】
佐藤 眞理人(文学学術院教授)
小島 雅春(文学学術院教授)
那須 政玄(社会科学総合学術院教授)
高橋 順一(教育・総合科学学術院教授)

【招聘研究員】
河合 孝昭(早稲田大学文学学術院非常勤講師)
小林 邦輝
増田 靖彦(龍谷大学経営学部専任講師)
森 幸久(?ハビタス代表取締役)
大沢 啓徳(早稲田大学文学学術院非常勤講師)
河村 一郎((株)東京医進学院非常勤講師)
小山 太郎(中部大学経営情報学部専任講師)
澤里 岳志(早稲田大学文学学術院非常勤講師)
野内 聡(早稲田大学文学学術院非常勤講師)
本郷 均(東京電機大学工学部教授)
岡田 聡

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