Comprehensive Research Organization早稲田大学 総合研究機構

その他

ナチュラルコンピュテーション研究所【活動終了】
Institute for Natural Computation

【終了】2000~2005年度
過去の研究所活動はこちら

研究テーマ

自然界における法則・現象の解析、新しい計算系の構築

研究概要

1.背景
現在我々が利用しているコンピュータの性能には理論的 かつ現実的な意味において限界があることが明らかになっている。すなわち、 理論的には計算不可能性の壁があり、現実的にはいわゆるNPとよばれる問題のクラ スは実際的な時間内では解けないと信じられている。このような状況下で近年、欧米 をはじめ我が国においても非ノイマン型計算メカニズムを強く 志向する機運と相まって分子計算・量子計算などをはじめとする 新しい超並列計算パラダイムが提案され注目されている。

2. 目的
我々は、これらの新しい計算パラダイムをより包括的かつ統一的に研究する目的 で“ナチュラルコンピュテーション”という概念を提案 している。これは物理法則、生体化学法則、生命現象などの自然 界におけるあらゆる法則や現象を解析し、そこから情報処理・計算メカニズム にとって有用であると思われる原理・現象(反応法則)を抽出し、それらを基本とする 新しい計算系の構築と新しい計算機の開発を目指すことを 目的としているものである。
より具体的には、例えば DNA、RNAの構造分子やタンパク質のような高次構造を持つ生体高分子は分子認識(分子会合)、自己組織化、形態変化などの生体反応・現象に よって目的をもった分子系を形成し機能を発現する。そこで、以下のような “自律的計算スキーマ”を考える。まず充分な量の構造分子群からなる溶液 (これをプログラムとする)を仮定する。これに対して外部からある情報(これが入力 である)が与えられると、その入力に対する計算・演算の結果としてある特定の構造化分子を生じるとする。意図した構造化分子の形成がここでの計算の出力結果である。

3. 活動
本研究所の目的である「生体構造分子と生体化学反応系に関 わる情報処理能力を計算理論的、アルゴリズム論的な視点から解析し、それらの解析結果 に基づく新しい計算メカニズムと計算モデルを体系的に構築する」ことを目指して、 情報科学、生物物理学、生体化学、分子生物学、物質科学、などの多分野・諸領域から研 究者による共同研究を実現させるべく、定期的な研究フォーラム(談話会)を開催する。

研究報告

2005年度
研究報告2005年度における研究成果は3つの課題に大別される.その概要を以下で述べる.
(1) 自律的分子計算系の基礎的考察:(a)1次元記号列の集合と二重鎖集合との間を関係付ける2つの写像linearizerとdoublerを導入し,これまで独立に研究されてきWatson-Crickオートマトンモデル,Sticker計算モデルなどの種々の計算モデルに対する統一的な特徴付けを得ることができた.(b)前年度に得られた任意の正則な配列集合に対する二次構造予測アルゴリズムを有限集合に制限することにより, O(n5)の計算時間で動作するアルゴリズムを考案し実装した。(c)有限オートマトンを大腸菌の細胞内分子メカニズムを用いて実現する研究を行った.大腸菌内のタンパク質合成メカニズムを用いて有限オートマトンを計算する方式と実験プロトコルを設計した.
(2)抽象化学反応計算モデルの研究:?ARMS(抽象化学系)を用いて“小数粒子多自由度系”の観点から確率的な立場からの検討, ?P53(アポトーシス系)のモデル化と数理的特徴付け.?については2者Lotoka-Vortela(LV)模型において大数粒子系では安定振動を行うのに対し,少数粒子系にすると大数での場合と異なった振る舞いをみせることを確認し,かかる事象の原理を解明するために状態空間の数え上げを行いその各々について状態遷移確率(反応規則の適用確率)がどのように変化するかを調査した。
(3)並列計算系による分子計算シミュレータの設計と試作:本年度の研究では(?)非決定的λ計算および名前呼びλ計算, (?) 非同期π計算,(?) bigraphical reactive systems,(?)CHR (Constraint Handling Rules)のような代表的かつ広範な計算モデルをLMNtalでエンコードして,実際に処理系上で動作させることに成功した.
2004年度
研究報告2004年度における研究成果は4つの課題に大別される.その概要を以下で述べる.
(a). 新方式の分子計算モデルの提案と分子基礎実験:分子コンピュータの理論的解析を行い,新しい分子コンピュータ計算モデルの提案を行った.具体的には,2つの認識部位をもち,その認識部位から離れた2つの場所で同時にDNA2重鎖を切断する非常に特殊な制限酵素を用いる.
(b). 分子配列設計法の考案:前年度に得られた任意有限回の連接によって構成される配列集合の構造非形成検証アルゴリズムを一般化して,任意の正則な配列集合に対する効率の良い構造非形成検証アルゴリズムを考案した.これは,Condon らが未解決としていた問題を解決したものである.また前年度得られた構造非形成検証アルゴリズムを実装し,最短経路アルゴリズムとしてはGoldberg-Radzig のアルゴリズムが適していることを実験的に確認した.
(c). 化学反応系の計算モデル:反応速度論ならびに化学量論 (Stoichiometric chemistry)とマルチ集合書き換え系を融合した化学反応の計算モデル(ARMS)と,膜を用いた計算モデル P Systems との関連について考察した.また,ARMSをBioinformaticsにおけるP53シグナル伝達系の動的シミュレーションに適用し,その解析に化学量論の手法を応用した.
(d). 階層グラフ書き換え言語:局所的並列計算モデルであるLMNtalの言語仕様について,ひきつづき形式的意味論の洗練および言語拡張案の検討を進めた.実装については,公開した処理系の整備拡張とともに,新たに分散処理系の設計と実装を進めている.理論面では,多重集合や膜概念をもつ他の計算モデルとの具体的関連づけの検討を始めた.

所長

横森 貴[よこもり たかし](教育・総合科学学術院教授)

メンバー

研究員
横森 貴(教育・総合科学学術院教授)
上田 和紀(理工学術院教授)
楠元 範明(教育・総合科学学術院助教授)
守屋 悦朗(教育・総合科学学術院教授)

客員研究員
小林 聡(電気通信大学電気通信学部助教授)
榊原 康文(東京電機大学理工学部助教授)

連絡先

早稲田大学教育学部
横森貴研究室
Email: [email protected]

Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/inst/cro/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる