災害復興医療人類学研究所【第Ⅰ期】
Waseda Institute of Medical Anthropology on Disaster Reconstruction
【終了】2014~2019年度
研究テーマ
東日本大震災を契機に提出されたさまざまな身体・心理・社会・文化的課題を追求し、アジア太平洋地域および米国において繰り返される自然災害・人為災害からの回復・復興に資する、広い意味での応用医療人類学に基づく調査研究をおこない、その知見を日本国内外へ発信する。
分野:社会システム
研究概要
【設立の経緯】
本研究所は、早稲田大学総合研究機構プロジェクト研究所『医療人類学研究所』(2007年〜2011年)所長を務めた菊池靖・早稲田大学名誉教授の発案で、災害復興に特化した医療人類学研究所として発足される。本研究所は、東日本大震災を契機に研究所代表者と早稲田大学人間科学学術院内の有志の教員らによって継続されてきた『災害と人間科学プロジェクト』の流れをくみ、その研究活動のコアとなるような機関としての役割を果たし、さらにハーバード大学難民トラウマ研究所(Harvard Program in Refugee Trauma;HPRT)と連携することで、国際的な観点から災害復興に資する研究を行う。
【研究概要】
これまでに「災害と人間科学プロジェクト」は、医療人類学・行動医学・臨床心理学・地域福祉学・発達行動学・建築環境心理学・公衆衛生学を包括した観点から、埼玉県内の各種民間支援団体の活動をコーディネートする震災支援ネットワーク埼玉(SSN)とNHK福島放送局との共同で、埼玉県・東京都・福島県において避難生活を送る東日本大震災および原発事故の被災者を対象にした大規模アンケート調査を実施してきた。調査は、”被災状況、生活経済状況、こころとからだの状況、家族コミュニティの状況、住宅環境の問題、法律賠償問題”など、被災者の生活全般の課題を明らかにしたもので、研究成果はNHKスペシャル「福島の今を知っていますか(2013年3月放映)の基礎調査として、また内閣委員会・国会での答弁、県・市町村自体への意見書として政策提言に活用された。
研究代表者をはじめ、研究所員の多くは、1995年発災の阪神・淡路大震災における支援と調査の経験があり、2011年以降は福島県を中心とした被災地、そして避難先である関東圏における支援とフィールド調査を継続して行ってきている。また、招聘研究員として、これまで共同して活動してきた民間支援団体の代表を招き、現場に密着した被災者主体となるための問題解決法を探索する。また日本国内の原発事故被災地にてフィールド調査を続けている開発人類学・建築人類学・文化人類学者を招聘し、さらに、北米・南米(ペルー、エクアドル等)およびアジア太平洋地域(フィリピン、カンボジア、ラオス等)の専門家を招き、国際的視野で災害復興を議論する。
【研究の射程】
1.こころとからだの健康課題(震災関連死、トラウマ、放射線被曝の問題、など)
2.人びとの絆・つながりと健康課題(健康情報、ソーシャル・キャピタルの問題、など)
3.地域復興における福祉課題(人間関係、コミュニティ再建課題、など)
4.子どもと家族をめぐる課題(子育て教育の問題、家族関係の再編の問題、など)
5.住宅や周辺環境をめぐる建築課題(復興住宅問題、防災意識問題、など)
6.地域文化・環境の継承と復興をめぐる課題(文化破壊・環境破壊の問題、など)
7.補償や賠償に関する法的課題(生活再建に向けた法的整備の問題、など)
8.民間団体による支援方略をめぐる課題(医療・心理・福祉・教育・法律分野の包括的支援策を探る)
所長
辻内 琢也[つじうち たくや](人間科学学術院教授)
メンバー
【顧問】
菊地 靖(早稲田大学名誉教授、国連大学客員教授(社会・開発人類学))
【研究所員】
辻内 琢也(人間科学学術院教授)
扇原 淳(人間科学学術院教授)
熊野 宏昭(人間科学学術院教授)
小島 隆矢(人間科学学術院教授)
根ケ山 光一(人間科学学術院教授)
桂川 泰典(人間科学学術院准教授)
西村 正雄(文学学術院教授)
【招聘研究員】
関谷 雄一(東京大学大学院総合文化研究科准教授(開発人類学))
北村 浩(公益財団法人政治経済研究所主任研究員(政治学))
佐藤 純俊(埼玉県杉戸元気会代表(社会福祉主事))
土田 マリサ(東京女子医科大学公衆衛生学第二講座医師(Idente Missionaries Sr.))
猪股 正(震災支援ネットワーク埼玉代表、埼玉総合法律事務所(弁護士))
仲佐 保(国立国際医療研究センター国際医療協力局国際派遣センター長)
安田 常宏(ハーバード大学医学大学院放射線医学助教授 マサチューセッツ総合病院放射線科放射線専門医)
Richaerd F.Molleca(ハーバード大学難民トラウマ研究所(HPRT)所長、ハーバード大学医学大学院精神医学教授)
増田 和高(鹿児島国際大学福祉社会学部社会福祉学科講師)
桂川 秀嗣(東邦大学名誉教授)
多賀 努((地独)東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と介護予防研究チーム非常勤研究員)