Comprehensive Research Organization早稲田大学 総合研究機構

その他

睡眠研究所 リカバリーウェアが睡眠を安定させる可能性を実証 ― 脳波・深部体温・心拍変動を用いた客観的評価 ―

早稲田大学睡眠研究所(所長:西多昌規/早稲田大学スポーツ科学学術院 教授)は、遠赤外線(Far Infrared:FIR)を放射するリカバリーウェアが、睡眠中の体温調節、睡眠構造、自律神経活動に及ぼす影響について、複数の生理指標を同時に測定することで検証しました。 

その結果、リカバリーウェアの着用により、睡眠時間や睡眠効率に有意な変化は認められなかった一方で、入眠過程および睡眠中の深部体温動態や睡眠段階の構成に変化が認められました。 

本研究成果は、国際学術誌 Sensors に掲載されました。なお、本研究は株式会社TENTIALとの共同研究として実施されました。 

発表のポイント

  • リカバリーウェア着用時、入眠過程において深部体温(鼓膜温)の低下が促進され、その低値が睡眠中を通して安定して維持された。 
  • 総睡眠時間や睡眠効率は変化しない一方、REM睡眠の割合が増加し、睡眠構造の再配分が示唆された。 
  • 脳波、深部体温、発汗量、心拍変動を同時に測定するウェアラブルセンサーを用いることで、主観評価に依らない客観的な生理評価を行った。 

研究の背景 

睡眠の質は、脳機能だけでなく、体温調節や自律神経活動と密接に関連しています。特に、入眠に先立つ深部体温の低下や、睡眠中における安定した体温制御は、睡眠の維持や睡眠段階の安定に重要な役割を果たします。これまで、寝具や室温といった睡眠環境要因に関する研究は数多く行われてきましたが、皮膚に直接接触する「睡眠時の衣類」が睡眠生理に及ぼす影響については、客観的指標を用いた検証は限定的でした。 

遠赤外線を放射する繊維素材は、末梢循環や熱放散に影響を与える可能性が報告されており、近年、リカバリーウェアとして睡眠時に使用される機会が増えています。しかし、その影響が入眠過程や睡眠中の体温調節、睡眠構造にどのように現れるのかについては、十分な科学的根拠が示されていませんでした。 

研究成果 

解析の結果、リカバリーウェア着用時には、入眠過程において深部体温の低下が促進され、その後の睡眠中も深部体温が相対的に低い状態で安定して推移することが確認されました。これに伴い、睡眠中盤では発汗量の低下が認められ、体温調節負荷が軽減された可能性が示されました。 

また、総睡眠時間や睡眠効率に有意な変化はみられなかった一方で、REM睡眠の割合が増加しており、睡眠構造の分布に変化が生じていました。自律神経活動については、睡眠初期に一過性の調整反応が認められたものの、睡眠を妨げるような過度の交感神経活性化は確認されませんでした。 

 研究の内容 

本研究では、健康な若年成人男性を対象に、遠赤外線を放射するリカバリーウェアと、外観や厚みが同等の対照ウェアを用いた無作為化二重盲検クロスオーバー試験を実施しました。被験者は一定の温湿度条件下で2晩の睡眠実験に参加し、それぞれ異なるウェアを着用しました。 

睡眠中には、脳波による睡眠段階評価、鼓膜温による深部体温の連続測定、発汗量・皮膚温・皮膚湿度の測定、心拍変動による自律神経活動評価を、複数のウェアラブルセンサーを用いて同時に行いました。 

図1 睡眠中の生理指標を同時に測定する模式図

脳波(睡眠段階)、深部体温(鼓膜温)、発汗量、皮膚温・湿度、心拍変動を、複数のウェアラブルセンサーを用いて同時に測定する様子を示す(Chat-GPT 5.2使用)。

図2 リカバリーウェア着用時と対照条件における入眠過程および睡眠中の深部体温動態の違い(概念図)

リカバリーウェア着用時には、入眠に伴う深部体温の低下が促進され、その低値が睡眠中を通して安定して維持されることを模式的に示す。本図は定性的な概念図であり、数値データを直接示すものではない(Chat-GPT 5.2使用)。

論文情報

掲載誌:Sensors
論文タイトル:Physiological Effects of Far Infrared–Emitting Garments on Sleep, Thermoregulation, and Autonomic Function Assessed Using Wearable Sensors

https://www.mdpi.com/1424-8220/26/2/550

研究代表者

西多 昌規
早稲田大学睡眠研究所 所長
(早稲田大学スポーツ科学学術院 教授)

研究助成

本研究は、株式会社TENTIALとの共同研究として実施されました。

Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/inst/cro/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる