情報・通信技術の進展により多種多様なデータの取り扱いが可能となったことで、実社会のみならず、理工系・人文社会系を問わないあらゆる学問・研究領域において、データ科学の重要性が高まっています。これまでそれぞれの専門領域で積み重ねられてきた「理論」と「データによる実証」が融合することで、これまでには無い新しい学問・研究の展開が期待されています。
本センターでは、私立総合大学の強みを最大限に活かし、理工系・人文社会系の専門領域で得られた知見と、最新のデータ科学との融合を図るプラットフォームを提供することにより、総合知・新しい知の創造と複雑でグローバルな社会問題解決を行うことができる人材の育成を目指すとともに、大学全体の研究力の向上を目指します。また、国内のみならず、海外の大学や企業とも大規模なネットワークを形成し、世界の先進的研究教育モデルの拠点として、実践的な教育と最先端の研究の普及に努めてまいります。
本センターで実施する事業は以下の通りです。
現在の国勢を詳明せざれば、政府すなわち施政の便を失う。
過去施政の結果を鑑照せざれば、政府その政策の利弊を知るに由なし
これは、早稲田大学の創設者である大隈重信が100年以上前に残した言葉です。現在の国の情勢を詳細に明らかにしなければ、政府は政治を執り行うことができない。また、過去の施政の結果と比較してみなければ、政府はその政策のよしあしを知ることができない、とデータ科学の必要性を述べています。
大隈は、わが国で最初の政党内閣を組織するなど内閣総理大臣を二度務め、明治・大正期の政治家としても有名です。一方で、大隈は数字に才能があり国際的な視点から統計の重要性を唱え、日本の統計制度を確立しました。具体的には参議として明治14年(1881年)に我が国で初の統計機関である統計院を設置し、自ら統計院長に就任しました。その後も総理大臣として統計の進歩改善に関する内閣訓令を発するなど、生涯にわたってデータ科学の発展に大きく貢献しました。
このように大隈は、明治という日本の新たな国づくりのためには、社会経済の実態を詳しくとらえたデータ科学に基づく施策が必要であることを訴え続け、歴史にその名を残しました。第1回国勢調査を主導した原敬、終戦直後に統計制度確立に尽力した吉田茂とともに、データ科学に最も深い関心を寄せた歴史上の総理大臣の一人に数えられています。統計院の設置から136年後の平成29年(2017年)、この大隈の意志を受けて、早稲田大学はデータ科学センターを設置しました。