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早大ア女30周年 福田あや×辻翔子×大滝麻未が描く、女子サッカーの未来

早大ア式蹴球部女子部設立30周年記念座談会(後編)

1991年に設立された早稲田大学ア式蹴球部女子部。OGも部員も親しみを込めて呼ぶ「ア女(アジョ)」の設立30周年を記念した座談会。ア式蹴球部女子の福田あや監督(2008年卒)、オランダでスポーツ放送事業に携わる辻翔子さん(2011年卒)、ジェフユナイテッド市原・千葉レディースの大滝麻未選手(2012年卒)のお三方に、ア女での経験を生かしたキャリアについて、そして2021年9月に発足した女子初のプロサッカーリーグ「WEリーグ」への思いを語ってもらいました。

福田あや(ふくだ・あや)
2008年3月、早稲田大学スポーツ科学部卒業。ア式蹴球部女子部コーチとして指導者の道に。インカレ2連覇達成後、益城ルネサンス熊本FC監督を経てノジマステラ神奈川相模原アカデミー監督就任。さらに同トップチームコーチとしてなでしこ1部昇格、皇后杯準優勝に貢献。合同会社Wetanz代表をしながら2020年度からア式蹴球部女子部監督を務める。

辻翔子(つじ・しょうこ)
2011年3月、早稲田大学スポーツ科学部卒業。オランダ・アムステルダム在住。「ELEVEN Sports」にて世界150カ国以上のサッカーリーグ配信事業に携わる。「海外×スポーツ×留学•就職」に関するサポート事業「SPORT GLOBAL」も設立。FIFAマスター出身。

大滝麻未(おおたき・あみ)
2012年3月、早稲田大学スポーツ科学部卒業。2012年1月、オリンピック・リヨン(仏)とプロ選手契約。同年 5月UEFA女子チャンピオンズリーグ決勝戦に出場し、優勝。浦和レッズレディース、ギャンガン(仏)を経て、2015年に現役引退するも復帰、ジェフユナイテッド千葉市川レディースで現役を続けている。日本代表通算3 試合出場。FIFAマスター出身。

卒業後の3人 お互いをどう見ている?

2019年7月、なでしこケアの設立発表記者会見に臨んだ大滝さん(右端)=共同通信

――お互いの活躍をどう捉えていらっしゃいますか?

福田

二人とも後輩だけど、リスペクトしています。大滝さんは、常に高い視座を持って行動しています。大学の時から「海外でプレーする」と考えて、実際に海外で活躍する実行力は尊敬します。もちろん葛藤や苦労はあると思いますが、それを見せずに、「なでケア」(※)など新しいものを作り出して来た。一回引退しても復帰したり、妊娠しても選手を続けたりという道を作るのは、女子サッカーや自分のためにしたいことを選んでいて、尊敬します。一緒に何かしたいし、仲間で良かったと常々思います。

大滝

ありがとう。それ色んなところで喋ってほしい(笑)。

※なでケアとは…一般社団法人なでしこケア(2019年7月創立)。女子サッカー選手による社会活動です。女子サッカーの価値向上と社会貢献を目指し、普及活動、キャリアビルディング、社会課題の解決に取り組みます。

福田

翔子(辻さん)に関しても、多様性や物事を捉える感覚は大学の頃から大きかったと思います。大学の時も一生懸命やった上で、プラスアルファで人と違う気付きがあると思っていました。オランダで「イレブンスポーツ」という、サッカーのマイナーな大会などをライブ配信する会社で活躍されていますが、サッカーの経験や知識を活かして仕事にするだけでもすごいのに、海外でプレーしたいというア女の後輩たちに手を差し伸べて、道を作ってくれました。理想や目的が仕事している姿から伝わってきて、刺激をもらえます。

こんなにいいこと言ってくれて、この後話しにくいなあ(笑)。福さん(福田監督)にはコーチとしてお世話になりました。ほぼ初心者として入部しましたが、全員に対して熱意を持って向き合ってくれたのが、私にとっては大きかったです。厳しさも優しさもあり、サッカーの楽しさを思い出させてくれました。色々なクラブを経てア女に戻ってきたと聞いた時は、嬉しかったし、現役生は幸せだろうなと思いました。今の代の選手はほとんど知りませんが、福さんのおかげでア女がまた身近な存在になりました。

2019年にフランスで行われたFIFA女子ワールドカップ開幕前のイベントに登壇する辻さん(スクリーン)

麻未(大滝選手)に関しては、卒業してからも一緒にいる時間が長かったです。私がスペインにいた時に麻未がフランスにいましたが、まさか同じタイミングでFIFAマスターに入ると思いませんでした(笑)。一年間、近くで麻未を見て、有言実行する力がある人だと改めて思ったし、外からは見えないかもしれませんが、何事に対しても地道にコツコツと努力しています。今の選手にとってロールモデルになる存在だし、色々なことを経験しているからこそ言動に説得力があるので、いつもみんなの想像を絶するようなことをしてくれて、刺激をもらっています。

大滝

ありがとう、嬉しい。二人とも大先輩ですが「女子サッカーが発展し、広まって欲しい」という志を持っている仲間でもあります。私が現役時代、戦術など色々なことを知りたいと思っている時に福さんが来てくれると、より深くサッカーについて考えることができました。本当にサッカーに熱い人で、「チームや女子サッカー」のためにという福さんの姿は刺激になりました。色々なチームで色々な指導者を見てきて、女子の指導者は大変なことも多いと思うので、応援しています。指導者という立場から、女子サッカーを引っ張って欲しいです。

FIFAマスターに入学した辻さん(左から3人目)と大滝さん(右から3人目)

大滝

翔子さんは女子サッカーを含めた色々なプラットフォームに関わりながら、強い思いで突き進んでいて、刺激をもらっています。FIFAマスターの一年間、本当に助けられて、感謝してもしきれません。私は海外の仲間に意見を言えないことがあったんですが、翔子さんはしっかり自分の意見を伝えて、成績も1番で卒業していました。今は海外進出したい日本人のためのプラットフォームの立ち上げもされていて、チャンスを与えられる存在はすごいなと思います。

女性アスリート、キャリアの課題

2021年、ア女からはWEリーグに2名、なでしこ1部に3名が各チームに入団した(左から松本茉奈加選手、村上真帆選手、冨田実侑選手、阪本未周選手、鈴木佐和子選手)

――ア女を含む若い女性アスリートのキャリアに関する課題について、どのような思いがありますか。

大滝

女子サッカーでは大学卒業後の進路がサッカーか就職かの二択になってしまって、それで就職を選ぶ選手がいます。10年、20年とかプレーしてきた選手が、「これまでサッカーしかしてこなかったから何も残らなかった」などと言って、頑張りぬいたことに価値を見出せないという現実があります。でも、自分の好きなことに捧げた数十年間をその後のキャリアに繋げられないのは、もったいないことです。なでケアでは、サッカーをやりながらもキャリアを築いて行こうという風に考える女子選手を増やすために取り組んでいます。常識を変えていくのはすごく時間がかかることです。なので、キャリアとサッカーを両立すると言うことを常識にする、と言うのが現在の課題だと思います。

早稲田スポーツ新聞にて、ア式蹴球部男子の外池大亮監督と対談したときの福田監督。「不変を徹底して可変を厭わない」と2021シーズンの抱負を掲げた

福田

麻未とほとんど同じですが、WEリーグができてプロ選手が生まれるという変化のある状況で、学生は将来に関する迷いがあります。ですが、今は「0→1」の時代で、そういう時代の歴史の1ぺージを担っていることを人生の面白さとして捉えて欲しいです。サッカーをやることで身に付く力や人脈など、スポーツには社会に通じる力が養えます。スポーツがキャリア形成に繋がっていることは確かなので、それを当たり前にリンク付けできる人材を社会に輩出するのが私の使命です。色々なOGの方と接点を持つような機会を部内でも増やしています。そう言ったことを通じてサッカーキャリアが社会にも通じる力にもなって色々な活躍を理解できるようになってきていますし、サッカー選手のキャリアを続けることが不安よりもプラスに捉えられる子が増えてきているように肌では感じます。

アメリカ上位500社の企業では、多くの経営者に共通して、高校・大学において高いレベルでスポーツを経験しているというデータがあります。特に女性にはその傾向が強く、女性幹部の95%が学生時代に体育会を経験しています。私は、日本でも同じような可能性があると思います。逆境を乗り越えたり、チームメイトと一つの目標に向けて努力したりと、スポーツでは意識しなくても問題解決力などが培われます。それは社会に出ても生かせると思うので、自分の経験に対して「スポーツをやってきたから」と言うポジティブなメンタリティーを持ってもらいたいです。卒業してからの道は、選手となること以外にも色々な職業があります。それを知ってもらうために、ロールモデルや、取り上げるメディアも必要だと思います。

女子初のプロサッカー「WEリーグ」への思い

2021年9月に始まったWEリーグ。ア女出身の松本茉奈加選手は大学卒業後すぐにノジマステラ神奈川相模原に入団し、10月10日、同リーグのチーム初得点を挙げ、初勝利に貢献した

大滝

「単純に嬉しい」という思いの一方、「やっとか」という気持ちも強いです。2011に日本がW杯で優勝して、(プロリーグを創設する)これまでにない機会があったのに、そこから10年経ってやっと、というのがもったいない気もします。でも、とにかく出来てよかったです。このリーグをいかに続けていけるかというのは私を含め、今の選手にかかっていると思うので、気が引き締まる思いと、将来の女子選手たちの夢に向けて頑張らないといけないという責任感や今後への不安なども感じます。

福田

私も純粋に嬉しいです。やっぱり自分が好きで始めたスポーツのプロ選手になるという夢がリアルに見られるって、素晴らしいことだと思います。2019年にあったFIFA女子ワールドカップのフランス大会からヨーロッパでも女子サッカー人気に火がついて、去年スペインの少女の夢ランキング7位にサッカー選手が入りました。それが羨ましいな、と思いました。日本でもプレーの質もリーグの発展もマーケティングも、色々な力が一体となって、子供たちの夢に刺さるような活動ができればいいと思います。

スペインもイングランドもプロ化が進み、ビッグクラブも女子に投資するようになって、W杯でもベスト8のうちアメリカ以外みんなヨーロッパというのが象徴的でした。現在女子サッカーへの投資が世界中で急速に増えているので、このタイミングでWEリーグができたことに安心しています。WEリーグが名前に掲げるように、「Women’s Empowerment」という面でも、女性の活躍を支援する、内容を伴った舞台になって欲しいです。サッカー以外の女子スポーツを活気づける存在にもなって欲しいし、日本の女子サッカーを目標としているアジア圏の国も多いと思うので、そういった国の目標になるようなリーグになってほしいです。ただ懸念している点として、女子サッカー界の中では盛り上がっているけど、意外と外ではWEリーグを知らない人も多いのではと思います。なので、社会全体で女子サッカーが盛り上がって話題になって欲しいですね。

座談会後、大滝さんに第一子が誕生しました!
ますますのご活躍を期待しています!

取材・文 学生スタッフ・馬塲貴子(政治経済学部4年)

前編「早大女子サッカー『ア女』30年の軌跡 福田あや×辻翔子×大滝麻未が語る」はこちら

早大女子サッカー「ア女」30年の軌跡 福田あや×辻翔子×大滝麻未が語る

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