Graduate School of Sport Sciences早稲田大学 スポーツ科学研究科

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睡眠時間の短縮が肥満リスクを増加させるメカニズムを解明

早稲田大学スポーツ科学学術院・内田直(うちだ すなお)教授と花王株式会社(澤田道隆 社長)ヘルスケア食品研究所の共同研究グループは、睡眠時間の短縮が、食欲抑制ホルモンの減少や空腹感の増加などの食欲に影響し、肥満リスクを増加させるメカニズムを解明しました。

ヒトの睡眠について、これまでの疫学研究では、睡眠時間が短いと肥満のリスクが高まることが知られていましたが、睡眠時間がヒトのエネルギー代謝に及ぼす影響については、様々な研究成果があったものの、そのメカニズムについては明確になっていませんでした。

本研究では睡眠時間の短縮が、エネルギーバランスに影響していることを48時間に亘る代謝測定から明らかにしました。これまでに議論されていた、睡眠時間の短縮がなぜ肥満リスクを増加させるのかという問いに対して、本研究はエネルギー代謝の面からの生理学的メカニズムの一つを提供したものと考えられます。

なお、本研究成果をまとめた論文は、英国Nature Publishing Groupの電子ジャーナルScientific Reportsに2017年1月10日にオンラインで掲載されました。
Effect of shortened sleep on energy expenditure, core body temperature, and appetite: a human randomized crossover trial, Scientific Reports, (2017) [DOI:10.1038/srep39640]
www.nature.com/articles/srep39640

これまでの研究で分かっていたこと(科学史的・歴史的な背景など)

uchida

実験中の被験者

これまで睡眠研究は、脳波を主体とする睡眠ポリグラフィーを用いて、主に睡眠の質についての評価を行っていました。しかしながら、これは脳の活動については理解することができますが、生体におこっているその他の様々な現象については、明らかにすることができませんでした。過去に行われていた、脳波変化やホルモンの分泌などを調べる身体的な変化の研究では、体全体をみる代謝についての研究は、充分に行われていませんでした。更に、人のエネルギー代謝に対しての研究は、測定も困難でした。

今回の研究では、花王株式会社が2004年に民間企業で初めて導入した、メタボリックチャンバー(ヒトのエネルギー代謝を、日常生活に近い環境で長時間、正確に測定することができる部屋型の代謝測定装置)を用いて、人のエネルギー代謝を常時モニターし、短時間睡眠にした場合に、エネルギー代謝がどのように変わるのかについてしらべました。エネルギー代謝と睡眠との関係をこのような装置を用いて調べる研究は、斬新な研究です。これは、このような装置のある施設と、睡眠計測の技術が合わさってはじめてなし得た研究であります。

今回の研究で得られた結果及び知見

①睡眠時間の短縮は、夜間のエネルギー消費量の増加にもかかわらず、1日のエネルギー消費量や脂質利用量には影響を与えませんでした。
②3日間の睡眠時間の短縮には食欲抑制ホルモンであるPYYの減少や、1時間ごとに測定された空腹感の増加などの食欲への影響が明らかになりました。
③直腸で測定された深部体温は、睡眠時間の短縮によって有意に低下し、深部体温の日内リズムに影響することが明らかになりました。

研究の波及効果や社会的影響

今回の研究の結果、睡眠時間を短縮すると、夜間のエネルギー消費量の増加にもかかわらず、1日のエネルギー消費量は有意に変化しないことがわかりました。一方、睡眠時間の短縮は食欲抑制ホルモンの減少や、空腹感の増加などの食欲への影響が明らかになりました。この結果は、睡眠時間の減少が肥満につながるという、これまでの知見の裏付けをすることができたと考えらます。

今後の課題

今後は、食物摂取などエネルギーの摂取量と、睡眠時間、また活動量などの相互関係について、より詳細に調べる研究が望まれます。

研究概要

睡眠時間を半分にする生活がヒトのエネルギー代謝に及ぼす影響について、若い健康な男性9名を対象として、メタボリックチャンバーを用いて試験を行ないました。

試験条件
  • 対象者:若い健康な男性9名(平均年齢23.2歳、平均BMI22.2)
  • 試験方法:ダブルブラインド・クロスオーバー試験(二重盲検交差比較試験)
  • 測定装置:メタボリックチャンバー(部屋型の代謝測定装置)、脳波測定計、直腸温度計
  • 測定項目:エネルギー消費量、基質利用量、深部体温(直腸温)、血液検査、食欲アンケート(VAS)
  • 試験条件:決まった食事の生活をする中で、2週間の休止期間を挟んで、以下のAかBの試験条件をランダムな順番で行ないました。
  • 試験条件A:3日間7時間睡眠を行ない、3日目の7時間睡眠および翌日の回復睡眠を含む48時間、代謝への影響をメタボリックチャンバーで測定
  • 試験条件B:3日間3.5時間睡眠を行ない、3日目の3.5時間睡眠および翌日の回復睡眠を含む48時間、代謝への影響をメタボリックチャンバーで測定
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WASEDA University

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