※この記事は、以下の記事をもとに日本語に訳し、編集したものです。
How Waseda Supports Its Graduate Students to Grow as Researchers – Waseda University
講義やゼミで社会科学の魅力を知り、研究スキルを身につける
柴思原(Peter Chai)
早稲田大学政治学研究科博士後期課程比較政治学領域
早稲田大学政治学研究科博士後期課程比較政治領域の柴思原/柴田海(Peter Chai/Kai Shibata)と申します。博士後期課程に進学する前には、政治経済学部で経済学の学士号を、政治学研究科修士課程で政治学の修士号を取得しました。この記事では、私がどのような研究を行っているのか、また、学部時代から政治経済学部と政治学研究科で履修した講義やゼミ、教員から受けた指導によって研究を行うために必要な様々なスキルがどのように身についたのかを紹介させていただきます。
3号館11階のラウンジにて
【私の研究テーマ】
私の研究分野は政治社会学、比較政治学と世論調査です。男女平等や環境保護といった脱物質主義(postmaterialist)的な問題に対する人々の価値観と年齢、学歴、収入といった人口統計学的指標との関係を実証的に分析するために、世界価値観調査(World Values Survey)やアジア・バロメーター(Asian Barometer)のような国際的なサーベイデータを利用しています。価値観と人口統計学的指標がどのように関係しているかを分析することは、政治状況を理解し、政策立案者に洞察を与えることができると考えています。また、東アジアの国々の価値観パターンを分析することで、北米や西ヨーロッパといった西洋のデータに基づいた既存の理論が、アジアの文脈でどの程度適用するのかを検証することができると考えています。私が特に中華圏に注目しているのは、中華圏が地理や人口統計学的に大きなバリエーションのある「自然の実験室」であり、中国大陸、香港と台湾の価値観パターンを比較できると考えているからです。
【政治経済学部で学んだこと】
政治経済学部は、政治学や経済学のほか、経験や数理的分析といった方法論、その他社会科学の諸分野といった科目を提供してくれました。それにより、経済学や政治学のさまざまな領域や方法論の関係や位置づけを把握することができました。また、それらの分野や方法が歴史の中でどのように発展してきたかを理解し、重要な思想家や学者とその理論を知ることができました。
政治経済学部では様々な難易度の科目から選択することができ、自分の関心がある研究テーマを徐々に探り、絞り込み、その研究テーマに関連した研究スキルを身につけることができました。私は比較政治学と実証的分析に最も興味があることに気づきました。私はジョウ・ウィリー先生の比較政治学の専門演習(ゼミ)に入りました。ゼミでは、昔や最近の著作を読み、比較政治学、特に市民文化、社会資本、脱物質主義的価値観、権威主義的パーソナリティに関する本や論文を読みました。発表やグループワークでは、それらの結論が他の地域や今の時代にも適用できるかなど、潜在的な限界について、他のゼミ生と議論しました。ゼミでは、既存研究のギャップを探し、自分のリサーチクエスチョンを考えることができました。
さらに、政治経済学部はリサーチデザインに関する集中講義や特別セミナーを開催することがありました。私は当時提供されていたSGU(スーパーグローバル大学)プログラムで政治経済学部とエセックス大学、オーストラリア国立大学が主催するサーベイとテキスト分析のサマースクールに参加し、RStudioやSTATAなどのプログラミングソフトでコードやパッケージを使って回帰分析を含めデータを分析や可視化することを学びました。また、いくつかの研究プロジェクトで研究補助者を務め、外交や金融データの収集や整理を手伝うことで、定量的なスキルを強化しました。このようなスキルを活かして、私がデザインしオンラインで実施したサーベイ実験からの回答を分析した学士論文を書きました。
3号館から見た大隈講堂の眺め
【政治学研究科で経験したこと】
政治学研究科では経験や数理的分析に関する科目や研究領域に特化した文献研究セミナーなどがあり、徹底した方法論のトレーニングを提供してくれました。私は修士課程と博士後期課程では、指導教員のジョウ・ウィリー先生と副指導教員の唐亮先生のゼミに所属し、定期的に研究進捗について発表しました。指導教員とゼミのメンバーからフィードバックを受けることで、進行中の研究の改善点を見つけることができました。自分のモデルの限界についての建設的なコメントや、統計結果について質的な説明ができないかという建設的な質問もよく受けました。また、政治学研究科では他大学や他国から研究者を招待して共同セミナーやワークショップを開催することも多く、面白い研究トピックや最先端の手段について視野を広げたり、異文化間の対話に参加したりすることができました。
3号館中央のエスカレーター
3号館の内観
私は都度指導教員からキャリアに関するアドバイスをもらい、早稲田政治経済学会、早稲田現代政治経済研究所や計量・数理政治学会など、学内外の組織が主催する研究会や学会への参加を勧められました。研究発表を通して、ポスターやスライドの作り方、人前で話すことなど、実践的なスキルを磨くことができました。他の研究を聞くことで、経験豊富な研究者の研究デザインから学び、自分の研究をより客観的に評価することができました。他の研究者とコミュニケーションをとることで、同じような研究分野の研究者とネットワーキングすることができました。また、学部の授業TAを務め、教室でのディスカッションのファシリテーションや、Rというプログラミング言語の基礎的なコードやパッケージの紹介を担当しました。授業TAとして教えたり質問に答えたりすることで、私自身のプログラミングスキルが向上し、大学で働くということがどのようなことなのかを体験することができました。
政治学研究科には研究しやすい設備が充実しており、大学院生部屋や読書室、コンピュータールームで、論文の執筆やデータ分析などに一人で集中することができます。さらに、3号館の大隈講堂を窓から眺められるラウンジや、国際文学館村上春樹ライブラリーに併設されているカフェオレンジキャットで開催される政研リトリートでは、リラックスした雰囲気の中で仲間や先生たちと交流することができます。また、留学生向けの奨学金が充実しています。私は学部と修士課程では授業料減免奨学金と日本学生支援機構奨学金、博士後期課程では大学院博士後期課程研究者養成奨学金と朴龍九育成会奨学金を受給し、博士論文の執筆に活かすことができました。
3号館9階のコンピュータルーム
3号館地下1階の大学院生用の閲覧室
教員の指導や快適な研究環境のおかげで、私はWorld Values Surveyを利用して中華圏の脱物質主義的価値観を分析した修士論文を書き、計量・数理政治学会でポスター発表をしました。修士課程を修了してから、現在は中華圏の脱物質主義的価値観の諸側面、例えば男女平等や環境保護における態度を分析する博士論文に取り組んでいます。
【将来の目標】
政治経済学部と政治学研究科は私に社会科学の研究における魅力と挑戦を教えてくれただけでなく、私自身の研究課題に取り組むためのデータを分析スキルやその分析方法を反省する習慣を身に付けてくれました。私は経験的方法がいかに社会学研究をより科学的でエビデンスに基づいたものにし、研究者間の対話の架け橋となりうるかを理解してきました。先学期、私は早稲田現代政治経済研究所(WINPEC)や早稲田高等研究所のセミナーなどで、Asian Barometerの最新三波を用いて中華圏における家族構造と性別役割に対する態度を分析した博士論文の一章について発表しました。最近は、World Values Surveyの最新三波を用いて中国大陸における環境意識を分析した博士論文の一章についてワーキングペーパーを書きました。将来的には、移民に対する態度など、より多くの脱物質主義のトピックを探求し、他のサーベイデータを利用し、学会などで発表することを目指しています。
柴思原(Peter Chai)