From the Dean

研究科長挨拶

人間科学から、Well-beingな未来をともに創る

早稲田大学大学院人間科学研究科長 松原 由美

森と湖に囲まれた自然豊かなこの所沢の地で、人間科学研究科では学問領域の境界を越え、「人間」を中心に据えて、複雑な社会課題の解決と、人々がよりよく生きること、すなわちWell-beingの向上を目指し、研究が推進されてきました。

しかし人間科学部創設から約40年が経った今、世界も日本も、人々がよりよく生きる方向に進んでいるでしょうか。対立や分断が深まり、「力こそ正義」ともいえる論理が目立つ時代になっているのではないでしょうか。

このような時代だからこそ、私たちは改めて、一人ひとりの「人間」を中心に据える人間科学が求められると考えます。
Well-beingを考えるうえでは、一人ひとりが自ら価値を置く生き方を選び、それを実現できることが重要です。そのためには、例えば、年齢や性別、障害の有無などにかかわらず、自らの可能性を生かし、望む生き方を選択できる環境をつくることが求められます。
こうした環境を実現するためには、人間そのものだけでなく、人を取り巻く技術、社会、制度、環境を多面的に捉える必要があります。
たとえば、人は誰でもミスをします。そのミスを個人の責任だけに帰すのではなく、なぜ人間は間違えるのか、ミスを防ぐにはどうすればよいか、人間の認知や心理、教育、技術、組織、制度など多様な側面から研究し、機械や組織、制度のあり方を変えていくことも、人間科学の社会への貢献の一つです。
また、人間にとって望ましいことが、必ずしも地球環境にとっても望ましいとは限りません。人間のWell-beingを、自然や地球環境との関係の中で捉える視点も必要です。近年の異常気象による災害の頻発には、地球規模での解決策が求められています。

一つの学問だけでは答えることのできない問いに、異なる領域の知を融合し、科学的に向き合う。このような時代だからこそ、人間科学が果たす役割は、ますます大きくなっていると考えています。
本研究科が、皆さん一人ひとりにとって、自らの問いを深め、異なる知と出会い、新たな知を生み出し、それを社会へとつなげていく場となることを願っています。
人間とは何か、よりよく生きるとは何か。
皆さんとともに問い続け、新たな未来を創っていきたいと思います。

(2026年09月21日)