スガシカオ @ The Haruki Murakami Library レポート
2022.07.30
- 文学・芸術
スガシカオ @ The Haruki Murakami Library(5月25日)レポート
5月25日(水)、「早稲田大学国際文学館 キャンパス・ライブ スガシカオ@The Haruki Murakami Library」と銘打って、シンガーソングライターのスガシカオさんによるコンサートが開催されました。
早稲田大学国際文学館では昨年10月の開館以来、作家を招いて「Authors Alive!」と題する朗読などのイベントを開催し、今年度も続けて実施していますが、さらに今年から様々なアーティストのライブ演奏等をお楽しみいただく「キャンパス・ライブ」を実施しています。
今回はその第2弾です。
開演の15時半の少し前に、参加者が「階段本棚」などの‟客席”に着き、当館顧問の橋本周司名誉教授の主催者挨拶のあと、司会進行をつとめるミュージシャンの坂本美雨さんが登場。小説の中にスガさんの楽曲「バクダン・ジュース」が登場している村上春樹さんの『アフターダーク』の一節を朗読しました。紹介につづいてライブがスタート、ギターを抱えて地下1階の「土星」のネオンの前に立ったスガシカオさんが演奏を始めました。その第1曲めは「19才」。
曲のあとに早稲田大学との“縁”を紹介しつつ、スガさんは4号館のリノベーションを手掛けた隈研吾さんとの交流にも触れ、今年がデビュー25周年ということで、デビュー曲「ヒットチャートをかけぬけろ」を2曲目に選びました。
3曲目に下町育ちであるスガさんらしい選曲で、夏が始まる前の季節にぴったりの「夏祭り」が、つづいて4曲目に「ひとりごと」が歌われました。
このあと、3枚目のアルバム「Sweet」のジャケット写真にまつわるエピソードが披露されました。撮影に行った音楽室のある学生寮(和敬塾)が、訪れたことがないのに既視感を覚えたスガさんは、そこが愛読していた村上春樹さんの短編小説「螢」(『ノルウェイの森』の冒頭にも使われている短編)に描かれているところだと気がつきます。そして、村上春樹さんがかつて住んでいた部屋も教えてもらい、感動したとのことでした。
そして5曲目は「アストライド」。さらに前半の最後6曲目には、「最近あまりやってないんですが、春樹さんに頼まれたので」と言いながら、オープニングで紹介されていた「バクダン・ジュース」を鮮やかに演奏し、聴衆を魅了しました。
トークが始まり、坂本美雨さんは、スガシカオさんと村上春樹さんの‟縁”を質問。1997年のデビューアルバムについてスガさんにインタビューした編集者が村上さん担当でもあり、スガさんがそのアルバムを村上さんへ、と渡したところ、村上さんからの感想のファックスが編集者経由でスガさんに届いたとのこと。それを大事に持っているというスガさんが「本当に村上春樹はいたんだ」と語ったところで、村上春樹さん本人が‟サプライズ登場”しました。参加者には知らされておらず、終演後のアンケートにも「嬉しい驚き」との声が多くありました。
「バクダン・ジュース」についてある種の理不尽な暴力性が感じられる歌詞がいい、と語る村上さんでしたが、『アフターダーク』を読んでいる途中で人から作品に自分の楽曲が出ていると聞かされたスガさんは、その後物語が頭に入らなくなって、とのこと。「ストーリーの真ん中を抜いた感じが好きだ」という村上さんに、「それは春樹さんの影響。核心をばんと書いたりしない」とスガさんが受けるやりとりもありましたが、お二人がお互いの作品を評するのに「いろいろな情景が残る、情景がとびこみやすい」と同じような言葉使いだったのも印象的でした。
コブシをまわさない歌い方のこと、10代に好きだった音楽、コード進行での工夫、など、3人での音楽談義もはずみました。
スガさんが好きな村上作品が紹介されたあと(旅行記の『雨天炎天』、短篇では『めくらやなぎと眠る女』とのこと)、フロアとの質疑応答に移り、そこでもギター・レッスンのことなど、話題が広がりました。
そしてイベントの最後は、あらためてスガさんが「黄金の月」を演奏し、締めくくりとなりました。
この曲は、スガさんが曲の前に紹介したように、村上春樹さんの『意味がなければスイングはない』で触れられていて(「スガシカオの柔らかなカオス」)、歌詞も文中で一部引用されています。
曲によってギターを替えて熱演したスガさん、終演後に「とても楽しい時間が過ごせました」とツイートしていますが、そこで階段本棚から見たスガさんの姿を写真で見ることもできました。
演奏曲
- 19才
- ヒットチャートをかけぬけろ
- 夏祭り
- ひとりごと
- アストライド
- バクダン・ジュース
- 黄金の月
朝日新聞デジタルで紹介されました
「すべてを言わないスガシカオさんの歌詞「村上春樹さんの影響大きい」」
毎日新聞で紹介されました
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