The Hirayama Ikuo Volunteer Center (WAVOC) , Waseda University早稲田大学 平山郁夫記念ボランティアセンター(WAVOC)

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【正課の取組】体験的学習科目「狩猟と地域おこしボランティア」─ 2025年度秋学期 ─ 第5回 村と人間 ~「好き」をたどって見えてきた、暮らしの手触り~

【正課の取組】体験的学習科目「狩猟と地域おこしボランティア」
─ 2025年度秋学期 ─ 第5回 村と人間 ~「好き」をたどって見えてきた、暮らしの手触り~

文化構想学部2年 小林武人

「ボランティア」や「地方創生」を、「就活で話すガクチカのためにやること」と考える人が、私の周りには少なからずいます。私自身、第一歩を踏み出した最近までは、そう思っていた節があるように思えます。「ボランティア」や「地方創生」に対して、「就職をゴールとした一方通行の道」というイメージが先行しているのだと、常々感じます。

しかし、現場に足を運んでみると見えてくるものがあるのです。ボランティアはエントリーシートに記載されるためではなく、「一つの地域が存続するためにある」こと、地方創生は、遠くから「意識高い系」の学生によって行われるものではなく、「生活の中で切実に行われるもの」であることがわかるのです。

本授業にて丹波山村を訪れ、村の見学や空き家清掃をしたことで、村に宿るもの、そこに住む人々のこと、村とは何か、ここにしかない様々なことを学び、考えました。それを伝えたいと思います。

まず、村は、分解するとどれだけの要素でできているのでしょう。

それを、僕が訪れた丹波山村について考えてみます。

バス停。これは大事です。これがないと丹波山村に辿り着くのはぐっと困難になります。玄関ともいえます。

バス停にあった壊れかけた茶色いベンチもよいですね。辿り着いて最初に、意識的に焦点を当てて目にしたのは、広い空でも村を囲む山でも鹿でもなく、この、有機的に丹波山の空気感を構成する、古く優しいベンチでした。

そう、バス停は有機的でした。日当たりや、それによってすら輝けないくたびれた時刻表も、ベンチとバス停をまるで浮かべるように飾る落ち葉たちのそれぞれも、全てがお互いに優しさと切なさを与え合っているように思え、僕の心は想像よりもずっと早くに動き出しました。

バス停は周辺の空間にある全て、ひいては村とも、きっとそういう「優しさと切なさを与え合う」関係性にあるのでしょう。

匂いや音など、訪れないと知ることのできない、「五感」はどうでしょうか。

例えば視覚。人類がその目で世界を見つめてきた20万年の歴史に比べ、カメラが「視覚」を記録し始めてからは、まだたったの200年ほどしか経っていません。

そう考えると、写真や映像に残るものは、ほんの一部に過ぎないのだと気づかされます。この村には、レンズ越しでは決して捉えきれない、実際に訪れてこそ初めて「見える」景色が、まだまだ溢れているように感じるのです。

風の触り心地は、どのように自分の輪郭をなぞったのか。鹿の唐揚げが教えてくれた知らない味覚をいつまで僕は覚えていられるのか。

特に、匂いは素敵でした。僕の生活する東京都の右側にはいつもある「つんとくる刺激」がないのです。

後日、丹波山の好きな匂いについて尋ねると、ある村の方は「朝の匂いが好きだ」とおっしゃってくださいました。東京の朝の匂いを思うと、東京にもあるそのよさと同時に、少しだけ鼻がつんとする感覚が戻ってきます。

丹波山の朝はきっとすごいのでしょうね。僕も嗅いでみたい。2回訪問したのですが、1度目は鼻が詰まっており、2度目はほんの少し遅刻してしまい、丹波山の朝を嗅げていません。

音で印象的だったのは、山に入った時の音です。落ち葉を踏みしめて歩き、どこからか1、2回聞こえた銃声に心躍らせ、音を立てようと思えば多彩な音を奏でることができる空間にいて、しかし、あえてそれをしないことで初めて聞こえる息。ここで先ほどの方から、「猟師は、動物の歩くカサカサという音に耳を立てる」と聞き、また心は踊りました。

これらの追憶により、「村」というものは、やはり無数の要素で成り立つものだなと痛感せざるを得ません。

それでも、僕たちは「村」と呼びます。当然のことですが、同じ「村」という言葉を使ってもその時浮かべるものはそれぞれ全く違うことでしょう。ここに、訪れることの意味を、強く感じます。

「村」にいる人間の姿形、それぞれに思うこと、見ているものも違うのに、僕たちは「過疎に悩む多くの地域のうちの一つの村」として、「地方創生の対象」として見るのです。

僕も、本授業の、丹波山実習の前の事前学習や、実際訪れた後の1、2時間の解説と体験により、そう捉えていたと今では思います。僕のような、知識も経験もまるでない19歳の学生が、「村は守る対象」だなんて本気で思っていたのです。

脳のシワに古いヌメヌメとした機械油を差したような僕が、そこで見落としていた「生活の宿る村」というものに意識的に目を向けられるようになったのは、「好き」を聞いた時です。それも、先ほどから言及している方から聞いたのですが、その方は猟師の保坂さんです。自分で動き自分で考え、独自の芯を持った世界との関わり方をする、とてもかっこいい方で、何を伺っても自身の回答を自分の中に探し、見つけ出してくれる、素晴らしい方です。

好きな場所を尋ねました。教えてくださったのは、日当たりのいい川辺り。時間を過ごして季節や陽の動きを受け取りながら獲得した、広い「好き」でした。僕が丹波山を地方創生の実践場としてではなく、「生活がいくつも住んでいる村」として捉えることができたのは、この時です。

僕も、ようやく、「好き」を一つ見つけました。丹波山の形です。

心地良い風や陽だまりを生み出すその坂だらけの形は、僕がもし大きなボールだったなら、僕をどこまでも転がしていってくれることでしょう。ゆるやかに暖かく、時に急峻さが刺激を与えて。僕が掲げていた「好きを見つけて村自体を好きになる」という目標は達成されました。

そうした、「好き」などのいかにも人間的な感情は、ボランティアをする中でお世話になった村の方々には、仲間を助けることとして組み込まれています。楽しいという感情を持ちながら、頼まれたことを快く引き受ける笑顔にそれが見えました。

それに交わった僕たち学生のお手伝いにも楽しいという感情がありました。

村を成り立たせて、支え続けているのは、保坂さんが川辺の陽に感じるようなささやかな「好き」や、僕たちが感じた「楽しい」の総量なのだと、丹波山に「好き」を持つことができた僕は、身をもって感じます。

それはきっと、誇りや力、経験として摂取され、履歴書に記入されるためにあるボランティアとは違うもので、地方創生の一つの素敵な出発点なのではないでしょうか。

地方創生の策を考えること、助けてあげるという心持ちでいること。そうした、こちらから村へ向ける「一方的な矢印」の中だけに答えを探そうとしても、見つからないものがあります。

必要なのは、人間としてただ訪れ、村から何かを受け取るという、逆向きの矢印も持つことです。

知識を持って挑むことと、丸腰の人間として向き合うこと。この授業が提供してくれたのは、その相反するように見える二つの関わり方を往復する時間でした。

学ぶことはどういうことなのか。実情を学びながら根本から変える何かを探すことも一つ、人間として村の中に身をおいてみるのもまた一つです。特に、人間として村からもらった感情が、それまで深く学んでいた村の情報・課題に色彩を与え、命をもたらしたという経験は、新鮮で強烈なものとして僕の中に残りました。

この授業で学んだことが何かと問われると、きっとそうした、「人間に宿る根源的なものと村との関係性」だと答えます。

先述の通り、この体験は一つの入り口でしかありません。ここからどれほどその土地に根を張るか、その土地とどう関わっていくのかは、個人の主体性によるものです。今回の訪問には過去の履修生が多く参加していました。それぞれがそれぞれの形で、過去に体験したことを活かした道に足を踏み出し始めていました。

それは村と人間の関係のいくつかの望ましい形です。自分がどう感じるのかということを大切にし続ければ、想像もできないような枝分かれを生み出し続けるのです。地方というのは、村というのは、そういうところです。

「好きを見つける」でも、「知り合いがいる」でも、どんな入口でも、何かが起こるかもしれない。

あなたも人間として、何も背負わずに、ただ楽しみに来てみてください。何かを感じるかもしれないし、何も感じないかもしれない。それでも、感じた何か一つが大きなうねりを巻き起こすかもしれません。

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