【正課の取組】体験的学習科目「狩猟と地域おこしボランティア」
─ 2025年度秋学期 ─ 第3回 関東一小さな村のすてきな役場
法学部4年 原梨桜

関東一小さな村、丹波山村。「丹波宿」として栄えたこの町のメイン通りである青梅街道(国道411号)を少し歩くと立派な建物が見えてきます。丹波山村の役場機能を担う、「丹波山村新庁舎」です。この新庁舎は2022年2月1日に建設工事が完了し、2023年4月3日から運用が開始されました。
3軒に1軒が空き家となり、活力の低下も見られる丹波山村。その中でひときわ目を引くのが、この美しい新庁舎です。本記事では、新庁舎の魅力をお伝えすると共に、なぜこの村にこれほどきれいな庁舎が建てられたのかを調査してみました。
木造×鉄骨造!織りなす壮麗な外観
新庁舎を目にした人がまず驚かされるのは、その外観でしょう。
この新庁舎の設計には9つの会社による公募型コンペを経て選ばれたデザインが採用されました。設計で力を入れたポイントの一つは木材の使い方。入口側の軒下を歩くと、たくさんの木材が巧みに組まれている様子を見ることができます。この新庁舎はバス停の発着点にもなっているので、軒下はバスの待合スペースとしても利用されるそうです。
また、丹波山村は村名に「山」と入っているだけあり、村の97%は森林という土地。この新庁舎のすぐ裏側、北の方角にあたる位置にも山があり、木造と鉄筋コンクリート造を組み合わせて設計された新庁舎のゆるやかな屋根の傾斜は、 新庁舎の裏にそびえたつ山と丹波山村の街を繋ぐ役割を担っています。山側から新庁舎を見下ろしたとき、山ー新庁舎ー丹波山の街をゆるやかに繋いでいるように見せるため、普通は一つの平面で構成される屋根が、わざと幾重にも重ねられているのだとか。
広々空間な内部に潜入!
新庁舎に一歩足を踏み入れてみると、今度はその解放感に驚かされるでしょう。新庁舎の一階は役場機能を担っており、各種手続きは一階のカウンターですべて行えるように構想されました。カウンターの向こう側には村の職員さんたちがお仕事をしている様子も見えます。一階を散策していると「それ、好きなだけ持って行って~!」と気さくに声をかけていただき、カウンター横に置いてあったマリーゴールドの種を頂く場面も。
二階に上がる階段の脇では丹波山村のマスコットキャラクター、タバスキーもお出迎えしてくれます。
二階に上がってすぐに広々とした「大会議室」が登場。この大会議室、実は6名の村の議員さんたちが議場として使用することもあるそうです。他の市区町村では議会を開催する議場と役場を別々に建設することが多いですが、丹波山村ではこうして併設してしまうことでコスト削減や行政機能のコンパクト化も図っているのだとか。私たちが新庁舎を訪れた日には大会議室の仕切りが使用されていましたが、普段誰も使用していない時は仕切りをしまい、開放感のある空間を楽しむことができるようです。
その他にも二階には小会議スペースや「図書コーナー」が設置されています。これらのスペースは住民の誰もが気軽に使えるように構想・設計されたもので、図書コーナーには子ども向けの本やおもちゃがたくさん置いてありました。
また、二階の天井はやや低めに設計されているため、一階や外部から見るよりも木造×鉄筋コンクリート造の壮麗な設計構造が見えやすくなっています。新庁舎はその構造のほとんどがむき出しになっているため、どこから見ても美しいように木材同士の組み合わさっている部分や異素材の接合部分など細かな箇所が丁寧に設計・施工されているそうです。新庁舎を訪れた際はぜひチェックしてみてください!
丹波山村新庁舎が担う役割
ここまで丹波山村新庁舎の外観や内観の魅力を紹介してきましたが、この新庁舎は村において一体どのような役割を担っているのでしょうか。
第一に、村のにぎわいを取り戻す拠点となることです。旧庁舎から約500m離れたこの場所は、古くから丹波山村のメイン通りとして栄えてきた道路沿いに位置し、東京からのバスの終着点にもなっています。しかし建設計画が持ち上がった当初、この周辺は活気がなくなり、現在のようにTABA CAFEなどのPR拠点もありませんでした。そこで、新庁舎を外観・機能の両面で画期的なものにし、村を盛り上げようという動きが生まれたのです。
第二に、発災時の安全な拠点となることです。丹波山村は土砂災害の経験が多く、災害時の拠点が必要とされていました。築50年を迎えていた旧庁舎は耐震性の面からも建て替えが不可欠であり、新庁舎は防災拠点としての機能を備えています。鉄筋コンクリート基壇内には執務室、サーバー室、備蓄倉庫など基幹機能が集約され、万一の事態に備えた設計が施されています。
第三に、人々の生活のよりどころとなることです。村の豊富な木材を活用し、木のぬくもりを感じられるデザインを採用。二階には子ども連れでも気軽に訪れられるようおもちゃを置くなど、住民が安心して集える工夫が随所に盛り込まれています。
このほかにも環境への配慮や役場としての機能性など、複合的な機能を果たすように設計が進められ、現在の新庁舎が完成しました。丹波山村新庁舎は村においてたくさんの役割を担っているのですね…!
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地方創生と丹波山村新庁舎

新庁舎の近くを探すとタバスキーに会えるかも
私自身、実習で訪問するまでは丹波山村に対して「人がいない」「寂れた場所が多い」「問題を多く抱えた地方」というマイナスな印象をたくさん持っていました。ところが、一回目の実習で現地を訪れた際に、新庁舎の先進的なデザインや温かみのある空間に触れ、丹波山村に抱いていたイメージは大きく変わりました。その外観や素敵な団らんの場を見ると、「こんな役場がうちの地元にもあればいいのに」と羨ましく思うほどでした。
今回、丹波山村新庁舎を訪れたことで、「地方には確かに解決すべき課題が残されているが、一つひとつの改善の積み重ねもまた着実に行われている」という事実に気が付きました。実習をサポートしてくださった、丹波山村に住む猟師の保坂さんや、空き家問題解決に励む梅原さんからも、「やるべきことを一つずつやっている」という言葉を聞きました。新庁舎の建設、一匹の鹿の利活用、一件の空き家の清掃作業ーこうした小さな取り組みを一つずつ積み重ねることが、将来的に地方創生を実現するのだと思います。
都心に住む私たちは、地方に対して「もっとこうしたらいいのに」「なんでこうしないの」と多くのアイディアを思いつきます。しかし、実際に現地を訪れてみると、実は既に活性化していた部分、土地の荒廃を食い止めようと努力する住民、都心にはない街づくりの工夫など、数多くの発見があります。
丹波山村新庁舎は、地方創生の可能性を示す象徴的な存在です。小さな村だからこそ挑戦できる工夫や取り組みがあり、その積み重ねが地域の未来を形づくっていくのではないでしょうか。
みなさんもぜひ、自分の足で現地を訪れ、そんな新発見をしてみてください!
参考文献
japan-architects.com、「丹波山村新庁舎」(最終閲覧2025年12月16日)
URL:https://www.world-architects.com/en/architecture-news/gong-gong-shi-she/nha-tabayama-cityhall
太陽工業株式会社、「太陽工業コラム 丹波山村新庁舎を元請受注、峠道や巨石を乗り越え、村民と創る新たな歴史。」(最終閲覧2025年12月16日)
URL:https://www.taiyokogyo.co.jp/makmax_plus/15168/
丹波山村役場、「丹波山新庁舎建設事業」(最終閲覧2025年12月16日)
URL:https://www.vill.tabayama.yamanashi.jp/gyousei/2021-0907-1435-1.html
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