実習科目「狩猟と地域おこしボランティア」では、ボランティア活動として「山梨県丹波山村の魅力を発信する」活動をしています。
丹波山村は、人口500人の小さな村ながら、猟師さんが30人もいて狩猟文化が根づいています。雄大な山々に囲まれた自然豊かな村での活動から、大学生は、どんな魅力を発見したのでしょうか?
「大学生の視点」を大切に、観光では見えてこない「実習科目活動だからこそ見えた」丹波山村を紹介しています。ぜひご覧ください。
【正課の取組】体験的学習科目「狩猟と地域おこしボランティア」─ 2025年度春学期
第1回かつて子どもだったあなたへ。
童心に返らせる!?丹波山村名物、「日本一のローラーすべり台」
政治経済学部 4 年 小町優奈
丹波山村へ実習授業に向かう早朝の電車の中、「日本一長い!(時もあった)ローラーすべり台」という文章が私の目に飛び込んできた。
本授業の Instagram を開き、過去の履修生が投稿した丹波山村レポートを読んでいた際に、この文言を見つけたのだ。

Instagram「丹波山村×早稲田大学 WAVOC」2024 年 6 月 20 日の投稿
この投稿によると、過去履修生の皆さんは昼食休憩の時間に大急ぎで丹波山名物のローラーすべり台に乗ってきたらしい。レポートの文章からも楽しそうな空気が伝わってきた。正直な話をすると、私は丹波山村にそんなレジャー施設があるとは思ってもいなかった。丹波山村は人口約 500 人の村と聞いていたため、当初はどこか寂しく廃れたイメージを勝手に抱いてしまっていたのだろう。
そのため、この日は遊ぶことなく真剣に丹波山村の地域貢献と向き合おうと誰よりも真面目な気持ちで朝の電車に揺られていたのだ。
そんな私の真面目な気持ちはこの投稿を見たことで、ワクワクに塗り替えられていった。
「今日はローラーすべり台にも乗れるかもしれない」
期待を密かに抱きながら、私の丹波山実習はスタートした。

ローラーすべり台のスタート地点
丹波山に到着し、今回の実習のメンバーが集合すると、現地のコーディネーター保坂さんが「今日、丹波山の何を楽しみにしてきた?」と皆に尋ねてくださった。そこで私が意気揚々と「ローラーすべり台が楽しみだ」と答えたところ、保坂さんのご厚意により、丹波山を散策する時間の最後にローラーすべり台にも乗らせていただけることとなった。思わずガッツポーズをしてしまった。
ローラーすべり台の料金は 1 日 400 円。400 円支払えば、その日はこのすべり台で遊び放題らしい。
受付の方からローラーすべり台のレクチャーをたっぷりと受け、着用必須の軍手とお尻に敷くボードを受け取る。準備完了となったところで、みんなで和気あいあいとすべり台のスタート地点へ向かった。

丹波山村の自然
丹波山村のローラーすべり台は山の中にある。
長さ 247 メートル高低差 42 メートルのローラーすべり台。スタート地点からすべるには、当然だがまず 42m を自力で登らなければならない。皆で列になって、ハイキング気分で頂上を目指す。
スタート地点である天守閣まで登ると、周囲は草木が鬱蒼と茂り、眼下には丹波山の村の景色が広がっていて、まるで自分が丹波山の自然にすっぽり包まれたような感覚になった。こんな自然豊かな場所ですべり台を楽しむなんて贅沢な時間だと、心が躍る。
このすべり台は、1 人で滑るよりも、ボードを連結させて複数人で滑った方が、重さが増してスピードが出るらしい。ボードを連結させるために、前の人の尻で後ろの人のボードを押さえ、後ろの人は前の人の肩をつかむ。原始的な方法でボードを連結できる。
調子に乗った私たちは、7 人と 8 人の 2 グループに分かれ、連結して滑ることに決めた。
ローラーすべり台のコースは山の中を通っていく。日本一長かった時期もあるこのすべり台は、なんと長さ247メートル、高低差42メートル。一気に下れば2分30秒のスリル満点なすべり台だ。
スタート地点で私たちは皆で滑降部に移り、ボードに座って前の人の肩をつかむ。一人二人と連結していく度に、ローラー特有のがらがらという音が鳴る。その音がジェットコースターがゆっくりと昇る時の音と似ていて、急降下のローラーすべり台への恐怖心を煽られた。
皆のボードの連結が完了すると、ようやく皆でそろそろとすべり始める。
最初はそこまで傾斜がきつくなく、気持ちよい風を感じながら、丹波山の木々の間をすべりおりた。近くに生えている木は簡単に手が届きそうなほど手前まで迫っており、目の先には青空の中そびえたつ山々が見える。新緑が美しい時期で、どの方向に目を向けても都心では味わえない自然が広がっていて、自分の心がそんな丹波山の自然に溶け込んでいくような心地になった。
このローラーすべり台は、最初から最後までただ同じ景色をすべり続けるのではなく、途中には風情のある橋や小さなトンネルをくぐり抜けたり、大きなカーブを通るゾーンもある。
滑降部をすべっているだけでころころと違った丹波山の景色を見せてくれるため、「まるで丹波山の自然をトロッコに乗って冒険しているようだ」と感じたことをよく覚えている。
(実際にはトロッコに乗っているのではなく、ビート版のようなボードに座っているだけなのだが…)
そんなことを考えながらローラーすべり台を楽しんでいると、終盤で突然、私たちは猛スピードで落ちていった。傾斜のきついところに突入したのだ。大人数でボードを連結させた甲斐があり、先程までとは比べ物にならないくらい高速でガタガタと鳴るローラーの上を、風を切りながら猛スピードですべり降りた。この時は皆ただ悲鳴をあげるしかなく、まさにジェットコースターに乗っている気分。ローラーすべり台のゴールまですべりきった際は、その猛スピードでゴールに突っ込んだがために、みんなスピードに耐え切れず転げていた。一緒にすべり台に乗ってくださった本講義の准教授も思いっきり転げながら爆笑していた。
その姿を見た私たちも、さらに童心に返って笑い転げた。
時間の都合で私たちは 1 回しかすべることができなかったが、「もう 1 回乗りたい」「どうにかもう 1 回のって帰る時間をつくれないか」などととても盛り上がり、皆丹波山村のローラーすべり台の虜になってしまった。

多くの人々に愛される丹波山村のローラーすべり台
しかし、遊んでいるだけではないのが私たちの実習だ。この場をお借りして、このすべり台が地域で果たす役割について、考えようと思う。
丹波山村のローラーすべり台は平成 2 年にふるさと創生事業としてつくられた、村営の施設である。
実際に自分の足で丹波山村に行き、私は丹波山村の地域創生の 1 つの入り口として、このすべり台は大きな役割を果たしているように感じた。
まずこのローラーすべり台は、丹波山村に対してカジュアルなイメージを抱かせるトリガーとして地域に貢献しているのではいかと考える。ローラーすべり台は分かりやすく「楽しい」施設だ。利用者も間違いなく、「ローラーすべり台は楽しかった」と感じるだろう。そのため、これを利用した子供も大人も「丹波山村は楽しかった」という印象を抱きやすくなるのではないだろうか。
他の記事でも紹介されているように、丹波山村には沢山の魅力がある。
だが利用者を童心に返らせ、思うままに悲鳴や歓声をあげさせる、そんなコンテンツはローラーすべり台の他になかなか無い。すべり台は、私たちがみな幼少期に何度もすべった遊具。
もはや幼少期の共通語と言ってもいいほど、誰もが楽しんできた遊具だ。それを長さ 247 メートル、高低差 42 メートルの超大規模で楽しめる丹波山村のローラーすべり台は、子どもにとっても、かつて子どもだった大人にとっても、ロマンを感じさせる。
実際に大学生の私たち受講生はもちろん、同行した准教授も子供じみた歓声をあげていたのだ。童心に返って、木々の間を猛スピードですべり降りる、その楽しさを誰もが純粋に楽しめるこのすべり台は、改めて至高の施設だと思う。私自身もこのアトラクションを体験したからこそ、丹波山での実習が「貴重な学びを得たな~」という感想に終わらず、「とても楽しかったな~また来たいな~」と愛着を覚えた。
さらにこのすべり台は、ただ単純に楽しい思い出を利用者に与えるのではなく、「丹波山での楽しい思い出」を与えられることがポイントだと考える。このローラーすべり台はすべり台として楽しいのはもちろんだが、丹波山の豊かな景観を活用した「自然の中のアトラクション」としての魅力を持つ。
これを利用した人々は、ただ「ローラーすべり台」というもの自体が好きになるだけではなく、丹波山の美しい自然を味わいながら風を切って一気にすべり降りる「丹波山のローラーすべり台」に対して愛着を覚えるだろう。
誰もが楽しめるローラーすべり台を入り口に、多くの人が丹波山をより好きになる、そんな効果がここにはあるのではないかと考えた。
この記事を読んでくださった大学生、大人の皆さんにはぜひ、丹波山のローラーすべり台に乗ってほしい。
かつて子どもだったあなたの幼心をくすぐるような施設が、ここにある。
*Instagram では動画でローラーすべり台を紹介しています。
https://www.instagram.com/p/DLl4inNCge5/
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