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ワボプロ活動報告「バンビが肉になったとき」(「狩り部」法学部1年 後藤歩さん)

バンビが肉になったとき

法学部1年 後藤 歩

私たち狩り部は、千葉県鴨川市で農作物をあらす獣害対策のお手伝いをしています。2回目の現地活動中に狩猟の指導をしてくださっている猟師さんの罠に運よく鹿がかかり、銃を使用した屠殺の現場に立ち会わせてもらいました。

斜面に仕掛けられた罠に若い雄鹿がかかっており、ワイヤーの巻き付いた前脚が千切れんばかりに飛び跳ねていました。ナイフで止めを刺すこともできるけれど、私たち学生のために銃猟の実演をしてくださいました。銃という生体の殺傷にしか使わない道具を初めて見て、とりあえず「暴発だけはしないでくれ……」と鹿とも獣害対策とも全然関係のないことをわたしは考え、あたふたしていました。

鹿が倒れる瞬間はほんの一瞬でした。猟師さんが銃を構える。ズドン!! ふとみるとさっきまで暴れていた鹿が下草に紛れて見えなくなっている。逆になんだかあっさりしていました。みんなで鹿の周りに集まり、罠を外し、トラックに積んで行きました。

驚いたのはそのあとでした。狩り部の仲間と話をしていて「猟師さんと猟犬の息がぴったりだった」という話題になり、「猟師さんが鹿を撃とうとした瞬間に、それまで鹿のすぐ側で吠えていた猟犬が、弾に当たらないようにさっと飛び退いた」と誰かが言いました。そんなことがあったっけ? スマホの映像を見直したら確かに映っていました。その瞬間、大きな銃声だけに気を取られ、鹿が打たれる様子を私は全く覚えていなかったことに気づきました。

私は今まで、屠殺や害獣の駆除など生物の命を奪うことについて、理解があるほうだと思っていました。「鹿を殺すなんてかわいそう」よりも「(鹿を殺すことは、蚊やハエなどの)虫を叩き潰すようなものですよ」という猟師さんの言葉の方がよっぽど腑に落ちる正論だと思っていました。けれど、鹿が死ぬ瞬間は直視できなかったのです。

獣害対策は猟師や農家の方から国家の政策までいろいろなレベルで取り組まれています。私は、どうやったら狩猟人口の減少や高齢化を止められるか、助成金以外に自治体ができることはないのか、などを少しでも見たくて狩り部に入りました。でも今はそれ以前に、狩猟とは何か、人伝えではない現実を少しでも見ることから始めています。狩り部で目にした生々しい実態を踏まえて日本の狩猟のありようを考えていきたいと思いました。

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