The Hirayama Ikuo Volunteer Center (WAVOC) 早稲田大学 平山郁夫記念ボランティアセンター(WAVOC)

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夢は逃げない、逃げるのはいつも自分だ。 加藤君の場合

加藤一紀 KATOH Ikki

加藤一紀
KATOH Ikki

PROFILE

私立立教新座高等学校出身。防災サークルを経て、2007年に早稲田災害対策学生チーム(早稲田レスキュー)立上げる。2011年東日本大震災復興支援においてはWAVOC災害ボランティアの事前講習会を担当する。現在創造理工学研究科博士課程で東京湾臨海部の液状化対策に関して研究中。

参加したWAVOCの科目・プロジェクト

  • 早稲田災害対策学生チーム(早稲田レスキュー)
  • 東日本大震災復興支援ボランティア

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1.「熱しにくく冷めにくく」

中学時代は熱しやすく冷めにくい性格だったので、やりたいことが多くて時間が足りないと思っていました。やりたいことが増える一方で、一度始めたことはなかなかやめられなかったのでどんどん時間が足りなくなっていきました。そのため意味のわからないことや、十分に納得できないことはやりたくないと思うようになりました。例えば英語は日本にいるのだから必要がないと思ってやりませんでしたし、時間を費やす本を読むという行為が嫌いでした。高校に進学して、ますます何かに強い興味を持つようなことがなくなり、徐々に「熱しにくく」なっていきました。しかし担任の先生が口にしていた「夢は逃げない、逃げるのはいつも自分だ。」という言葉が強く心に残っており、「冷めにくい」という性格は残りました。それと同時に、将来何かに取り組むことになったら、中途半端で終わらせたくないなという思いを持つようになりました。

2.防災活動への入口、「逃げるのはいつも自分」の強迫観念

とはいえ、普段目にする建物や交通・エネルギー施設には関心があったので、人々の日常生活を支える技術が学べるという創造理工学部に進学しました。そこで出会った先輩から、「2004年に発生したスマトラ沖の津波被害を受けた子どもが、防災教育支援に来た日本の専門家に対して『どうしてもっと早く教えてくれなかったの?教わっていれば、友だちは助かったのに。』という質問をしていた」という話を聞きます。知らないことで、失われる命があるということと、自然災害を多く経験し防災知識を持っている私たちには出来ることがあるということを知りました。これがきっかけとなり、大学1年の冬に防災サークルに加入し、防災教育を通して日常生活を脅かす災害について取り組むようになりました。

大分県の小学4年生への出前授業が、私の初めての主担当活動でした。わざわざ大分県まで行くこと、子ども達から時間をもらうことをふまえると、自分と相手双方にとって、意味のある時間を提供したいと考えて準備を万全に行いました。活動は好評で、私自身も聞き手の立場に立って考え、十分に準備することの重要性を学びました。活動は一定の成果をあげていきながらも、同様の活動に励む京大生が阪神・淡路大震災での実体験に基づいた教訓を伝えようという強いモチベーションを持っているのに対し、震災経験の無い早大生が、交通費や教材製作費を自費で賄いながら、ただ単に「防災は大切だ」と訴えることへの疑問や違和感を抱くようになります。しかしながら前述の担任の先生の言葉もあり、ここで立ち止まることはすなわち、逃げることではないかという思いもあって、必死に活動に取り組みました。ただその思いは自分を追い詰めるばかりで、空回りの日々がつづきます。

3.伝えること、の意味を考え実践する

story_05_01「被災経験のない自分たちだからこそ、何を知らなくてはならないのか?何を伝えなくてはならないのか?何が足りないのか?どうすれば上手くいくのか?」全く答えが見出せませんでした。そんな折、自分を助けてくれたのは、これまでしてきたこととは、逆のことでした。それは、より深く広く関心を持つということです。様々な物事を参考にして、この状況を何とかしたいと思うようになり、再び熱しやすくなっていったのです。多様な価値観にふれたいと思うようになり多くの人に会いにいき、本からは得られないような生きた言葉や知識を得ることで、自分や八方塞がりの状況を少しずつ変えていけるような術が身についていく実感がありました。

そして自ら『早稲田レスキュー』を立ち上げ、自らも応急手当などの技術や防災知識を積極的に習得すること、早稲田という地域に根差し継続的に活動することが大事だと考えたからでした。学びを請えば意外と防災の世界はせまく、様々なつながりを得ることができました。その中のつながりが、東日本大震災において、2011年4月上旬の事前講習会・早稲田大学先遣隊派遣に繋がります。考えれば方法があることを、身をもって知り、防災を多方面からみることの重要性を感じました。こうした活動が、将来大地震が発生した際に、過去の教訓を活かした行動を少しでも多くの人がとることにつながればと期待しております。

4.研究の意味

私は今、ボランティア活動とは別に土木技術分野の研究活動としての防災、大雑把に言うと産業・エネルギー施設などを地震から防護するための研究に取り組んでいます。技術としての防災は、想定している災害(外力)に対しては効果を発揮しますが、それでも無被害を100%保証することは難しいと考えています。”最大クラスの災害”というものは青天井になってしまっており、費用対効果の問題もありますが、技術での対応が一層困難な状況となっています。だからこそ社会がどこまで技術で備えるのかという選択をする際に、技術情報を的確に伝えることが土木技術者の使命として重要になってきていると考えています。私は将来、仕事として防災研究に携わる予定です。技術が人の命や財産に大きな影響を与えるので責任を持って行う必要があります。ボランティアとしての”防災”から、仕事としての”防災”にシフトするとき、責任はより重くなった気がします。しかしボランティア活動があったからこそ一層防災が大事だと思えるのです。今後も学んだことを活かして、逃げないで頑張りたいと考えています。

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