The Hirayama Ikuo Volunteer Center (WAVOC) 早稲田大学 平山郁夫記念ボランティアセンター(WAVOC)

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フグプロ活動備忘録!“おいしい”から見えた世界 ~「HONGKONG DINING 彩」編~

フグプロ活動備忘録!
“おいしい”から見えた世界~「HONGKONG DINING 彩」編~

メンバー:M.F / H.H / A.N / Y.Y / M.K / H.S

私たちはWAVOCに所属するボランティアプロジェクト、Food Glocal Project(通称フグプロ) です。“食から始めるグローカル社会共創~「おいしい!」からつながる世界とわたし~”をスローガンに2021年秋からスタートしました。誰にとっても身近な存在である「食」を通して、グローバルな問題をローカルな視点から解決することを目標に活動しています。

ローカルな視点を探るため、まずは都内にある在日外国人の方が働く飲食店にインタビューを行いました。今回から4回に渡り、対談で得た現場の声をレポート形式でお届けします。ぜひ、読んでみてください!

■訪ねたお店

私たちが今回訪れた飲食店は、東京都富士見ヶ丘にある「HONGKONG DINING 彩」。2013年にオープンした香港料理のお店だ。メニューが豊富な上、安価で本場の香港料理が楽しめると人気がある。東京都富士見ヶ丘にある「HONG KONG DINING 彩」は香港料理、中国の南部の広東料理をメインとし、数多くのメニューを提供している。店の名前にある”彩”は「料理の彩り」を意味しているという。 

訪問先:東京都杉並区高井戸西2丁目10−9 ノース メイン ビル 1F

■訪れた際のお店の印象

お店に伺うと林さんは明るく出迎えてくださった。木を基調とした店内は、アットホームな雰囲気が漂っていた。また、お店は清潔感がありコロナ対策もしっかりと施されていた。土日は通し営業をしているということで、店内には遅めのランチを楽しむお客さんや食事を終えてお茶とともに談笑するお客さんが多くおり、地元の方に愛されるお店だということが感じられた。「地元にあったら通いたい!」そんな風に思うお店だった。

■インタビューを受けてくださった方

Profile
林擁鋒(リン・ヨウホウ) さん
出身:中国・福建省  来日:20年

店のオーナー兼料理長。広東省の料理専門学校に通い、卒業後は福建省にあるホテル「成龍大酒店」で更なる料理経験を積む。2002年に初めて来日し、日本語学校と経理専門学校を卒業。千葉県の広東料理店でのアルバイト経験を経て、2013年に「HONGKONG DINING 彩」をオープン。

元々日本に来ることは考えていなかったが、親戚や自分の知り合いで日本に行く人が多く、彼らの影響を受け、日本に興味を持ったという。

趣味はボウリングで、休日は子どもを連れてよくボウリングに行くそうだ。しかし最近は、コロナの影響もあり、キャンプにハマっているという。

■インタビュー

[言語]
ー日本語はどのように習得されたのですか?
ー日本語学校には通っていましたが、自分の周りの親戚や知り合いで日本に来ていた人が多かったこともあり、彼らとの会話で日本語を身につけました。動詞の活用と敬語は今のお店を経営しながら身につけました。

[文化]
ーカルチャーショックはありましたか?
ー日本は挨拶・サービス・マナーが良いと感じます。日本人は電車やバスの中で静かに過ごすけど、中国では電話をしたり大きな声で喋ります。また、日本人は時間に正確であることが当たり前だと思っていますね。自分が中国に住んでいたのは何年も前なので当時の中国との比較になりますが、まず日本人の方が時間に正確です。
 ーそれから、日本は中国よりもゴミの分別が厳格であることに最初は驚きました。今はもう慣れました。

[行政手続き面]
ー日本で働く上で、困ったことはありますか?
ー就労については、日本語が話せなければ雇用されることは難しいと思います。逆に日本語が上手であれば難しくないと感じます。自分の店で働いている中国人の従業員はみんな正社員で、中国で長年料理の修行を積んできた人たちがWeChat(中国版LINEのようなアプリ)などを通じた友達の紹介で就職しました。

ー永住権の取得など、日本の行政手続きは複雑だと聞きますが、実際にどう感じられましたか?
ー永住権の取得は、自分は二回目の申請で許可されました。一回目は、驚いたことに、保険料の支払いが一度だけ遅れたことを理由に許可が降りず厳しかった。一年後に再申請し、10ヶ月後にようやく取得しました。

ーコロナ禍で、苦労したことはありますか?
ー政府のコロナ対策は良いと思いますよ。政府の補助金があったので休業はせずに済み、時短営業でした。

 [過去の自分に]
ー最後に、過去に戻れるなら自分にアドバイスしたいことなどはありますか?
ーたくさんの苦労をしてきたけど、後悔はしていないです。ただ、強いて言うならもう少し語学を勉強することと、若い頃、もっといろんなところへ旅行しに行きたかったですね。

■インタビューから見えた日本の姿及び中国との違い

「日本人は親切」という印象が強いようだ。興味深かったのは、中国と日本の警察の印象についての違いだ。中国では、警察はえらい人たち、という印象が強いそうだが、日本の警察はみんな親切だと言う。以前コロナ禍でお店に「中国人は国へ帰れ」といった誹謗中傷の電話がかかってきたそうだ。そうしたトラブル電話についても、相談したら優しく対応してくれたと述べていた。また、挨拶や時間厳守といった日本人らしいマナーについても日本の良いところとして挙げていた。

一方で、日本人は言いたいことをはっきり言わないという印象を持っているようだ。日本人固有、”気遣い”、”察し”などといったものが影響しているのだろうか。また、林さんは初めて日本に来る前、「日本は先進国だから多くの地域が発展していて都心のような暮らしをしている」と思っていた。しかし、訪ねた場所は都心からは離れた場所だったため、田んぼが一面に広がるような風景だったと言う。それを見たときには少しがっかりというか、期待外れの思いがあったと語った。

■感想・考察

メンバー①
「日本人は優しい」という海外からの声は多くある。これは日本人の”他者への気配り”や”礼儀の正しさ”などがそうした印象を作り上げているのだろう。また、”他者への気配り”という点が、バスや電車など街中でのマナーの良さに繋がっていると考えられる。こうした日本への良い印象は、今後も守り続けたい。

一方で日本人に足りない点は、自分たちとは違った価値観や考え方に対する寛容性の低さではないかと考える。林さんも述べた通り、中国人に対する偏見もその一つだ。他国の人の言動で引っかかる点があると、たちまち悪い印象で捉えてしまう。

グローバル化が進み、今後はさらに多様性への理解が求められる。自分たちとは異なる習慣や思想、価値観をもった人々に対して、”良い/悪い”で受け取るのではなく、”多様性のうちの一つ”として捉えていく。それを肝に銘じ、今後も多くの来日された方々と交流し、相互理解を深めていきたい。

メンバー②
今回のインタビューは、直接顔を合わせて話す大切さがわかった点でも、得られたものは大きいと感じる。林さんが感じてこられた「日本」を聞くことで、自分の視野だけでは見落としてしまう課題が見えたり、反対に大きな課題ではないかと懸念していたことが、彼らからするとそうでもなかったり、現場の様子を知ることができた。林さんのように、苦労はしたけれど日本にきたことは後悔していないと振り返ることができる日本になってほしいと思う。フグプロの活動の中で解決したいと思う問題が多文化共存であれ、環境問題であれ、自身の想像や流れてきた情報に頼りすぎないというのは今後も忘れてはならない視点だと思う。まずは現場の人とたくさん話して、伝えたいと思っていることを自分の目・耳で知ることを忘れずに今後も活動していきたい。

メンバー③
グローバル化が急速に進み、日本に住む外国人が増加している中で、特定の外国人の方に対する反発的な態度が少なからず残っていることは悲しい事実だ。他国との国際情勢がそのような態度に影響しているのかもしれないが、だからといって何も悪いことをしていない人に対して脅迫的な言葉や冷たい視線を浴びせるのは間違っている。国という大きな枠組みから相手を見るのではなく、一個人として付き合っていかなければならない。相手がどこの国の人であれ、協調して生きていけるような社会になることを願っている。

メンバー④
インタビューを通して国という枠で人をひとくくりにしてはいけないということを強く感じた。林さんが心無い言葉を浴びせられたとおっしゃっていたが、このような言葉を発した人が何を体験したのかは分からないが少なくとも人を国という枠組みにあてはめている。枠組みにあてはめてしまうということはその人の人柄や性格を知る前にシャットアウトしてしまうことになる。異なるバックグラウンドを持つ人と話し、交流することは、いままで気づかなかった新たな視点が得られる機会となる。日本の良い面、悪い面は日本にいるだけでは気が付かない。違う文化・環境を知っている人だからこその気づきがある。今回、林さんのお話を聞くまで日本人の挨拶が気持ちよく受け止められているということは知らなかった。勝手に日本人は内向的で挨拶ができていないイメージを持たれているのではないかと思っていただけにとてもうれしい気持ちになった。もしかすると違う文化・環境で育った人から聞くと違う返答がかえってくるかもしれない。今後もフグプロの活動をとおして様々な方にお話を聞くことができたのならば、少しずつ日本の輪郭が浮かび上がって来るのではないかと感じた。ひとりひとりに向き合って対話を続けていきたい。

メンバー⑤
今回のインタビューを受けて、自分の当たり前を改めて捉え直すことの興味深さと、差別問題の大きく二点を改めて考えさせられた。林さんのお話のなかで、日本人は挨拶がしっかりしていたり、警察の対応が親切であったりするという内容が触れられており、それは自分ではなかなか気づかない「当たり前」であったので、それに気が付いたのが大変興味深い。また、林さんは「中国人への偏見を持たないでほしい」というメッセージも伝えて下さった。私はこの現在進行形で続いている差別問題に対しては、今回私たちがじっくりお話を伺ったように、様々な場面でまずは一個人として一人一人の背景や考え方を見つめてみることから始めるべきであると考える。今回のインタビューを活かし、まずは知る姿勢を大切にしたい。

メンバー⑥
在日外国人の人口が増えるにつれ、林さんのように日本に拠点を置き、ビジネスを営む在日外国人の数も年々多くなっているようだ。しかし、どれほどの日本人がそのような外国人を身近な存在として捉えているだろうか。今回、林さんのおっしゃる日本人のイメージからは日本社会に外国人への一方的なバイアスが一定数存在することがうかがえた。また同時に、林さんとご近所の方とのエピソードからは「食」がそんな在日外国人と地域コミュニティ間の架け橋にもなりうる、ということも感じさせられた。
このインタビューはフグプロのテーマの一大要素でもある、「食」、そして在日外国人の方々の視点を通して日本社会を見つめ直す良い機会であったと思う。
今後もこのような機会を通して、潜在的な国内のグローバルな課題について見識を深めていきたい。

このインタビューに関して、さらに詳しく知りたい方はHPをご覧ください。
〈フグプロホームページ https://www.foodglocalproject.com/

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