【正課の取組】体験的学習科目「狩猟と地域おこしボランティア」
─ 2025年度秋学期 ─ 第1回 狩猟は目的か、手段か ~ 丹波山村で考えた、ハンターと地方創生 ~
政治経済学部4年 北郷天馬
近年、メディアやSNSを中心に「狩猟ブーム」という言葉を見かけるようになった。特に若者や女性の狩猟免許取得が増えている点は大きく注目されている。しかし、地方の課題が語られる際に人口減少が主に取り上げられるように、近年は熊の出没増加に象徴される「ハンター不足」も深刻さを増している。では、ハンターという文脈から地方にどのような貢献ができるのだろうか。
山梨県丹波山村でハンターをしている保坂さんに話を伺うと、狩猟ブームの実態が決して単純な構図ではないことが見えてきた。
まず、若者の免許取得者が増えている現状について、保坂さんは「狩猟をやってみたい人が増えているだけで、実際に狩猟を行う人が増えているわけではない」と指摘する。いわゆる“ペーパーハンター”が多いのが実情だ。都市部に住む人が頻繁に山へ通うのは現実的に難しいし、狩猟は免許を取ればすぐに獲物が獲れるわけではない。山に通って動物の足跡や糞から習性を学び、銃を使うなら射撃練習も欠かせない。継続的な時間投資が必要なため、免許保有者の多くが狩猟まで踏み込めていない。保坂さんも、週末だけ訪れる若者ハンターについて「ハンターとしては役に立たない」と明言する。むしろ保坂さん自身は、ハンターというより“丹波山村の住民”として地域と関わっている印象を受けた。
では、ハンターは地方創生にどのように関わり得るのか。しばしば「ハンターが増えれば獣害対策になり、地域が救われる」という期待が語られるが、それだけでは本質的な解決にはつながりにくい。保坂さんは「ハンティングばかりしていては地方創生は実現しない」と話す。地域に本当に必要なのは、「狩猟を趣味として続けながら、地方で新しい産業を生み出す人」だという。狩猟はあくまで手段であり、それを軸に地域に新しい価値や仕事をつくる人材こそが、地方創生につながるという視点だ。
とはいえ、いきなり移住して地域に飛び込むのは若者にとって簡単ではない。では、若者は地域に何を提供できるのか。保坂さんは「地域に必要なのはアイデアよりも手数だ」と語る。遠くから提案をするよりも、継続的に地域の負担を減らす行動のほうが、はるかに価値を生みやすい。今回のボランティア活動もその一例だ。
最後に、丹波山村の狩猟学校についても尋ねたが、保坂さんは「文化継承のためではなく、まずは村に足を運んでもらう体験の場をつくりたかった」と話す。狩猟学校は、狩猟技術の伝達以上に“地域と外部をつなぐ装置”として機能しており、これもまた「狩猟を手段として地域の価値をつくる」という丹波山村の姿勢を象徴している。今回の実習を通じて見えてきたのは、狩猟と地方創生を「ハンターが増えれば地域が良くなる」といった単純な構図で語れないという現実である。地域に根ざし、狩猟をひとつの手段として活用しながら、新しい産業を生み出す人こそが求められている。そしてその背景には、地域と向き合う覚悟と、継続して関わる“手数”の必要性がある。
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