【正課の取組】「東日本大震災のフィールドワーク」履修生による報告書
平山郁夫記念ボランティアセンター講師 筒井 久美子
「東日本大震災のフィールドワーク」(GEC設置科目)では、東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県陸前高田市を訪れ、地域住民の方にインタビューを実施、履修生が各自の問題関心にもとづいて問いを設定し、報告書を作成していきます。
今年度の報告書が完成しましたので、是非、ご覧ください。インタビュー協力者の方の語りをもとに、履修生がお互いにコメントし合い、書き直しを繰り返して、書き上げたものです。
夏に陸前高田を訪れた際には、全員で高田松原津波復興祈念公園のパークガイドの方や、ご自身の命を救った建物を個人の力で震災遺構として保存している方にもお話を伺いました。また、陸前高田の伝統的なお祭りである七夕祭りにかかわる機会もいただきました。
ご協力いただいたみなさまに、改めて、感謝申し上げます。
【「東日本大震災のフィールドワーク」報告書】
※インタビュー協力者の方には掲載許可をいただいています。
◇岡庭佑美(人間科学部4年)
「東日本大震災後の「鎮魂」の営みとその意義―普門寺「五百羅漢像」に込められた思いとは―」
亡くなった方に「芸術作品を作って捧げる」という行為に関心をもつ岡庭さんは、震災後、羅漢像を彫るアートプロジェクトに場所を提供したお寺の住職の方にインタビューをお願いしました。心理療法として語られることが多いアートプロジェクトについて、作品制作を通して、生き残った方が亡くなった方とどのように向き合っているのかという視点でまとめた意欲作です。
◇堀翔貴(法学部4年)
「地域の復興・振興を見る視点の在り方~地域と個人の関係性をいかに捉えるべきか~」
堀さんは、陸前高田市で移住相談などを行っている団体の方にインタビューをお願いしました。「人が減ってったとしても、そこに住んでる人たちが幸せなんだったらそれで良くないですか」というその方の語りに惹かれ、「地域のための個人」ではなく「個人のための地域」という考え方に迫っています。
◇吉澤諒泰(法学部4年)
「地域住⺠が消防に参加する意義 ―東⽇本⼤震災を経験した消防団員の「語り」を通して―」
吉澤さんは、自分自身が警察に就職することを見据え、発災時に緊急時対応を行った消防団員の方にインタビューをお願いしました。地域住民が消防団に参加する意義について、消防機能の面だけでなく、地域コミュニティの内外の人々とのつながりが生まれる場にもなっていることを明らかにしています。協力者の方は、発災時の壮絶な経験にも踏み込んでお話くださいました。
◇庄司迪太郎(人間科学部2年)
「困難とどう向き合うのか?―陸前高田のまちづくりから―」
庄司さんは、陸前高田でまちづくりに取り組む人々が、人口減少や自然災害といった「どうしようもない」事実にどのように向き合っているのかという問いを持って、陸前高田を訪れ、インタビューを行いました。しかし、当初から、この問いは自分自身の中でしっくり来ておらず、大学に戻ったあとも、陸前高田での経験や、インタビュー協力者の方の語りと改めて向き合いながら、自分が本当に問いたかったことを言葉にしようと格闘を続けました。報告書には格闘の過程が丁寧に記述されており、その先に、問いたかった問いとその答えを自分の言葉で捉えようとする様に、静かな感動を覚えてしまうような報告書になっています。