
橋田 宜長
HASHIDA Yoshitake
PROFILE
私立函館ラ・サール高等学校出身。2012年政治経済学部卒業。現在は岩手県遠野市にて競走馬育成業に携わっている。大学2年次に「持続可能な社会と市民の役割」を履修し、ヤップ島での自給自足の生活体験を通して「体感」「持続可能」は今でも本人のテーマとなっている。
参加したWAVOCの科目・プロジェクト
- 持続可能な社会と市民の役割
1.期待を胸に、早稲田へ
高校では、環境問題に取り組むカナダ人の先生の影響で、社会と英語が好きでした。多様な著名人を輩出しており、学生街の雰囲気も良い早稲田大学に第一志望として進学を決めます。大きな世界にとびこんで、たくさんの出逢いがあるのだと期待に胸をふくらませていました。しかし、実際は必修科目が多くて自動登録されている。当初学びたいと思っていたことが、教えてもらえない。進学の熱意や関心事から”ずれた”大学生活がはじまり、悶々とします
2.待っているだけでは、得られない
漠然と期待していた出逢い、教養を深める機会は自ら獲得しなければ実にならないのだと気づき、オープン教育センター提供科目を積極的に受講するようになります。「持続可能な社会と市民の役割」を履修し高野孝子先生と出逢い、ミクロネシア州のヤップ島で活動しました。ココナッツの木ひとつで洗剤から屋根まで作ってしまう暮らしと出会い、体感しなければ絶対に気付けない世の中の「事情」が可視化される感覚を覚えました。環境問題が、南北問題や国家間格差、その他の様々な問題と繋がっていることを感じ、新しい世界へのゲートが開いた気持ちでした。構造のレベルから、身の回りの人間関係のレベルまで、fairに見通す努力をしながら、物事を捉えようとする価値観が、自分の中に息づきはじめました。
3.行っておきたいところがたくさんある
息づいた価値観を育むために、”多様な国から見た世界地図を自分の中で描けるようになりたい”という思いをもち、出来るだけ旅をしました。結果的に在学中に6大陸全てを回りました。明確なビジョンもなく、ただ飛び込んでみたこともたくさんありましたが、「外国人」にならずに現場に溶け込んでみることを心がけていました。シンプルに好奇心で動いていた分、体力が追い付かず、生活リズムは崩れるし、長期休暇はほぼ海外にいるため、学内に友達ができない寂しさを感じることもありました。学んだことは言葉にしようと考え、そうした経験を基に早稲田大学国際協力論文賞に投稿し、優秀賞をいただきました。また、世界におけるイスラームの影響力の大きさを感じるようになり、UAEに交換留学しました。自分以外全員がイスラーム教徒という寮生活でしたが、ヤップ島で高野先生に教わった「体感し、自らの考え方をもつ」ということを意識しました。無二の友人が出来たと共に、今でも答えのでないことも、あります。
4.自分の論理、価値観をもとう
大学を経て、自分の決断に少しは自信をもつようになったかもしれません。社会に自分の価値観をただ従わせていってしまうのではなくて、自分の信じる価値観を社会で生かしていくための引き出しの多さが、自分らしく生きる上での価値と繋がっていると感じています。それは自分の言葉や行動で表していくしかないのかもしれないとも感じています。現在は「ものづくりをしたい」「技術を突き詰めていきたい」という気持ちがあり、馬づくりで世界に挑戦していく、という自分の幼い頃からの夢を再確認して強い競走馬をつくるべく試行錯誤する毎日。腰を痛めて苦しい時期もありましたが、自分を奮い立たせていく上で、在学中に得た失敗、迷い、悩みが自分を支えてくれています。ヤップ島では「持続可能」というキーワードを、環境問題の観点だけではなく、経済、地域、価値観など様々なヤップ島の「事情」から考え続けていました。多様な「事情」を踏まえて、自分の進みたい道を「持続可能」にしようとする志こそ、自分を前進させるエネルギーとなっています。