NASAが次世代遠赤外線宇宙望遠鏡「PRIMA」を選抜、日本の取り組みも新たな段階へ
宇宙の塵に隠された、惑星・星・銀河の誕生と成長の謎を解き明かす
情報提供
NASA(アメリカ航空宇宙局)は、遠赤外線(※1)宇宙望遠鏡計画「PRIMA(プリマ)」について、初期設計と技術開発を進める段階である「Phase B(フェーズB)」(※2)へ移すことを決定しました。これにより、PRIMAは2033年の打ち上げに向けて、計画をさらに具体化する段階に進みます。
日本の研究者も、2023年からPRIMAに関する科学面・技術面の検討を進めてきました。今回の決定を受け、日本でも将来の計画参加に向けた審査や手続きが進められる予定です。
本リリースは、広島大学、愛媛大学、東京大学、早稲田大学、東京都市大学、筑波大学、名古屋大学、筑波技術大学、国立天文台、理化学研究所による共同発表です。
PRIMA日本チームの活動は、国内のさまざまな大学・研究機関に所属する研究者によって支えられています。

PRIMA遠赤外線宇宙望遠鏡の想像図(Courtesy NASA/JPL-Caltech)
本発表のポイント
- NASAは、口径1.8 mの遠赤外線宇宙望遠鏡計画「PRIMA」を、初期設計と技術開発を進める「Phase B(フェーズB)」へ移すことを決定しました。
- 日本では2023年から、PRIMAへの参加を見据え、国内の研究者が科学面・技術面の検討を進めてきました。今後は、日本でもPRIMAへの正式参加に向けた審査や手続きが進められます。
- PRIMAは、人の目に見える光である可視光では見えにくい、宇宙の塵に隠れた場所を遠赤外線で観測し、惑星や星、銀河がどのように生まれ、成長してきたのかを明らかにすることを目指します。
概要
PRIMA(PRobe far-Infrared Mission for Astrophysics)は、遠赤外線を使って宇宙を調べるNASAの口径1.8 mの遠赤外線宇宙望遠鏡計画です。遠赤外線は、人の目に見える光よりも波長が長く、温度の低い宇宙の塵やガスを調べるのに適しています。一方、地球の大気に遮られやすいため、宇宙から観測することで、これまで詳しく見ることが難しかった天体や物質を調べることができるようになります。
日本では、2023年6月からPRIMAに関する組織的な活動が始まりました。2024年12月には、JAXA宇宙科学研究所(ISAS)のワーキンググループが発足し、国内の研究者が科学面と技術面の検討を進めるとともに、PRIMAのさまざまな研究活動に参加してきました。
これまでのPhase Aでは、ミッションの基本的な構想を具体化し、必要な技術や設計について検討が進められてきました。他のミッションとの競争的な選考を経て進んだ Phase B では、これまでの検討をもとに、望遠鏡の初期設計や必要な技術の開発をさらに進めます。こういった活動を確実に積み重ねることで、打ち上げ、および、科学観測を実現していきます。今後は、日本の正式参加に向けた国内での審査や手続きが進められます。
PRIMAで明らかにしたい謎とは?
PRIMAでは、主に次のことを明らかにしようとしています。
- 惑星や、その周りを覆う大気は、どのようにできるのか。
- 銀河と、その中心にある巨大ブラックホールは、どのように一緒に成長してきたのか。
- 惑星や生命の材料となる元素や宇宙の塵は、宇宙の歴史の中でどのように増えてきたのか。
宇宙の塵は、若い星から出る光を遮るため、通常の光では塵の向こう側を見ることができません。
一方、塵は吸収したエネルギーを遠赤外線として放ちます。PRIMAはその遠赤外線を捉え、塵に隠れた星が生まれる場所や、温度の低いガスや物質を調べます。惑星形成については、惑星の材料となる物質の量や、水が気体から氷に変わる境界である「スノーライン」の分布を調べ、惑星がどのように形づくられるのかを明らかにします。また、銀河とブラックホールの成長を同時に調査することで、宇宙での星形成史の全貌を明らかにします。こうした観測を通して、惑星や星、銀河がどのように生まれ、成長してきたのかを明らかにするとともに、惑星や生命の材料が宇宙の中でどのようにつくられ、広がってきたのか、その起源に迫ることを目指します。
どのように観測するのか?
PRIMAは、宇宙の塵が放つ遠赤外線を広い空間範囲で撮影する装置と、光を波長方向に細かく分けてガスや元素の種類・状態を調べる装置を搭載する計画です。2つの装置を組み合わせることで、宇宙の塵やガスを徹底的に調べます。
PRIMAが観測する遠赤外線は、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡と、アルマ望遠鏡が主に観測する波長の間にある領域です。これまで十分に観測されてこなかった領域を補うことで、惑星、星、銀河がどのように生まれ、成長してきたのかを新しい視点から調べることが期待されます。
今後の予定
PRIMAが実際の開発段階であるPhase Cへ進むには、今後、確認審査を通過する必要があります。NASAは、2033年の打ち上げと5年間の観測を目指しています。日本では、PRIMAへの正式参加に向けて、引き続き検討と国内手続きを進めます。
日本の研究者の活動
日本の大学や研究機関の研究者は、PRIMAに関する科学・技術検討を進めています。また、PRIMAの観測で取り組む多様な研究テーマをまとめた資料への執筆、専門誌のPRIMA特集号への論文投稿、国内外の学会や研究会での発表などを行っています。
現在、筑波技術大学助教の馬渡健氏(採択当時:早稲田大学講師)は、日本のPRIMA参加の可能性に向けた活動に参画しています。馬渡氏は、専門とする遠方銀河の形成・進化の研究において、PRIMAの遠赤外線観測データがどのような新たな知見をもたらし得るかを検討します。
用語解説
※1 遠赤外線:人の目に見える光より波長が長い赤外線の一種です。温度の低い宇宙の塵やガスを調べるのに適しています。
※2 Phase B(フェーズB):宇宙望遠鏡の基本的な設計を具体化し、必要な技術の開発を進める段階です。







