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立体感のあるロゴにより購買可能性が向上

―ロゴの実物感がブランドの信頼感を醸成―

発表のポイント

  • 立体感のあるロゴ(以下、「3Dロゴ」という)は、平面的なデザインのロゴ(以下、「2Dロゴ」という)に比べて、広告へのクリックや製品の購買行動を引き起こしやすいことを、フィールド実験、実験室実験、オンライン実験などを通じて明らかにしました。
  • 3Dロゴは立体感のあるデザインにより、ロゴが物理的に存在するかのような印象を与え、その「実物感」の知覚がブランドの信頼を高めた結果、購買可能性を向上させるというメカニズムも特定しました。
  • ただし、3Dロゴが常に優れているわけではありません。視覚的にシンプルな環境や物理的な接触の多い製品では3Dロゴの効果が生じやすい一方、視覚的に複雑な環境や物理的な接触の少ない抽象的なサービスでは、効果が弱まることも確認されました。
  • 本研究は、企業のマーケティング担当者がブランド・ロゴを策定する際、立体的なデザインを採用すべきか否か判断するための新たな指針を提示します。

概要

近年、シンプルでフラットな2Dロゴを採用する企業が増えています。かつて立体的な3Dロゴ※1を使用していた有力企業も、相次いでフラット化を発表しました。一方、かつて3Dロゴが主流だった時期もあります。では、2Dロゴと3Dロゴでは、消費者の反応にどのような違いが生じるのでしょうか。早稲田大学商学学術院の外川拓准教授と恩藏直人教授は、フィールド実験を含む計10件の研究を実施し、この課題を検討しました。

分析の結果、3Dデザインはロゴの「実物らしさ」を高め、ブランドへの信頼感や購買可能性を向上させることがわかりました。ただし、この効果の強さは、ロゴが使用される条件によって異なります。すなわち、視覚的にシンプルな環境や物理的接触の多い製品で効果が生じやすく、視覚的に複雑な環境や接触の少ない抽象的なサービスでは弱まることも明らかになりました。
本研究は2026年6月5日に、「Journal of Marketing Research」にオンライン公開されました。

これまでの研究で分かっていたこと

ロゴは、企業やブランドを象徴する重要な視覚的要素です。これまでのマーケティング研究では、ロゴの色、形、左右対称性など、さまざまな視覚的特性が、消費者に特定のブランド・イメージ(例えば、「耐久性がある」、「エキサイティング」など)を伝達することが明らかにされてきました。

一方、ロゴを立体的に見せることの効果については、十分な研究が行われていませんでした。実際の企業では、陰影や遠近法などを使った3Dロゴを採用するブランドがある一方、平面的な2Dロゴを採用するブランドも多く、どちらが有効なのかについて明確な指針はありませんでした。本研究では、奥行きや立体性を感じさせる視覚表現を用いたロゴを「3Dロゴ」と捉え、その効果を体系的に検討しました。

新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと

本研究では、3Dロゴが消費者の反応にどのような影響を与えるのか、その効果はなぜ、そしてどのような条件で生じやすいのかを明らかにするため、計10件の実験と調査を行いました。

まず、消費者の実際の行動への影響を調べました。SNS上で2Dロゴと3Dロゴのいずれかが配置された架空のヘッドホン・ブランドの広告を5日間配信したところ、2Dロゴでは0.27%のクリック率であったのに対し、3Dロゴでは0.46%となりました。広告へのクリックが購買への予兆を表す一つの指標だとすると、ロゴの立体感は購買行動にプラスに働く可能性が示唆されます。ただし、この研究では、SNSプラットフォームの仕様上、2Dバージョンと3Dバージョンがランダムに表示されているわけではないため、この結果のみで厳密な因果関係を結論づけることはできません。

そこで、ドラッグストアの会員顧客を対象としたフィールド実験※2も実施しました。この実験では、実在する絆創膏製品のダイレクト・メールを顧客に送付し、その後、顧客が当該製品を購入したか否かについて分析しました。顧客は2つのグループにランダムに分け、片方には2Dロゴ、もう片方には3Dロゴが掲載されたメールが配信されました。この絆創膏にはもともとロゴがなく、今回の実験で使用されたロゴは新たにデザインされたものです。2Dロゴと3Dロゴは立体感のみが異なり、それ以外の点ではすべて同一のデザインとしました。メールを開封しロゴを見た48,550人について調べた結果、メール配信から2週間以内に当該製品を購買した顧客の比率は、2Dグループでは0.10%であったのに対し、3Dグループでは0.19%となり、約1.9倍となりました。

では、なぜロゴの立体感は購買行動にプラスの影響を与えるのでしょうか。陰影や遠近法などによって奥行きを感じると、消費者はそのロゴをあたかも物理的な「モノ」であるかのようにイメージしやすくなります。人は日常生活から「現実に近いリアルなもの=信頼できる」という関係を学習しているため、ロゴの「実物感」がブランドの信頼感※3を連想させ、最終的に購買可能性※4を向上させる、というメカニズムも複数の実験で明らかにしました。

ただし、3Dロゴが常に2Dロゴより優れているわけではありません。広告やパッケージなどでロゴの周囲に多くの視覚情報がある場合には、その効果が弱まります。また、家具のように物理的なモノとの接触を強く伴う製品では3Dロゴの効果が生じやすい一方、ストリーミング・サービスなど物理的な接触の少ないサービスでは、その優位性は弱まることが示されました。

研究の波及効果や社会的影響

ロゴはブランドの「顔」ともいえる重要な要素です。通常、ロゴの変更にはデザイン制作だけでなく、製品パッケージ、広告、Webサイト、店舗など、多くの媒体の変更が伴います。また消費者の記憶のなかには、ロゴと結びついたポジティブなイメージや連想も蓄積されています。そのため、単に「最近はフラット・デザインが主流だから」といったトレンドだけではなく、2D/3Dデザインが、どのような状況でどのような効果を発揮するかについて科学的に理解することが重要です。

本研究は、「3Dロゴの方が常に優れている」と主張するものではありません。むしろ、①現時点のマーケティング課題で、ブランドの信頼感を伝えることが最優先事項か、②ロゴを使用する環境が視覚的にシンプルか、③自社の提供物が物理的な接触を伴うか、という観点から、3Dロゴを採用することの有効性を判断できることを示しています。

これらの判断指針は、企業経営者、マーケティング担当者、グラフィック・デザイナーなど、ロゴ・デザインの策定にかかわる様々な立場の人々にとって有益だと考えています。

課題、今後の展望

本研究では主として3Dロゴの効果に注目しましたが、2Dロゴにも独自の利点がある可能性があります。例えば、平面的なデザインは、シンプルさ、ミニマルさ、親しみやすさなどの印象を与え、ブランドによっては3Dロゴより適している可能性があります。

また、本研究では陰影や遠近法など複数の表現方法で立体性を操作しましたが、それぞれの表現が消費者に同じ強さで影響を与えるとは限りません。今後は、どのような立体表現が特に効果的なのか、ロゴの色や形など他のデザイン要素とどのように組み合わさるのか、効果が長期的なブランドへの愛着やブランド価値にも及ぶのかなどを検討する必要があります。

研究者のコメント

ロゴは小さなデザイン要素に見えますが、消費者がブランドをどのように評価するか、そのブランドを購入するか否かに大きな影響を及ぼすことがあります。本研究で特に重要なのは、「3Dなら常によい」という単純な結論ではなく、効果が生じる理由と条件まで明らかにした点です。企業が流行や印象論だけではなく、科学的知見をもとにデザインを考える一助になればと考えています。

用語解説

※1 3Dロゴ
陰影や遠近法などの視覚的な手法を使って、平面上に描かれていながら奥行きや立体感を感じさせるロゴ。本研究では、こうした奥行きを感じさせる視覚情報を含むロゴを3Dロゴとしています。

※2 フィールド実験
アンケートで架空の製品を提示して購入意向を尋ねるのではなく、SNS広告のクリックや店舗での製品購入など、現実の購買環境のなかで実際の消費者行動を測定する実験です。

※3 ブランドの信頼感
消費者が、「このブランドは信頼でき、期待どおりの役割を果たしてくれる」と感じる程度を指します。古くから、ブランドの信頼感は消費者の購買行動を引き起こす要因の一つといわれています。

※4 購買可能性
消費者がそのブランドを購入する可能性の程度を指します。本研究では、購入意向だけでなく、広告のクリックや実際の購買行動なども含め、ブランドの購入につながる反応を広く捉えています。

論文情報

雑誌名:Journal of Marketing Research

論文名:The Three-dimensional Effect in Logo Design: When Depth Cues Improve Brand Purchase Likelihood

執筆者名(所属機関名):
外川 拓* (早稲田大学 商学学術院 准教授)*:責任著者
恩藏 直人(早稲田大学 商学学術院 教授)

掲載日時:2026年6月5日(オンライン早期公開日)

掲載URL:https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/00222437261460880

DOI:https://doi.org/10.1177/00222437261460880

キーワード

ブランド・ロゴ、3Dロゴ、ブランドの信頼感、購買行動、マーケティング

研究助成

研究費名:JSPS科研費(科学研究費助成事業)
研究課題名:ブランドへの信頼感を醸成する視覚的コミュニケーションに関する検討
研究代表者名:外川 拓(科研費研究期間中の所属:上智大学 経済学部 准教授)
課題番号:JSPS KAKENHI Grant Number JP19K01943

※上記のほか、本研究には早稲田大学マーケティング・コミュニケーション研究所(所長:恩藏 直人)の研究資金からの補助も得た。

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