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中期ビザンティン美術に魅せられてー死生観の理解に挑む

太田 英伶奈(おおた えれな)/文学研究科 人文科学専攻博士後期課程6年・第13回(令和4年度)育志賞受賞

ローマの聖堂にて

本学では将来の我が国の科学技術・イノベーションの基盤となり、社会課題の解決に取り組む博士学生を育成するとともに、博士の多様なキャリアパスを確立させることを目指しています。そのような博士学生の中から、今回は、第13回(令和4(2022)年度)日本学術振興会 育志賞を受賞した太田英伶奈さんにお話を伺いました。(所属、学年は取材当時のものです)

 

育志賞受賞おめでとうございます。中期ビザンティン美術における死生観について研究されていらっしゃいますが、どのようなきっかけでこの道に進まれたのでしょうか

子供のころルーブル美術館でサモトラケのニケを見て心惹かれたところから、物質資料から歴史をひもとく学問である物質文化史への道が始まりました。ビザンティン時代に興味を持つようになったのは、学部生の時にイタリアのラヴェンナにある初期ビザンティン時代のモザイク画を見たときです。卒業研究は考古学、修士課程以降は美術史に専門を変えましたが、一貫してビザンティン時代を研究対象としています。

― 研究内容について教えてください

5~15世紀半ばのビザンティン(東ローマ)帝国および周辺諸国において発展した美術をビザンティン美術と呼びますが、特に10~13世紀頃が中期として分類されています。この中期ビザンティン時代に生きていた人々の死生観を美術作品から探る研究を進めています。死生観は、各国・時代における文化や思想を色濃く反映するものです。キリスト教においては、この世の終わりにすべての人類が裁きを受けて天国か地獄に送られる「最後の審判」という概念が早期に成立していましたが、中期ビザンティン時代において、肉体が死んでから最後の審判を受けるまでの間に一度裁きを受けて一時的な待機場所に送られる「私審判」という概念が成立しました。

私審判と最後の審判との関係性を、聖堂や写本、工芸品など美術作品の現地調査と、神学的著作や歴史的著作の文献調査との両面から比較し明らかにしたいと考えています。世界的にみて、文献のみからの研究は多く進められていますが、美術作品から読み取ろうとする研究は少なく、価値があると考えています。特定の地域に限定せず、広く中期ビザンティン美術の影響範囲内で共通してみられる現象を見出そうとしています。

― 今後について、どのような研究展開をお考えでしょうか

博士号取得後はさらに、同時代における、墓所を飾る壁画や石棺彫刻などの葬礼美術にも対象を広げていきたいと考えています。過去の時代を研究してはいますが、「死」というものは普遍的なテーマです。過去の、日本ではない地域の死生観の中にも、現代に通ずる思想や知見があるのではないかと期待しています。

― 早稲田大学で良かった、と思うところを教えてください

図書館の蔵書量です。デジタルアーカイブも大事ですし便利ではありますが、大判カラーの図版を直接見ることで初めて気づくことも少なくありません。また、目的の書籍を棚に探しに行って、検索では見つからなかった関連書籍に出会うこともあり、非常にありがたいです。

もうひとつは、希望をすれば指導教員が時間を確保してくださることでしょうか。論文執筆の際などは、存分に論理展開の相談に乗り、何度でも原稿に赤入れしてくださいます。修士課程の際に「腕試し」と思い一度海外に出ましたが、博士号はやはり十分に議論し尽せる益田朋幸先生のもとで、と思いましたので、博士課程でまた早稲田に入学しなおしました。

― 最後に、後輩のみなさんにメッセージをお願いします

将来、何が経験として活きるか分かりませんから、一見して自分の興味関心とは関係ないと思うようなことでも、機会があれば手を伸ばしてみることをお勧めします。大学にいる間は、在籍学科以外の授業を履修することも可能です。多様な分野・業界で活躍している第一人者の方々から話を聞く機会があるというのは、非常に贅沢なことだと思います。
それから、やはり「健康第一」。私自身、海外に調査滞在しているときに椎間板ヘルニアになってしまい、非常につらい思いをしました。良い研究、良い仕事を進めるためには、体が資本であると実感するようになり、最近は少しトレーニングもはじめました。皆さんも、健康を大事にしつつ、大学でたくさんのことにチャレンジしてください。

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