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ウーラ・レポート(第5回) フェス早稲田シェイクスピア 英国バーミンガム大学との共同研究推進へ

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新人研究リサーチアドミニストレーターのウーラ(WURA;Waseda University Research Administ-rator)が、研究イベントに参加して、皆さんに早稲田大学の研究をご紹介していきます。

 

ウーラさ有り
こんにちは、ウーラです!
2017年もどうぞよろしくお願いします。
今日は、早稲田大学で開催中の「フェス早稲田シェイクスピア」とフェスに関わる研究者を取材してきました。このフェスは、シェイクスピア没後400年を記念して、シェイクスピア研究の国際拠点として知られている英国バーミンガム大学と、本学の演劇博物館文学学術院間の研究連携(※1)に基づくものです。

2016年3月に発足させたこの研究連携は、シェイクスピアに関する多様な研究を加速する狙いがあり、また、今回のフェスでは、世界中の演劇研究者や演劇愛好者の興味をくイベントが目白押しです。

今回のウーラ・レポートでは、フェスの1つとして開催中「沙翁復興 ― 逍遙からNINAGAWAまで」(2016年10月14日~2017年1月29日、早稲田大学演劇博物館)より、演劇博物館館長の岡室美奈子教授、同副館長の児玉竜一教授、本大学シェイクスピア研究の第一人者の冬木ひろみ教授にお話しを聞いてきました。英国バーミンガムグム大学との研究連携が早稲田大学、ひいては日本の演劇活動にどのような影響を与えるのか、そして「フェス早稲田シェイクスピア」で行われるイベントについてお話を伺います。

※1:早稲田大学は、国際的な共同研究を拡大するため、英国バーミンガム大学との組織的な研究連携をスタート。今回の提携では、シェイクスピア研究を中心とする演劇・映像研究、スポーツ科学、ロボティクス、言語学の分野を対象とし、今後も更なる展開を進める予定。

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「フェス早稲田シェイクスピア」パンフレット

 

 

岡室 美奈子 教授

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演劇博物館は、このフェスの一環としてシェイクスピア没後400年記念特別展「沙翁復興 ― 逍遙からNINAGAWAまで」というシェイクスピア没後400年記念特別展を開催しています。10月には関連イベントとして、狂言師・野村萬斎氏のトークショー「狂言とシェイクスピアの出会い」を行い、大盛況でした。演劇博物館が協力しているフェス早稲田シェイクスピアも盛りだくさんで、1月下旬には「劇団地点」による独創的な「ロミオとジュリエット」が大隈講堂で上演されます。早稲田出身のバンド「空間現代」の生演奏付きです。また、早稲田大学生が運営している早稲田小劇場どらま館では、学生劇団がシェイクスピアの作品を上演します。このような様々なイベントを通して、多くの人にシェイクスピアに触れていただき、坪内逍遙以来のシェイクスピア研究拠点としての早稲田大学をアピールしたいと考えています。

当館は演劇の資料を所蔵しているだけではなく、国際的な演劇・映像の研究拠点でもあります。英国バーミングム大学との学術連携によって、海外の研究者との協働や情報交換がさらに促進されて共同研究などの機会が増え、国際研究のコミュニティーにさらに貢献できるようになるでしょう。バーミンガム大学との共同研究のスタートを記念して、1月21日から22日にかけて、文学学術院のマーティン先生や冬木先生が中心となって「シェイクスピアの映画―東洋と西洋」の国際カンファレンスが行われます。このカンファレンスが両大学の教員と若手研究者、そして学外の研究者をも巻き込んだ最初の学術会議として有意義なものとなることを願っています。

日本のシェイクスピア上演は今、世界的に高く評価されています。日本のシェイクスピア研究や上演活動が、日本から新しい価値観をもって世界に向けて発信され、新たなシェイクスピア像や解釈を創出するのは素晴らしいことだと思います。当館にも豊富なシェイクスピア資料があります。是非、国内外の沢山の方々に早稲田大学に来て研究をして頂きたいと思います。

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「沙翁復興 ― 逍遙からNINAGAWAまで」展より。シェイクスピア映画『プロスペローの本』(ピーター・グリーナウェイ 監督、1991年)とオペラ『マクベス』(野田秀樹演出、2004年)で実際に使用されたワダエミ氏デザインの衣装 (向かって左:ワダエミ氏蔵、右:新国立劇場蔵)


0000「フェス早稲田シェイクスピア」はまだまだ続きます。これからもイベントが開催され楽しみです!個人的には「沙翁復興 ― 逍遙からNINAGAWAまで」のシェイクスピア没後400年記念特別展はとても興味深かったです。貴重な文献に触れ、シェイクスピアにまつわる音、映像、逍遙逍遙の3D映像なども体験できました。早稲田大学には、新たな演劇を培って世界中に発信する環境が整っているとのこと、それに、演劇博物館は研究者にとって尊い研究資源が豊富にあるそうです。
是非、学生や研究者が世界中から早稲田に来て、日本文化に触れながら、新たなシェイクスピアを発見していって欲しいと思います。

 

児玉 竜一 教授

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早稲田大学とシェイクスピアの歴史は、作家のみならず、教授、批評家、演出家、翻訳者である坪内逍遙から始まると言っても過言ではありません。1928年に逍遙は日本初の「シェイクスピア全集」全40巻の翻訳を完成させました。早稲田大学はこの偉業を記念して「早稲田大学坪内博士記念博物館」(現在の演劇博物館)を設立しました。その様に、シェイクスピアと逍遙の翻訳が早稲田大学の歴史に刻まれました。坪内逍遙以後、シェイクスピアの全作品翻訳を成し遂げたのは小田島雄志さんだけですから、逍遙がいかに先駆的だったかわかります。逍遙は実は海外渡航経験がない。書物の情報からシェイクスピアを軸に、新劇運動を展開しようとしたのですが、日本の古典演劇の要素とも融合しようとしていて、「桐一葉」などの大阪落城ものは、シェイクスピアの歴史劇の影響をうけた群像劇となっています。また、逍遙訳と小田島訳や蜷川演出の間にも、様々なシェイクスピア上演が試みられています。歌舞伎や文楽、狂言や商業演劇での上演も重要で、それらに関する多くの資料が演劇博物館には残されています。

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「フェス早稲田シェイクスピア」展示より。シェイクスピアのハムレットやフォルスタッフを、日本の文楽で上演した際の資料


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逍遙のDNAは、彼の偉業を成し遂げた舞台である早稲田大学に引き継がれていますね。早稲田キャンパスにある荘厳な演劇博物館や近くにある大学生が運営している「早稲田小劇場どらま館」を見ると、早稲田における演劇の深い歴史や意義を感じ感動しました!
 

 

冬木 ひろみ 教授

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日本でもシェイクスピアの研究は様々な研究者が携わっていますが、私の研究の大きな特徴は、演劇博物館があることも幸いし、上演とテキスト研究(作品研究)が必ずいつもリンクしているところです。観るものとしての舞台とシェイクスピアの言葉の研究は不即不離の関係にあるべきだと思いますので、「ページとステージをつなぐ」ことをモットーとしています。そもそもシェイクスピアの研究をはじめたきっかけは学生の時に歴史劇を渋谷の小さな劇場で観たことでした。若者のエネルギーと早口の言葉が横溢する舞台で、通常あまり感動できないと思われた歴史劇の登場人物たちの言葉が心に沁み、現代に通ずる歴史の悲惨な連鎖に大きな衝撃を受けました。シェイクスピアは古い遠くの国の話でありながら、語られる言葉はわたしたちの心に近く、思わずはっとするような台詞が多いところが魅力です。劇中には余白もト書きもないため、言葉が観客・読者の想像力を喚起するのですが、それはどの国でもどの時代でもさまざまに解釈できるという利点につながります。つまり、シェイクスピアならではの雑駁さや矛盾が逆に私たちを惹き付けるとも言えます。

いま、日本ではヨーロッパのシェイクスピアを模倣するのではなく、自分たち独自の解釈でシェイクスピアを日本から発信するものも多くなっています。若い人たちも含め、日本文化や歴史の背景を踏まえた新しい解釈をもとに、研究者たちは世界で活発に議論し交流しています。舞台面でも日本人である蜷川さんの演劇はヨーロッパで高く評価されており、日本のシェイクスピアは世界で独自の価値として認められているのではないでしょうか。

早稲田大学としてもバーミンガム大学との研究連携によって、現研究の加速のみならず、新しい研究が始まることに期待が持てると思います。人の行き来、行事の開催、資料の共有など、連携による恩恵を存分に活用し、日本におけるシェイクスピア研究、発信が加速するよう努めていきたいと思います。

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「沙翁復興 ― 逍遙からNINAGAWAまで」展より。故・蜷川幸雄氏演出によるシェイクスピア劇のポスター。一同に展示されるのは国内でも新たな試み。


ウーラさ有り
シェイクスピアの面白さとはわたしたちがひとりひとりの日常生活に投影できるリアルさや言葉にあるのかもしれないですね。シェイクスピアの魅力について冬木先生の熱い語りをお聞きし、シェイクスピアを学びたくなりました。3人の先生方が長期間にわたってとりくまれたシェイクスピアの知が「フェス早稲田シェイクスピア」で見られます。ぜひ皆様も来てくださいね!

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早稲田大学演劇博物館の外観。坪内逍遙逍遙をはじめ古今東西の演劇の貴重な資料が豊富に揃い、国際的な演劇・映像研究拠点にもなっている。

 

 

バックナンバー

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☞第2回:START技術シーズ選抜育成プロジェクト試作品展示会 Robotics×Future 2016
☞第3回:小中学生のための科学実験教室(第29回)ユニラブ
☞第4回:遺伝子のすがた カラダの中でおこる不思議

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