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思春期発来障害を導く脳内機構を解明

医学分野の重要課題である思春期発来障害を導く脳内機構を解明
ヒトの生殖可能となる重要な時期での障害に悩む多くの患者の治療法開発へ

早稲田大学教育・総合科学学術院/先端生命医科学センター(TWIns)の清原美佳(きよはら みか 筒井研究室の研究生・東京慈恵会医科大学博士課程院生)、孫ユリ(そん ゆり JSPSによる筒井研究室の特別研究員)、筒井和義(つつい かずよし)教授は、医学分野の重要課題である思春期発来障害を導く脳内機構を明らかにしました。
思春期はヒトの生殖可能となる重要な時期であり、思春期発来障害の解明は医学分野の重要課題であるにもかかわらず、障害を導く脳内機構は、これまで不明のままでした。2000年に筒井教授のグループは、生殖腺刺激ホルモンの放出を抑制する新規の脳ホルモンを発見して、生殖腺刺激ホルモン放出抑制ホルモン(GnIH)と命名しました。その後の研究により、GnIHは哺乳類や霊長類のヒトに存在することや、GnIHは哺乳類やヒトの生殖機能を抑制することを明らかにしました。一方、甲状腺ホルモンは思春期発来に影響を与えることが知られていましたが、その仕組は不明でした。
本研究により、脳内のGnIHニューロンには甲状腺ホルモンの受容体が発現していることや、甲状腺ホルモンはGnIHニューロンに作用してGnIHの発現を制御することが明らかになりました。さらに、甲状腺ホルモンの低下は、GnIH遺伝子プロモーターのエピジェネティックな変化を導くことでGnIH発現を有意に増加させ、生殖腺刺激ホルモン分泌の低下と思春期発来の遅発を誘導することがわかりました。
本研究成果により、思春期発来の障害に有効となる治療法の開発が可能となり、思春期発来の障害に悩む多くの患者の治療に大きく貢献します。
本研究成果の論文のOnline 版が、英国の科学誌(オープンアクセス誌)『Scientific Reports (Nature Publication Group)』に、4月21日に掲載されました。
論文題目:Involvement of gonadotropin-inhibitory hormone in pubertal disorders induced by thyroid status
著者:Mika Kiyohara, You Lee Son, Kazuyoshi Tsutsui
Waseda University

(1) これまでの研究で分かっていたこと

思春期発来の障害を導く脳内機構はこれまで不明であった。2000年に筒井教授らは生殖腺刺激ホルモンの放出を抑制する新規の脳ホルモンを発見し、生殖腺刺激ホルモン放出抑制ホルモン(GnIH)と命名した。その後の研究により、GnIHは哺乳類や霊長類のヒトに存在することやGnIHは哺乳類やヒトの生殖機能を抑制することを明らかにした。思春期は生殖が可能となる重要な時期であるが、思春期発来の障害はヒトや多くの哺乳類で報告されている。思春期発来の障害は医学の分野の重要課題であり、これまでに多くの研究がなされており、甲状腺ホルモンが思春期発来に影響を与えることも知られていたが、思春期発来障害を導く脳内機構は明らかになっていなかった。

(2) そのために新しく開発した手法

高感度ペプチド定量法、高感度ホルモン定量法、GnIH遺伝子のノックアウト法・RNA干渉法、GnIH遺伝子プロモーターのエピジェネティック解析法。

(3) 研究の結果

筒井教授が発見したGnIHは哺乳類やヒトの生殖機能を抑制する新規脳ホルモンである。本研究により、脳内のGnIHニューロンには甲状腺ホルモンの受容体が発現していることや甲状腺ホルモンはGnIHニューロンに作用してGnIHの発現を制御することが明らかになった。さらに、甲状腺機能が低下したマウスを用い、GnIHの発現と思春期の発来を解析したところ、甲状腺ホルモンの低下はGnIH遺伝子プロモーターのエピジェネティックな変化を導くことでGnIH発現を有意に増加させ、生殖腺刺激ホルモン分泌の低下と思春期発来の遅発を誘導することがわかった。以上の研究により、甲状腺ホルモンが低下するとGnIH 発現が増加して思春期発来が遅延することが発見された。

(4) 研究の展望

思春期発来の障害の脳内機構を解明した本研究成果により、有効となる治療法の開発が可能となる。この障害に悩む多くの患者の治療が期待される本研究の波及効果や社会的影響は大きいと思われる。治療法を開発する応用研究が今後の課題である。

論文情報

掲載誌:
Scientific Reports (Nature Publication Group)
論文題目:
Involvement of gonadotropin-inhibitory hormone in pubertal disorders induced by thyroid status
著者:
Mika Kiyohara(清原美佳)1,2、You Lee Son(孫ユリ)1、Kazuyoshi Tsutsui(筒井和義)
(1早稲田大学 教育・総合科学学術院/先端生命医科学センター、2東京慈恵会医科大学小児科学講座)
第1著者と第2著者はEqual first author
第2著者と第3著者はCo-corresponding authors
 
 
 

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WASEDA University

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