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ICC参加者レポート:アリババは何を可能にするのか?—日本のキャッシュレス社会のこれからー

政治経済学部3年
田邉理恵

私は、漠然としたビジョンではありますが、将来的に日中経済の連携強化に貢献したいと強く希望している日本人学生の一人です。中国にバックグラウンドはありませんが、大学入学以来、研究科に在学していた中国人の友人の輪を起点に、一瞬のうちに中国の魅力に引き込まれていき、実際に何度も中国を訪れる機会に恵まれました。そこで私は、日本に留まっている内には、日本人はあまりにも中国という国について理解しておらず、故に中国から参考にすべきビジネスモデルやライフスタイルについて殆ど知る由がないという事実を実感するに至りました。

ゲストスピーカーの田中豊人氏

中国で目撃した社会の現状は、日本のメディアで報道される断片的な側面を基にした数々のイメージよりも遥かにスマートで、都会的な絢爛さを有していて、都市部の人々の生活は、どこかマニュアル時代の雰囲気を思い出させるような有機質な活気と、新しいテクノロジーに由来する利便性の双方に満ち溢れていました。

特徴的であったのは、それらの街中の景色をランダムに切り取ったとすれば必ずと言って良い程に「スマホ・アプリ・バーコード」の三点組が存在していたことです。

まさに「スマホ・アプリ・バーコード」とはもはや中国人の生活の一部であり、ありとあらゆる産業及びサービスの根幹を成す「インフラ」でもあることに気付いたのです。

そして、中国においてITを駆使した非物質の「インフラ」を提供している企業は幾分か存在します。その中でも数多くの形態のサービスや多分野のアプリを経営し、生活とアプリそしてサービスを一体化させることに最も成功した企業が、アリババグループです。

人々はアリババを経由して人気飲食店を発掘し、タクシーを呼び、遠出のための乗車券を予約し、そしてアリババを通して支払いを行い、最終的にはアリババの提供するサービスの中で生活を完結させることが出来るようになったと言っても過言ではありません。中国では整備された大型デパートでも、路上に出没する屋台にも、ネット上にもアリババを始めとするITサービスはユビキタスに存在しています。アリババグループの戦略における最大の成果は、アリババという名のメヴウスの輪を形成させることに成功したという点であることを、今回の講演を通して再認識しました。

一方、アリババジャパンは、日本企業と「中国」の橋渡しを行う主体として日本で事業を展開している企業であるとの位置付けが、今回の公演で最も明確に提示された点であるとも感じました。具体的な事業内容としては企業や行政府がインバウンド事業を促進させる金融・IT・マーケティング上のサポートを行うことであり、現時点では日本人ユーザー向けの電子決済サービス強化やアプリ導入は、主要なビジネスプランとしては組み込まれていないとのことでした。その背景には、日本にはキャッシュレス文化を導入するために適切なプラットフォームがないため、既存のプラットフォームを切り崩してまで強引にキャッシュレスを推進するコストに対して得られる企業の取り分が小さいことが挙げられます。しかし、日本では近年現金以外の支払い方法、例えば電子マネー(SUICA・PASMO等)が普及しつつあります。その一方でスマホ決済文化が浸透しない要因としては、日中での情報やプライバシーに対する考え方の違いや、サービスの媒体や利用の場が限定及び散在していることが挙げられると考えます。それに加えて、スマホというデバイス一つに生活に必要な機能全てを集約することには脆弱性というリスクが想定されますし、中国では統一されインフラ化しているサービスでも現状の日本では、パッチワークのような有り様で却って不便な場合が存在するという事実も否定出来ないと考えます。

今後政府が東京五輪や大阪万博に向けて10年先という視座に立ち、海外を意識する中で特に巨大なマーケットである中国からの来訪者を対象とした経済政策の施行が推し進められていくことは確実であり、日本人に焦点を当てたキャッシュレス促進やスマート化の推進を目的とした政策も既に始動しています。しかし政策と、個々の利害を有する民間企業、そして従来の安全な生活に満足している一般市民との間には、それぞれの興味の具合があり、大きな温度差が存在します。

「To make it easy to do business everywhere」

これは世界中で知られている通り、アリババグループの理念です。私は、アリババグループは既存のビジネスの在り方に変革を起こす起爆剤となっただけではなく、中国人の日常を根本的に変えたと考えます。新しく訪れたそのライフスタイルには、メリットもあればリスクも伴います。しかし、リスクとは絶えずそこら中から湧き出てくるものであり、それらを怖れて中途半端な結果を生み出すよりも、常にリスクを捉え対処法を練りつつも効率的な判断と行動を行っていくことが重要であると考えます。

私は、アリババグループが今後アリババジャパンを拠点にして日本の企業と人々にどのような価値を提供していき、どのように社会の変革を支えるアクターになっていくのかを楽しみに見据えつつ、日中双方の振興を見据える人材として活躍していければと、感じています。

ゲストの方々とICCスタッフ

Dates
  • 1212

    WED
    2018

Place

3号館3階305教室

Tags
Posted

Thu, 24 Jan 2019

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