Office for Promotion of Equality and Diversity早稲田大学 ダイバーシティ推進室

News

ニュース

【開催報告】11/22 ワーク・ライフバランスデザインワークショップ in 法学学術院 

2021年11月22日、「ワーク・ライフバランスデザインワークショップin 法学学術院」がオンライン開催されました。講師には、本学法学部出身で現在、プルデンシャル ジブラルタ ファイナンシャル生命保険株式会社にて広報チームのマネージャーを務める保科直美氏と、本学第一文学部フランス文学科卒業で現在は法学学術院准教授の岩村健二郎氏をお招きし、法学学術院教授 の弓削尚子先生による司会進行のもと、第一部講演会、第二部グループセッションの二部構成で行われました。学部生・大学院生ほか、教職員も含めて25名の参加がありました。

司会・進行:弓削 尚子先生

 

 

 


講演概要:保科 直美氏

講師:保科 直美氏

新卒で入社した大手損害保険会社を選んだそもそもの理由は、大学時代に損害保険会社のコールセンターでアルバイトをしていて身近に感じていたことと、社会の見えないインフラとして重要な存在だと感じていたため。この会社では、社会人としてビジネスの基礎を身につけるとともに、体力があるときにしかできないようなガムシャラに働く貴重な経験ができた。だが一方で、画一的で体育会系な社風になじむことができないと感じることもあった。

そんな中、事故を未然に防ぐリスクマネジメントという業務に興味を持ち、社内公募制度を活用してリスクコンサルティングの関連会社に出向した。ここで情報誌などの企画・編集を担当し、自分が文章を書くことが好きであるという発見をした。思い返せば子どもの頃は本を読むのが好きな文学少女であった。自分が好きなこと、やりたかったことが意識させられたこの経験により、自分が楽しいと思える仕事がしたいという思いが強くなると同時に、仕事を能動的に選びたいと考えるようになり、結果として転職活動をすることとなった。

転職先の基準は、自分が心から楽しいと思える広報の仕事ができるということに加え、働き方として多様な個性を重視する組織であることという2点である。 

2016年から始めた今の仕事は、外資系の常として「広報チーム マネージャー」という“職種”で募集をしており、この職場ならより自分らしく働けると考えて転職をした。伝統的な日本的大企業とは社風の違いも大きい。例えば、飲み会という文化がないことや、家族のことを本気で考えている各種制度やイベントなど、外資系ならではの社風に最初は驚いた。どちらがよいという話ではないが、自分にとっては今の職場環境がより合っていると感じている。
コロナ禍において感染拡大が落ち着くと、在宅勤務から元の体制に戻る会社組織も多い中、今の会社では引き続き、在宅ワークの比重を高いままとする方針が決まった。転職後に結婚し、子育てをしている今の自分にとって、会社のこの方針にはとても助けられている。

「自分にとってライフ・ワークバランスとはなんだろう」とあらためて考えてみると、自分オリジナルの働き方を実現するために、挑戦し続けることだと感じている。理想像は固定化されたものではなく、自分のライフスタイルの変化とともに動き続けていくものではないか。集中的にビジネスの力を身に付ける時期があっていいし、子どもができれば生活の中心が育児になることもあるだろう。

理想を実現するために大事だと今思うことは、自分の「好き」や「やってみたい」という気持ちをそのままにしないこと。たとえば私が子どもの頃好きだったことをもう一度拾い上げて自分を見つめ直したように、過去の経験を手がかりにするのも一つの方法だと思う。

一つの考え方として「計画された偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」というものがある。これは、キャリア形成においてはほとんどの過程が偶然によってつくられるという理論で、今振り返ってみれば個人的にも納得できる。私が新卒で入った会社は、学生時代にたまたまコールセンターのアルバイトをしていたことがきっかけとなっているし、その後のことも、偶然が重なった結果であり、その上に今の生活がある。

仕事選びや理想の働き方を実現する上で、偶然訪れたチャンスを活かせるかどうかは自分が能動的に動けるかどうかにかかっている。チャンスが訪れるのをただ待つだけでなく、自分の正直な気持ちを見つめ直し、主体的にチャンスを掴みにいく姿勢を持ってほしい。 

 

講演概要:岩村 健二郎氏

講師:岩村 健二郎氏

「ワーク」も「ライフ」も主体的に取り組みたい、ということを軸に話してみたい。

学部生時代の私は、人に指示されることが嫌いで、好きなように生きたい、主体的でありたいと思う若者の一人だった。「ベルトコンベアーで運ばれるように就職することはしたくない」と考えるようなタイプの若者だった。学部生時代から音楽活動をしていたので、表現欲求や自己実現という言葉で自己を考え、社会と相対化しようとしていた。

今思えばそれは、若者らしい考えであると同時に、対象となる社会をよく見もせずに「ベルトコンベアー」だという先入観で決めつけていた浅はかな考えでもあったと思う。

早稲田大学第一文学部のフランス文学専修に在籍していたが、音楽活動にずっと携わっていた。私が専門としていたのはキューバのダンス音楽だったが、バブルの時代ということもあり、今では考えられないほどパーティーやイベントなどで演奏の仕事があった。学部生時代にキューバに行き、価値観が大きく変わるという体験もした。そのときすでに音楽活動は日常化していたし、よくわからないまま就職するのが嫌だという思いもあり、キューバに行って得たインスピレーションをもとに研究を続けたら面白そうだという思いから、大学院に進んだ。

修士課程の時代には何度も行き詰まりかけた。金銭面では常に困窮しており、極貧の期間も長かった。かなり無鉄砲で、当時はライフもワークもあったものではなかった。しかしとにかく、好きなこと邁進するという点では一貫していた。
当時はネット環境なども今ほど発達していなかったため、研究を続けるためには、資料収集や人と会うために海外に渡航する必要があった。学業優秀であれば幅広い選択肢があっただろうが、そうでなかった私にとっては「音楽で稼いで費用を捻出し、音楽で渡航する」という手段しか残されていなかった。

一般的なキャリア形成からすると、私の経歴では「就職」に相当するタイミングはかなり遅かった。紆余曲折を経て2008年に法学部の専任講師になった時には40歳を超えていた。だが実は、人文科学系の専任教員としては、これはそれほどレアケースというわけではない。

私が修士課程から博士課程に進むタイミングは、国が「大学院重点化政策」を進めていた時期と重なっている。この制度の狙いは大学生と大学院生を増やすことで、当時見通されていた将来的な18歳人口の減少を補おうとするもの。
しかし一方でこの制度は、人口の増加を前提とするものであり、それがなければ成り立たないものだった。実際、18歳人口が減少に転じた90年代以降も大学の数は増えていったが、大学や大学院生の数が増えても、大学教員の採用口は減る一方だった。博士課程修了者が急激に増えたが、教員採用の枠はむしろ減少していた。中でも私がいる人文科学系では、正規雇用の就職率がかなり低いことが常態化していた。

こうした状況の中に当事者として身を置く中で、すでに私は覚悟を決めていた。それまでの「やりたいことをやる」という若気の至りとしての主体性も丸ごと自分で引き受けて、貫こうという決意ができていた。ある意味では追い込まれていたが、今思えば追い込まれてよかったと感じる。「本当にそれでいいの?」という問いかけが常に自分自身の中にあり、それを確かめ続けていた。自分の給与生活者という立場と、自分のやろうとしていることを相対化させて考え続けることができるのか、という問いを自分に課していた。

さらに、どんな個人でも、社会を構成する一員であるという観点から考えれば当然、家族やパートナーの存在によって主体性は大きく変容する。これはライフやワークの存在意義自体が変わり得ることを意味する。
最近でも、大学のライフイベントに関わる支援を活用させていただく機会があったが、これらの経験もまた、自らの主体性をあらためて見つめなおすよい機会となった。主体性をめぐっての問いのあり方は、これからも形を変えながら続いていく。


 
第二部のグループセッションでは、弓削先生がファシリテーター役を務められ、参加者がゲスト講師のお二人と活発に意見を交わす姿が見られました。
特に、配偶者がいる場合のライフ・ワークバランスの理想的なあり方や、現実の生活でどう理想と折り合いをつけていくかなどの話題を中心に、ゲスト講師の実体験を踏まえた実用的なアドバイスが数多くなされ、参加者にとって有意義な機会となりました。

イベント終了後のアンケートでも、「先輩の話が直接聞ける貴重な機会でした」「全体的に参加意識が強く、他の参加者からの質問からも学びがありました」「ワーク・ライフバランスは個人の問題だけではないので、もし可能なら今後はパートナーシップ・世帯単位でもお話を聞いてみたい」などの声が寄せられました。

 

上段左より、司会の弓削先生、講師の岩村先生、下段は講師の保科氏

 

 

 

 

Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/inst/diversity/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる